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一同

ロリババァというコメントに対する反響が多くてびっくり。

「もうすぐ町が見えてくるはずだ」


 揺れる馬上で、こちらの懐に収まる形で毛布に包まっているミリアにそう声を掛けると、彼女はぶつぶつと腰から尻に走る痛みに対する呪詛を呟きながら目を覚ました。


「貴方さして遠くないって言ってたわよね。馬を乗りついで5日もかかる所は、"普通は"遠いと言うわ」


 普通は、という部分を強調してそう言うと、げっそりした顔でこちらを睨む。



 フレアからの手紙を受け取った後、調査作業の引き継ぎや何かを急いで終わらせると、すぐに旅の準備を整えた。

 ミリアは数百年前と随分様変わりした文明の様子を見ようと、まだ町でゆっくりしたい様子ではあったが、良い機会なので連れて行く事にする。協力者として頼れる存在なのかどうか計りかねていたからだ。


「ここに我々の魔法使いがいない以上、彼女の価値がどれほどなのかさっぱりですね」


 ミリアが寝付いた後にウォーレンが言った言葉だが、まったくその通りだろう。


 馬に乗った事がないというミリアの為に、馬車を購入しても良かったのだが、さして遠いわけでもないし、何より馬車は危険なので二人乗りで向かう事に。

 最初はその速度に歓声を上げていた彼女だが、二時間も経った頃には馬乗酔いでぐったりとしていた。二日目に入った頃にはさすがに限界だと判断したのだろう、自分自身に睡眠の魔法を浴びせ、そのまま寝入ってしまった。

 こちらとしては話し相手がいなくなるのは寂しかったが、ブーツにいくらかかかった彼女の吐しゃ物の跡に、仕方がないかと思いやる。


 しかしこちらとしては馬での移動は実にありがたかった。

 徒歩での旅に比べ快適な事この上ない。確かに体力の消耗は激しいが、慣れればどうという事は無いし、何より魔物に襲われる危険性が減るのが助かった。馬においつける魔物などそうそういない。

 欠点を挙げるとすれば馬というのは手間がかかるし、何より高級品である事だが、どうせ普段ろくな使い道の無い給金だ。派手に使ってしまって良かったと思っている。


 旅の途中で唯一危険を感じたのは馬の肉を狙って体長8メートル程もある巨大な鳥に襲われた時だったが、ミリアが放った電撃の魔法を食らうと、加速度そのままに地面に激突してすぐに動かなくなった。

 彼女曰く空を飛ぶ生き物は竜でも無い限り大した脅威では無いらしい。考えてみれば当たり前の事で、微弱な電気でも揚力を生み出している羽を動かす筋肉さえ痺れさせてしまえば、後は墜落するしかないという事だ。

 結果だけを見れば、巨鳥は旅の間の食生活を少し豊かにしてくれた存在だった。


「まぁ、そう怒るな。朝焼いた肉がまだあるぞ、食べるか?」


「さすがにもう飽きたわ。それにこれ以上吐きたくないし。それより貴方、向こうに見えてるあれ。何の集まりかしら?」


 ミリアが指差す方を見やると、木の柵に囲まれたいくつものテントの様な物が見える。


 ――なんだろう。軍事キャンプか?


 思ったよりも大規模なそれが気になり、馬の進路をキャンプ側へ向け、近づいて見る事にする。


 やがてしばらくすると、一定間隔に並べられた立て看板を見つけ、そのキャンプの正体が判明する。

 看板には包帯を模した図形に、大きなバツが三つ。


「これは……疫病者の難民キャンプか!」


 馬の上で伸びあがるようにして中を覗くと、配給のスープだろうか。列をなしてゆっくりと歩く人々や、寒空の中地面で横になっている人等が見える。

 横にある大きな穴に放り投げられているのは恐らく人だろう。中がどうなっているのか見たくもないが、その穴の大きさからかなりの人数だとわかる。


「もしくはこれから必要になるか、か。いずれにせよ悲惨だな」


 顔をしかめながらしばらく中を窺っていたが、行きましょう。危険だわ、というミリアの声に従い、元のルートへ戻る事にする。


 ――疫病か……魔物なんかよりずっと恐ろしいものだな。


 なんとなく息苦しさを感じてしまい、深呼吸をする。

 大丈夫なのはわかっている。

 だがそれでも拭いきれない不安がいつまでもまとわりついて来た。




「あぁ……本当に毎回これをやるつもりかあいつは。」


 以前戻った時と同じように勢揃いした団員達を見やり、溜息をつく。

 調査へ向かっている人間がほとんどなので、分析対策班なのだろうが、それでも結構な数だ。


 半ばうんざりした様子でぞんざいな敬礼を返すと、フレアの脇に懐かしい顔ぶれを見つける。


「ジーナにベアトリスか。良かった。元気そうだ」


 軽く手を振るが、ガチガチに緊張した様子の二人は気付いていないようだ。二人そろって中空を見つめている。

 苦笑いしつつ馬を降りると、ミリアを抱き下ろし、フレアの元へ向かう。



「ありきたりな挨拶で悪いが、よく戻ったな。ご苦労だった」


 フレアは腕を上げる事で兵達に手を下ろさせ、こちらへゆっくりと近づいてくると、いつもの威圧感を伴う下目使いでミリアを見やる。


「ふむ。色々と話したい事はあるだろうが、まずはそちらのお嬢さんのご紹介をお願いできるかね?」


「あ、あぁ、そうだな。こっちはミリア。湖の魔女って言えば通じるのか? とにかく魔法使いだな。色々あって協力してくれる事になった。」


 湖の魔女のくだりでフレアの眉がぴくっと動く。


「なるほど。魔道士なら大歓迎だよ。よろしく魔女殿。私の事はそこの男から聞いているだろう? 良い働きを期待しているよ。」


 まだ入団すると正式に決まったわけでは無いのに、既に高圧的な物言いをするフレアにミリアがどう反応するかと冷や汗をかくが、驚いた事に彼女は膝を付き、深々とした臣下の礼を取った。


