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イロナキシ-Discolored death-  作者: あきの梅雨
来たるべき災厄への希望
46/66

狂い始めた歯車は全てを砕いて赤く染まる

 とりあえず、今話で二章終了ってことで。

 あ、でも、extra話を追加するかもです。


 とりあえず、1ヶ月くらい充電期間をもらうかもです。次に書く内容は決まってるんで、はい。そのうちにでも、アップ再開します。

 外部居住区は閑散としていた。先月のプレデター殲滅作戦が無事に完了した証なのだろうが、不気味さを覚えさせる。物音一つない世界で矮躯の少女は一人、コンクリ壁に押しつぶされた車両の上に座り込んでいた。何もすることがないというより、何かが起きるのを待っているかのようであった。

 少女は眠たげに欠伸をすると、曇りがちの空を見上げた。しばらくそうしていると、少女の視線は空に黒点を捉えた。まるで遊泳するように緩慢な動作で影は次第に迫り、その姿を克明にする。まるで壮麗な龍を模った騎士は全身を純白に染めていた。唯一、両腕の先に手の変わりに存在する帯状の部位だけが赤々と揺らめいていた。

 少女の目の前に降り立った機影が纏った風が、少女の薄い茶髪の髪をなびかせた。少女はうなじを掻き上げてその能面の表情に呆れの感情を掃いた。


相良さがら少年、まさかカグツチでここまで来たのかしら? もしそうなら、どれほど人目を引いたと思う?」

「ごめんなさい、リーダー。ボクは遅れちゃ駄目だと思って」

「遅れるも何も、待ち合わせの時間は決めてなかったわね」


 淡々と語る少女の態度に、まるで龍のような騎士は気圧されたように黙り込んだ。


「まぁいいわ。私の方も時間を決めなかったのが悪いし、あら? ちょっとごめんなさい」


 そう断って、少女は懐からスマートフォンを取り出すと耳に当てた。そうして口を開いた少女は聞き慣れない異国の言語を流暢に発し始めた。龍似の騎士は寡黙でその傍らに控えていた。会話を終えた少女が携帯をしまうと、騎士は少女に問いかけた。


「本当に始めるんですか? それで何か変わるんですか」


 少女は極々僅かに口端を吊り上げて、立ち上がった。


「変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。悪化するかもしれないし、改善するかもしれない。それでも実行は確定したわ。世界各国の居住区において活動を開始するのよ」

「世界規模で……本当に」

「臆したのかしら?」

「そんなわけないじゃないですか」


 少し焦りの色を窺わせる少年の声に少女は苦笑を漏らした。




「誰だ! お前らッ」


 突然と怒声が廃墟に反響して消えた。少女の気怠そうな視線の先には三体の騎士がいた。モノクロの塗装が特徴的なそれらは、警察の所有する騎士であることは明白だった。少女とその傍らの騎士が不審な人間かを推し計った彼らは、やがて結論付けた様子で各々の兵装を展開した。が、彼らは少女らに一歩でも近づくことは叶わなかった。


「へッ?」


 素っ頓狂な声と共に彼ら騎士の胴体が斜めにズレ、地面に転がった。切断された周囲は赤く変色して熱を発していた。


「警察の狗どもが、目障りだ」


 嘲笑を続ける龍似の騎士は、まるでつい先ほどとは別人格だった。騎士は両腕の先で波打つ帯状の刃でひとしきり周囲の廃墟を刻むと冷静さを取り戻したように静かになった。


「落ち着いたかしら」

「えぇ、すみません」

「感情の制御が不安定になってるわね。あとでドクターにでも診察をお願いしましょ」


 年相応に見えないほど小さな少女は身軽そうに車両の上から飛び降りる。フワリと広がったスカートは蒼色のチェック柄をしていた。際どい部分まで露わになった太股にはシミ一つ無く、白い肌の上に牙を剥き出しにした蛇の図柄が浮かんでいた。



 人々はそれを見て口々に言うことだろう。

『邪龍』そして『嘲笑する虐殺者(ニーズヘッグ)』であると。




 世界は未だ知らなかった。この世界の嘘を。────災厄の存在を。



 了

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