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閃き

いつも読んで頂きありがとうございます。

お気に入り増えてたりするとほんとテンションあがりますねこれ。多分人間が小さいからでしょうけど、ついはしゃぎマス。


タイトルとタグ、いい加減変えろよと言われましたので変更。

ついでに章分けを追加。

またまたついでに本文の文法をお約束表現に変更

(三点リーダの扱いとかですネ)


パチパチとたき火がはぜる音が響く。


「しかし魔法ってのは便利なものだな……」


 丁度立った状態での頭の高さだろうか。立ち上る煙がそのあたりに来ると風にさらされ、不自然に消えていく様が見える。

 黒装束のいる方角から見て死角となる位置を選び、さらに地面を少し掘り下げる形にしたので火の明かりが直接見えるという事もないだろう。


「一晩中はいやよ。非常に疲れるわ」


"非常に"を強調して言うミリアに苦笑いを返し、視線を上に上げる。


「見ての通りいい星空だ。これだけ晴れてるとかなり冷え込むだろう。俺としては火があるのは非常に助かるね」


 同じように"非常に"を強調してそう返すと、「仕方ないわねぇ」とすり寄って来る。


「何も火にあたるだけが身体を温める方法ではなくてよ?」


 挑発的な顔でそう言うミリアに、ジーナが割って入る。


「それは私の役目です!」


 ぴしゃりと断言するジーナに、ミリアと二人で疑問の眼差しを向ける。

 触ってみて下さいという彼女に従い手を握ると、そのあまりの温かさに驚きの声をあげる。もはや熱いと言ってもいい。


「鷹族は皆凄く体温が高いんです。昔の王族の方々は必ず傍に一人鷹族を置いておいたそうですよ。風邪をひいたときやお腹を壊した時などに……その……床に招いたそうです」


 何を想像しているのか、焚き火の明かりの中でもそれとわかる程に真っ赤になったジーナに、なるほどと素直な感心で頷く。

 地球でもどこかの地方で、お腹を壊した際に体温の高い犬を抱いて寝る。という人々がいるというのを聞いた事がある。犬と人を同列にするのはどうかとは思うが、まぁ同じような感じなのだろう。

 何やら遠い目でぶつぶつ言い出したジーナに軽い恐怖を感じ、薪を取りに行くと告げて席を立つ。



「なんだか懐かしいな……」


 暗い夜の森を一人歩いていると、この世界に来た時の事を思い出す。

 もう7年も経ってしまったが、当事の事は今でも鮮明に思い出せる。


 月夜に照らされた深い森。


 切り取られたアスファルト。


 北軍の部隊指揮官。


 ナバール隊長にパスリー。


 ただ生き残るために、必死で隊長の背中を追いかけた日々が懐かしい。


 鞘からソードを抜き、正面に構える。

 つや消しの施された刀身が鈍く光り、月明かりを反射する。


 自分の剣技や戦闘スタイルは、そのほとんどがナバール隊長に教わったものだ。

 もっとも彼の技術は自分ほど泥臭いものではなく、ずっとスマートなものだが。


 二度、三度と素振りをする。


「隊長が親父でフレアがお袋といった所か。いや、それだと母親と結婚した事になるな。それはまずい」


 剣を鞘にしまい、星空を見上げる。

 見知った星座はひとつも無いが、あの日見上げた空と同じだ。


「くそ、俺は思った以上にまいってるな」


 最近やたらとナーバスになる事が多い気がする。

 軍隊時代や剣闘士時代のように無我夢中で戦っていた頃と比べ、色々と考える事が増えたからだろうか。

 だが自分の判断ひとつで部下の生死が決まる以上、考えないわけにもいかない。

 命がかかるわけではないが、動向次第で部下とその家族が路頭に迷うという意味では、会社の管理職というのも似たようなものかもしれない。

 家族でドライブをするのが好きだった親父も、会社ではそのような苦労をしてたのだろうか?


