拝啓、箱の中のプリンセスへ。
どうもみなさんこんにちは、「月ノ瀬あゆ」と申します!
姉を愛する少年の行く末を見守っていただけると嬉しいです。
「──姉さん、ただいま。」
僕は唯一の家族である姉さんに「ただいま」と挨拶をする。
「ふふっ。おかえりなさい、琉生。」
いつものように優しい声で僕に語りかける。
「今日は帰ってくるの少し遅かったね〜。どうかしたの?」
「少し先生にこき使われてた。」
「あら、そうなの?お疲れ様。……よしっ!とりあえず荷物置いてきてちょうだい!晩御飯、食べるの待ってたんだからね。」
姉さんに急かされ、部屋に荷物を置き椅子に座る。
「今日のご飯はね、ハンバーグだよ〜」
「やったっ。」
「なんだか子供みたいね。」
「いいでしょ?別にさぁ〜」
僕は姉を見て手を合わせる。
「姉さん、いただきます。」
「……召し上がれ。」
僕はハンバーグを食べ進める。
「姉さん、本当に美味しいよ。」
「ふふっ。良かったわ。」
姉さんは微笑んで僕の方を見る。
……あぁ、なんて美しいのだろうか。
その美しく靡く白銀の髪
その整った美しい顔
その輝く真紅の瞳
そのしなやかな指先
その美しい所作。
姉さんの一挙手一投足に目が奪われる。
姉さんは唯一の家族。
──そして、僕が唯一『美しい』と思えるものだ。
「……ん?どうしたの?私の方をずっと見て。」
「な、なんでもないよ。」
「なんか、ずっと見られると照れくさいね……」
「ごめんごめん。」
姉さんは照れくさいのを誤魔化すように頬をかく。
「……もう!さっさと食べなさい!」
姉さんに怒られてしまう。
「はーい。」
そう返事をしてハンバーグを口いっぱいに頬張る。
……ほんとに、美味しいなぁ。
そんなことを思いながらハンバーグを食べ終わる。
「姉さん、ごちそうさま。」
「はい、お粗末さまでした。」
僕は食器をキッチンに運ぶ。
「じゃあ、皿洗いしちゃうから。」
「ありがと。」
姉さんは手を振りながら部屋に戻って行った。
「……僕もさっさと皿洗い終わらして、部屋に戻ろう。」
誰もいない空間で、独り言を呟きながら手を動かし続ける。
「ふぅ……。やっと終わった。」
ため息をつきながら部屋のベッドにダイブする。
「うーん。面倒だし、今日は風呂入らなくて良いや。明日の朝にでも入れば問題ないでしょ。」
自分を正当化するかのように言い放つ。
「姉さん、おやすみなさい……」
最愛の姉にそう告げるかのように呟く。
「琉生、おはよう。朝だよ。」
そんな声が聞こえ、僕は目覚める。
「……姉さん、おはよ。」
「朝ごはん、できてるから食べてね。食べたらお風呂、入ってね。」
姉さんはそう言った後、自分の部屋に戻る。
僕はリビングの机に置いてある朝ごはんを食べる。
「姉さん、いただきます。」
「……美味しい。」
サンドイッチとか、久しぶりに食べたな。
「姉さん、ごちそうさま。」
食器をキッチンに運ぶ。
「あんま時間ないし、家帰ってきたらお皿洗いするか。」
そう言いながら風呂に向かう。
「……学校行きたくないな。」
そう、呟きながら。
風呂から上がり、制服に着替えて学校に行く支度をする。
「姉さん、そろそろ行ってくるね。」
「えぇ。気をつけて行ってきてね。」
「あ、そうだ。少し帰りが遅くなるかも。また先生にこき使われるかもだから。」
「わかった。じゃあ少し遅めに晩御飯、準備しておくね。」
「ありがとう。じゃ、行ってきます。」
「……行ってらっしゃい。」
姉さんは笑顔で僕に手を振って見送る。
「ふふっ。やっぱり、姉さんは美しい。」
放課後。先生に色々こき使われ、かなり帰るのが遅くなってしまった。空は段々と暗くなり始めている。
「こんなに遅いと、姉さんに怒られちゃうな……」
僕は少しだけ急いで帰る。
はぁ……。やっと家が見えてきた。
「あ、あれ……?」
誰だろう。暗くてよく見えないけど、家の前に誰かが居る。
もしかして、強盗とか……?
えぇ…どうしよ。うちに金目のものはないってのに。
そう思った瞬間、1人がこちらに近づいてくる。
「……えっ!?」
心臓が跳ねる。
「…………あれ?警察の人?」
なんで、居るんだろ?
「ねぇ、君。そこの家に住んでいる人かい?」
「え、あ……。まぁ、はい。」
「…単刀直入に言ってしまうが、近所の方から『君の家から異臭がする』という通報を何件か受けてね。まぁ、一応確認するだけだから。少し家の中を見せてもらっても良いかな?」
──この警察の人は、何を言っているのだろう。
この家から異臭がする?
そんなわけがない。僕や姉さんも、気にならなかった。
「まぁ……。良いですけど。」
「ありがとう。」
僕は家の扉を開ける。
「姉さん、ただいま。」
……あれ?いつもなら「おかえり」って言ってくれるはずなのに。
「……お姉さんがいるんですか?」
「あ、はい。そうです。」
すると、警察の人は険しい顔をして黙り込む。
「……どうかしましたか?」
僕は警察の人に問いかける。
「いや………。なんでも、ないよ。」
不自然な苦笑いを浮かべる。
……なんでそんな顔をするのだろうか?
「うーん。姉さん部屋で寝てたりするのかなぁ…?」
「一応、君のお姉さんに会ってみてもいいかな?」
「まあ、姉さんが嫌じゃないなら……良いですよ。」
僕は姉さんの部屋の前に警察の人を連れて行く。
「姉さーん?寝てるの?警察の人が姉さんと話したいんだってー!」
ノックをしながら、扉越しに話す。
「……姉さん、部屋入っちゃうよ?」
ドアノブに手をかける。
「返事ないから入っちