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国松、誕生

【一六〇八年五月二十三日】

 豊臣秀頼に子が生まれる。幼名・国松という。


 家の主は、嫡男をもうけ、次世代に繋げていかねばならない。

 あいにくと正室・千との間に子のできる気配はない。


 片桐且元、大野修理は秀頼に側室を持つことを勧めた。

 当初、秀頼は千の心情を慮り頑なに拒否していた。しかし、千が高台寺を訪れた際に、高台院ことねねと淀は千に優しく諭して聞かせた。

 その話の中では正室として側室に子ができることは決して心穏やかではない事を、ねねの体験から隠さずに話して聞かせる。

 その上で秀吉が興し秀頼が継いだ豊臣の家を次世代に繋いでいかねばならぬ事を時をかけ優しく諭したのである。

 世が乱れていなければねねも淀も側室を進める事もなかったであろう。二人は乱れた世であるからこそ、中心となる家が必要であり、その家が豊臣家であると思っていたのであった。


 やがて諭された千は、秀頼に側室を勧め、生まれた子は我が子として育てると言ったのである。


 こうして千の勧めもあり、渡辺五兵衛の娘・伊茶を側室とし、国松が生まれたのであった。


 千は複雑な心境であった。できれば千自身が秀頼の子を産みたかった。

 しかし、国松の顔を見ると、なんとも可愛らしい。小さな小さな掌に千が人差し指を乗せると、きゅっと握る。この子は我が子であると思い、育てると心にきつく誓ったのであった。


 「千よ。済まぬの」


 秀頼は国松を抱く千に語りかける。


 「はて? 何の事でございましょう? 」


 「国松よ」


 「はい、我が子・国松が何か?」


 千は秀頼が自分を気遣ってくれている事を肌で感じていた。


 「いや、なんでもない」


 秀頼は千の返答に笑って答えた。

 秀頼も千の心が嬉しかった。本当の我が子のように抱いている姿を見ると、頑張らねばならぬと思うのあった。



 高台院と淀は、千と伊茶が、かつての二人の関係のようにさせてはならないと、秀頼を高台寺に呼んだ。


 「これは、高台院様、母上様、お茶を馳走いただけるとの事。楽しみにして参りました」


 秀頼がやってきた。


 三人は茶を飲みながら、とりとめのない話をしている。

 秀頼は幾杯目かの茶を飲み干し、ことりと茶碗を置いた。

 そうして、まさに秀吉譲りの笑顔でこう言ったのだ。


 「お二人のご心配は分かりますよ。でも、ご心配は無用。

  国松は余と千の子でございます。伊茶は乳母。伊茶も分かってくれました。

  伊茶の側室を解き、余は今後、側室は持ちませぬ」


 「そうですか。秀頼殿はお分かりですか。ならば我らは何も言うことはございません。ね、淀殿」


 「はい、高台院様。ほほほっ」




 この後、秀頼は宣言通り生涯側室を持つことはなく過ごしたのである。

 人の親になると言うことは、大きな出来事で、秀頼は今まで以上に、政務に励んでいる。


 秀頼は里見義康に書状を送った。それには、秀頼が死んだ場合、里見家が国松の後見となり、国松の資質を見極め、関白の器でないと感じたら、跡目を継がせるなと。

 また、国松が秀頼の跡目を継がない事で、世が混乱し乱れるならば、里見、前田、真田とよく話し合い、一時的に国松を跡目に据えるのは仕方がないが、政ごとは国松にさせてはならぬこと。とも書き記されてあった。


 この書状を受け取った里見義康は


 「親子でござるなぁ。ははははっ。太閤様と同じでござる。」


 と笑ったという。

 そう、かつて秀吉は里見義康の元を訪れ、秀頼の事を託した。まったく同じ事を、その秀頼が国松の事で言うのであった。


 

 秀頼は、まだ歯も生えていない国松の教育係に真田幸昌、里見藤康を任じた。

 真田幸昌は真田幸村の、里見藤康は里見義康の嫡男である。


 秀頼は乳児の内に、教育係を定めることで、国松を利用とするよからぬ輩が出ないようにしたのである。



 ともあれ秀頼に嫡男・国松が誕生したのであった。

 が、世の中は未だ治まる気配はない……。 まだ秀頼の関白としての、そして豊臣家当主としての戦いは続くのである。

とりあえず、国松の誕生で、この外伝は終わります。

もっと他に色々なサイドストーリーが頭の中に、漠然とあります。

形になりましたら、またシリーズで…

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