「…………そうだ、タイヤだ」


 ニドルで見つかったタイヤのことを思い出す。

 あんなものがこちらにある以上、あそこで扉が開いたのは間違い無い。

 道の端に寄せてあったので誰かが動かしたのだろうが、捨て置いたという事は運んできたわけではなく、邪魔だからどかしたのだろう。

 タイヤにはホイールや軸がついており、軸は鋭利な刃物で切断されたかのように綺麗に切り取られていた。

 恐らく俺が来た時と同じように空間ごと放り込まれたに違いない。


「もし一歩でもずれていたら俺もああなってたのか……」


 真っ二つに切り裂かれた自分を想像し、身震いする。

 しかしあんなものを持ってきても何の役にもたたない事を考えると、誰かが意図的に何かを呼び寄せているわけではなく、そこら辺の空間を適当に切り取っているという事だろうか?

 そうなると綺麗に体ごと連れて来られた自分は、はたして運がいいのか悪いのか。


「そろそろ戻るか……お、随分懐かしいものがあるな」


 足元に落ちていたまつぼっくりを拾い手に取る。


「こっちにもあるんだな。ウルに持っていってやろう」


 いつも手持ち無沙汰にナイフをいじってるあいつの事だ。お手玉か何かにして遊ぶだろう。


 他にも落ちていた三つほどを懐に入れると、

 薪を手に焚き火へと戻る事にした。




「なんですか?これ」


 まつぼっくりを手にしげしげと観察するジーナに驚きの声をもらす。


「何って、知らないのか? まつぼっくり。松かさ。あぁいや、こっちで何と言うのかは知らないが」


 ジーナから手渡されたそれを、ミリアも同様に不思議そうな顔で見ている。


「ここら辺でしか生えていない植物か何かかしらね。私も初めて見るわ」


 それにしても不気味な形ね、と少し嫌そうな顔でこちらに返してよこす。


「ここらしかないって、そんな事はないだろう。松だぞ? 世界中どこにでも……いや…………ちょっと待ってくれ」


 手で顔を覆い、頭の中に閃きかけた何かを逃さないようにする。


 ――本当か?本当にどこにでもあるのか?


「ジーナ、これと同じか……もしくは似たようなものを見た事は?」


 ――こいつは俺と同じなんじゃないのか?


「いえ……残念ですけどありません。その、アイロナ周辺しかわかりませんけど」


 ――もしそうだとすると……


「ミリア。君は東の国の住民だ。こいつを見た事はないんだな?」


 ――探せる……探せるぞ!!


「無いわね。これでも魔女よ。森での暮らしは長いわ。ねぇアキラ、それが一体なんだというの?」


 ミリアの肩を強く掴むと、彼女は短い悲鳴を上げる。


「分布だよ! 分布を調べればいいんだ!! そうだ、なんで思いつかなかったんだ。人間だってアスファルトだってなんだって来てるんだ。植物やその種子がまぎれてたって何もおかしくない!」


 手にとった松かさを高くかざす。


「こいつはここで自生してる。もしこいつが地球産だとするなら扉の近くで育ち、増えていってるはずだ。森を調べてこいつらを見つければいい。その数が多い所ほど扉に近いはずだ!」


 やがてその意味を悟ったのだろう、ミリアが得心の表情を見せる。


「なるほど……そういう事ね。時間はかかるけれど悪くない手じゃないかしら。今までは手がかりすら無かったんでしょう?地方でも国でも特定できれば万々歳ね。けれど扉がそもそもどこかに存在している何かである、という確証は何も無いわよ?未知の魔法だったり、もっと大いなる何かの現れなのかもしれないわ」


 ミリアの言に頷いて答える。


「ああ、確かにそうだ。だが例えはっきりとした形として存在する何かで無かったとしても、間違いなくその何かに近づく事ができる。偉大なる魔法使いがいるのであればそいつを探せる。神秘を生み出す何かがあるのであれば、それを見つけられる。もしそれが我々の人知を超えた、まるで気まぐれな何かであるのならば……」


