001 1-01 SR Start. Ready?
は、初投稿です!文才無き自分がサイバーパンクというジャンルを扱うのは無謀と思いますが、どうぞ最後の最後まで読んでいただき、そして楽しんでいただけたら幸いです。
『ハーイ、たった今聴いてもらったのは、今ノリにノッている『FF』の新曲『LONG,LONG,BLUE SKY』でしタ。ボーカルの『シルフ』ちゃんのボイスは、ホンッッッットにスッッッッゴクきれいな声よねェ。コレッてサイバー化してなくって、天然モノだっていうんだものねェ。もう羨ましいったらないワ! じゃ、次の曲行くわヨ。次はぁ――』
『5分前だよ。』
唐突に割り込んできた通信に驚くでもなく、少年はウェブ・ラジオ・プレイヤーの電源を落とし、耳に掛けていた骨伝導イヤホンを仕舞い、額に掛けていた多機能ゴーグルで、その勝ち気で挑発的な目元を覆う。
「もうそんな時間?」
いつもの癖で手元の時計で確認しようとして、ゴーグルに表示された時間に気付く。
『西暦2115年06月03日23時55分』
ゴーグルを通じて網膜に直接投影されている時間をみて、ため息を一つ。
『そう。もうそんな時間。』
通信相手の僅かな呆れを感じ取れたのは、付き合いの長さ故か。
『ちゃんと配置についてるの?』
相手の言葉に少年は辺りを見回す。
来栖市 北西部 Β地区 某社ビル屋上
そこが、少年が今立っている場所だ。
ビルが競い合うように乱立するオフィス街。その中でも少年の立っているビルは、それ程高くはない。しかしそれでも高さは優に百メートルは下るまい。その中に入らずして屋上まで辿り着くとはいかなる業をもちいたものか。
「問題無し。ちゃんと配置についてるよ。」
しかし少年は自らが為しえた偉業を誇るでもなく、あくまでその態度は変わらない。
「それより歩は?」
『歩ならさっき配置についたって、連絡がきたよ。』
一歩。少年は屋上の縁に向かって歩を進める。
『歩ぼやいてたよ。もっと自分向きな作戦は無かったのか、て。』
「ハハ、そういや言ってたな、そんなこと。」
また一歩、歩を進める。
外壁に向かって進む様子に変化は見られず、通信……ゴーグルに内蔵されている機能の一つ……を行う姿は極めて自然であり、会話を楽しむ様子は古今東西を問わずどこにでも見られるそれである。
『そろそろ時間だね。通信を切るよ。頑張ってね、進』
「ああ。それじゃまたな、駆。」
通信を切る。そのときには少年……進はすでに縁の上に立っていた。
荒れ狂うビル風が容赦なく少年を襲う。ともすれば風に足元を取られ、ビルから落下しそうな状況下で、しかし少年の悠然とした佇まいは変わらない。
『23時59分』
愛想なくゴーグルを通じて網膜に直接投影された数字を読み取り、進は今の装備を改める。
腰の後ろには、愛用のナイフが鞘に収められ、その両脇には小物を入れるポーチ。服装はいつものように動きやすさに重点を置いたもの……黒のΤシャツに赤のラインの入った黒のズボンにスニーカー……にしてある。
準備は万端、整っている。あとは時が満つるのを待つのみ。
『10秒前』
時計が目標の時間に近づいたためカウントダウンを開始する。
『9…、8…、7…、6…』
進はほとんど無意識にナイフの柄尻に手をやる。少しだけ昂ぶっていた気持ちが、落ち着いていくのを感じる。
『5…、4…、3…、』
僅かに息を吸い、
『2…、』
吐く。
『1…、』
そして、一瞬のためらいもなく進は、
『0…。』
やはり愛想なく表示された数字を尻目に、虚空にその身を投げ出した。
ど、どうでしたか?あんまりサイバーパンクっぽく無い気がしますが、気にしない。ご意見・御感想および誹謗・中傷ヨロズ承っています。でも砂糖多めの甘々でお願いします。次回更新は、えー、来週ぐらいには出来たらいいなぁ…。そんな希望をのたまうロドリゲスでした。