005 1-05 SR Shot&slash,Run away&go away. 01
あけましておめでとうございます!おそいよ!と、ツッコミが聞こえてきそうですが気にしない。まだまだ走りだしたばかりの『Joyful Joker』と進・駆・歩たちですが、今年もよろしくお願い致します。
――ズダダダダッ!!
「なーんでこうなるかなぁ…。」
降り注ぐ銃弾を壁に隠れてやり過ごしながら、進はぽつりと呟いた。
一方、
「うーん、ねぇ進。あの銃、軍のお下がりだね。それにあの防護服は『H2』のかな?」
進とは反対側の壁から少しだけ顔を出し、相手の装備を確認している歩。
今述べた『H2』とはある企業のことだが今は関係ないので後述するとして。
相手 サブ・マシンガン及び防護服装備の警備員 数およそ四名(さらに増える可能性大)
それに対して
こちら 高周波振動ナイフ一振りに拳銃一丁(麻酔銃は使い捨て)防具と呼べるもの無し 数二人
中々に最悪、それが進の判断である。
銃弾の雨は未だ止む事無く降り、それを尻目に進はポケットにしまい込んだ二枚のディスクに触れ、なぜこうなってしまったのか振り返ってみた。
***
研究室に首尾よく忍び込んだ二人は、さっさとそれぞれの役割を開始した。進は研究用端末に駆お手製のプログラムを仕込んだディスクを差し込み中身の吸い出し、歩は予備のデータベースに細工。
端末にあった防壁を一秒弱で突破し、目標のデータの吸い出しを開始。何のデータか気にはなるが知らないほうが身のためだろう。
吸い出しが終われば次は端末内のデータの破壊を開始するのだが、それが終わるまで進は暇であった。
ふと、机の上にあるディスクが目についた。随分古い型であるそれを何気なく手に取り、
(…これぐらいいいよな)
何気なく懐に収めた。
――先程、歩に言った言葉は忘れることにして。
そして、データの吸い出し及び破壊が完了し、
「よし、おしまい。」
と進が上げた声と、
「おわったよん。」
と、歩が作業の終了を告げる声と、
「二人とも、気を付けて!」
と、駆が警告を知らせるのは申し合わせたかのように同じで、そのきっかり2秒後に非常用アラームが鳴り響いた。
***
それからはゴーグルに示された逃走経路を走り回り、なんとか逃げ回っていたが、ここに来て遂にゴーグルに表示された警備員用のアイコンが進行方向に現われた。
向こうもこちらに気付き、警告無しに銃弾を浴びせた。間一髪のところでそれを別々の壁に隠れて避け、現在に至る。
(さて、どうしたものか。)
昨今、企業に対するテロ行為が相次いでおり、それに対し企業も自衛手段として企業敷地内に関してのみ、このような武装が許されている。
「ねえ、歩。」
「ん、なに?」
流石に相手の観察に飽きたのか、返事は思いの外早く返ってきた。
「ジャンケン。」
その一言で全て理解したのか、歩は若干嫌な顔をした。
「ジャーンケーン…」
「「ポイッ!」」
進 グー
歩 チョキ
「あう。」
呻き声を上げ、がっくりとうなだれる歩。対して
「よし。」
気合いを入れて、後ろ腰に挿してあるナイフを抜き放つ進。
「じゃ、いくよ。」
相手の返事を待たずして歩は壁から身を出し素早く腹這いになり、手にした拳銃の引き金を、五回引く。
思わぬ反撃に警備員が怯む。だが『H2』特製の防護服にこの程度の銃弾など豆鉄砲に等しく、怯んだところでわずかな隙にしかならない。
(右脚及び左脚 筋力増強)
たが、その隙に、進は動いていた。
身体を屈め、一足飛びで警備員四人の真ん中に移動する。
知覚強化用義眼があっても捕捉できたかどうかわからぬ速度。まして裸眼ならば、ほとんど瞬間移動と大差あるまい。
ビルとビルの合間を飛び、跳び、翔び上がり、ここの屋上まで辿り着いた脚力を持ってすればこの程度のことは造作もない。
何の反応もできずに惚けている警備員に、進のナイフが踊る。
「ぐぁッ!?」
一人目の腕が斬りつけられ、銃が落ちる…。
それより早く、さらに三度ナイフは踊り、残り三人の腕を斬り付けた。
「ギャアッ!?」
と、悲鳴を上げる暇もあればこそ。
今度はナイフの刄を返し、峰で警備員の首筋を強打。十分な速度と硬さを伴ったそれは意識を奪うには十分で、一人、また一人と昏倒させていく。
が
「この、クソガキがぁぁぁッ!!」
最後の一人が無事な方の手で拳銃を抜き、発砲。
――パンッ
しかし、その拳銃から銃弾が放たれることはなく、それどころか、手から拳銃が弾かれるようにどこかへ飛んでいってしまった。
「悪いね。」
警備員は自分の拳銃が後ろに控えていた少女に撃ち落とされた事実など知る由もなく、意識を失った。
「大丈夫?」
弾が切れた拳銃を捨てながら、歩がのんびりとやってきた。
「ああ、フォロー、サンキュな。」
進はそう言いつつ、足元に転がっているサブ・マシンガンの内、適当に一丁選びそれを渡そうとして、それに気付いた。
「何で『紅風・改』持ってきてんだよ、お前ェェッ!?」
歩の両手に彼女愛用の拳銃二丁が収まっているのを見て、進は思わず叫んだ。
『紅風・改』とは、『EXGM社』製の、一世代前の拳銃『紅風』を歩なりにカスタマイズしたもので、歩にとってある意味兄弟たち並に頼れる相棒である。
「昔の人は言いました。『備えあればうれしいな』。」
「言ってねェよ、そんなこと!つーか、どこに隠してたんだよ!?」
「ん?スカート穿いたオンナノコが銃隠すといったらここしかないでしょ?」
そういって歩がチェックのスカートの両端を摘み上げる仕草を見て、
「な、お前、ちょっ――」
進は相手が妹であり、尚且つその下にはスパッツがあることを知っていながら顔が赤面するのを止められなかった。
歩はそれを見てケラケラと笑い、今までのやりとりを見ていた駆は
『Hurry! Hurry!』
とゴーグルを通して二人に逃走経路とともに表示するのであった。
駆がこの時、ため息を吐いたのは言うまでもない。
○銃一丁、×銃一兆…。我がケータイよ、誤植としてはひどすぎやしないか?と、いうわけで誤字・脱字がございましたら、ご連絡ください。できればそれと一緒に感想とかも送ってくれたら幸いです。では、ロドリゲスでした。