 手元にある松かさをじっと見やる。


「そこで諦める事ができる。それは多分、凄く重要な事のはずだ」




「ウルさん、ベアトリスも。ほら、起きて下さい。出発ですよ」


ジーナの声に「んあー?」と寝ぼけた返事を返す二人。本当に次の野営を任せても大丈夫なのかと不安が募る。


 用を足しに茂みへと入ってく二人を見送ると、荷物をまとめ、万が一を考えて野営の痕跡を消す事にする。

 火を起こす為に掘った盛り土を再び元の場所に戻し、昨晩のうちにすり潰しておいた、消臭効果のある木の実の粉末を振り掛ける。後は適当な枯葉を振りまけば、よほど注意して観察しなければわからないだろう。

「それ、少し頂けないかしら」と手を伸ばすミリアに、残った粉を渡す。


「普段内勤だと、自分の臭いが気になるかい?」


 戻ってきたベアトリスがニヤニヤとミリアをからかう。

 ミリアは鼻で笑うと、自らのお腹をとんとんと叩く。


「まさか。こっちに来た時は五日間も野宿を経験してるわ。今更よ。そうじゃなくて今あの日なの。血の匂いにつられて魔物が来るのは避けたいわ」


 ミリアのその言葉に少し驚く。

 恐らく非常に失礼な話なのだろうが、蛇族という位だから卵で増えるのかと期待していたのだが……やはり基本は同じ人間という事か。


「アキラさん、黒装束は山の中腹を大回りしているようです。近道して距離を詰めますか?」


 ジーナの声にかぶりを振る。


「いや、まずあいつらが野営していた場所に向かおう。そのままになっていれば追跡には気付かれていないという事になる。さ、ミリアが戻り次第出発としよう」



 その後黒装束達のキャンプ跡を見つけ、どうやら気付かれていないようだと一安心し、引き続き追跡行動を再開する。

 途中何度か大きな蛇や昆虫――いつかアイロナ周辺で逢った奴らだ。どこにでもいる!――をなるべく音をたてないように苦労しながら撃退すると、ついに街道から見て山の反対側まで辿り着いた。


「ここからは下りだ。しんどいだろうが危ないからな。自分の足で歩くんだ」


 ぶーぶーと文句をたれるミリアを無理矢理背中から下ろすと、ロープとベルトで全員の体を結び付ける。この中に崖から足を踏み外す間抜けがいるとは思えないが、用心するに越した事は無いだろう。


「なんか捕まったお尋ね者みたいじゃあないかい?」


 複雑な表情をするベアトリスに、「なら私が衛兵さんね」と先頭を歩くジーナが笑顔を向ける。


「……ちょ、ちょっとベアトリス。冗談よ?」


 急に難しい顔をして下を向いたベアトリスに、ジーナが慌てる。


「……ねえアンタ。この辺に村があったりとか無いよねえ」


「ああ。どうした?何か匂うか?」


 鼻をひくつかせるベアトリスをしばし待つ。


「そさね。料理の匂い。汚水の臭い。死体の匂い。それに病気の匂いもするよ。先遣隊の面子だけで来て正解だったかもしれないね」


 という事は疫病か?かなりまとまった人数が生活する場所が近いという事か。

 よし、と声を出し、ウルに聞き耳を立ててもらおうとした所で、ジーナが小さい悲鳴を上げる。見るとどこか一点を指さしているようだ。

 首を巡らして崖の向こう側へと目を凝らす。


「あれは…………砦か?」


まだ遠すぎてよくは見えないが、岸壁を利用した大きな建造物が見える。


「もしかしたら古い遺跡のものかもしれないわね。きっとまだ東の国がひとつにまとまる前の物だわ」


ミリアの声になるほどと頷く。


「これは少し予定変更だな。砦となるとニドルからたった二日の所に軍事拠点が存在する事になる。それはまずい。

 できれば避けたいが場合によっては攻城戦か……可能な限り人数や何かの情報を持って帰ろう。思ったより大きな話になってきたな。」


 いつの間にか真剣な表情になっていた一同に、もうひと踏ん張りするぞ、と声を掛ける。

 観察するのであれば向こう側へ渡る必要があるだろう。夜間であればともかく、まさか昼間から橋を堂々と渡るわけにもいかない。


 荷物の中に含まれたロープの長さやアンカーの数を思い描くと、

 なんとか下へ降りれる場所が無いかを探し始めた。






いい加減戦闘シーンを書きたくなってきたぁ

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