 ふむ。と満足気に頷き、「しかし」とこちらに視線を移すフレア。


「君は帰って来るたびに何かしらおもしろいものを持ってくるね。人だったり物だったり。ついこの間まで外の世界に出るのを恐れていた赤ん坊のような男だったとは思えないね。」


 反論のしようも無いので、はは……と渇いた苦笑いを返す。

 いまだに町中へはほとんど出ないけどな、と心の中で返しを入れていると、フレアのあたりから実に懐かしい声が響く。


「よぅアニキ! 元気してたか!」


 恐らく驚かせようとしていたのだろう。フレアのスカートに隠れるようにして、横から顔だけ出したウルがにやにやとした笑顔でこちらを見ている。


「……ウル! お前! ……良かった、元気そうじゃないか! 身体は平気か? 大丈夫なのか? もう歩けるのか?」


 思わず駆け寄ってその身体を持ち上げると、くるくると回りながら矢継ぎ早に質問を投げる。

 しかし困った様にうつむくウルに、まだどこか痛むのだろうかと訝しむ。


「や、体調はその、元気だけどさ。なぁアニキ。みんな見てるぜ。その、恥ずかしいよ。」


 そう言われれば、と回りを見渡そうとしたが、団員達のくすくすといった忍び笑いが耳に入り、やめる事にする。

 首根っこを持ち上げられた猫のような体制のウルを持ち上げたまま、どうしたものかとしばし固まる。


 しかしもうこれは手遅れだなと判断し、

 そのままの格好で屋敷へと走る事にした。




「まったく。本来であれば組織の長としての威厳について説教をしてやる所だが、あれだけ笑わせてもらったのだ。そこは免除するとしよう」


フレアの言葉に食堂に集まった七人のうち五人が笑い声を上げる。

残りの二人はもちろん俺とウルだ。


「楽しんで頂けたようで何よりだよ。それよりウル、身体の方はどうなんだ?」


 頬をリスのように膨らませたウルに、自分の分の果物を分けてやりながら訊ねる。


「おうよ、元気一杯だぜ!! ……って言いたいとこだけどさ。まだ足が上手く動かねぇんだ。医者のじじぃが言うにはあと二,三ヶ月はかかるだろってさ。そんな長い間何しろってんだよな。」


 たぶんじじぃの話し相手がいなくなると困るからだぜ、と果物をフォークで突付くウル。

 何か後遺症でも残っていたらと心配していたが、この様子なら少なくとも日常生活を送る分には支障はなさそうだ。

 だが戦闘行動となるとどうなのだろう。こいつはこいつで目的を持って戦っている。これ以上剣を振れないとなると、何か別の方法を探す事になるだろう。


 しばらくウルの方を見ながらそう考えていると、視線に気付いたウルが挑発的な目でフォークをくいくいと動かす。


 しばらくしてその行為の意味に気付くと、こちらも挑発的な笑みを浮かべ、あえて難易度の高いぶどうの様な果物をウル目掛けて放ってやる。


 ウルはそれをぎりぎりまで引き付けると、驚いた事に横からフォークに突き刺した。


「アキラ。ウルの身体は傷跡を除けば元通りになるとの事だよ」


 優しい笑みを浮かべそう言うフレアに頷きを返す。


「そのようだな。しかしこれを機に少しは淑やかになってるかと思ったが、中身もまさにそのままだ」


 笑顔と共にそう言ってやると、「余計なお世話だ!」と叫ぶウルに安堵を覚える。

 心の中で頑張れよとエールを送ると、視線をガチガチに固まってほとんど料理を食べていない二人に移す。


「ジーナ、ベアトリス。フレアはよっぽどの失礼が無ければマナーや何かを気にするような奴じゃない。気にせず食べるといいぞ」


 背筋を可能な限り伸ばし、それでいて縮こまるという器用な芸当をやってのける二人。手で食べても怒らないだろうさと言ってやると、ようやく料理を食べ始める。あれでは恐らく味などわからないだろう。


「アイロナが疫病にやられたと聞いたが、実際の所どんな感じなんだ?」


 まるでロボットの様に首だけまわしてこちらを見やるジーナ。


「はい。町へ猪を売りに行ったのですが……その、アキラさん……様のおかげでいつもよりずっと獲物が獲れるようになったので」


 無表情でそう語るジーナに、落ち着いて喋るよう呼びかける。


「あの。はい。町はまるで寝物語で聞かされる地獄のようでした。町の至る所で亡くなった人が溢れ、通りを歩いている人はほとんど見かけませんでした。恐らく家の中に閉じこもっていたのだとは思いますが……」


 当事の事を思い出したのだろう、暗い顔で下を向く。


「子供もお年寄りも……みんな倒れていました。お店の方が言うには誰も彼もが町から離れる事だけを考えていたとの事です。静まり返った町で唯一元気そうだったのは……」


 はっと何かを思い出したようにこちらを見る。


「炭鉱にいた黒いローブの方を覚えていますか? あの人と同じ格好をした人達が何人もいました。みんな口を揃えて大声で言うんです。この試練を耐えれば幸福が訪れる、って。」


 確か……と前置きをする。


「扉の会、と名乗っていました。新しい宗教か何かでしょうか?」





ようやく全員集合といった所でしょうか。

冒険といったらパーティーですよね。


でも主人公以外みんな女性。

ハーレムタグは伊達じゃない!!

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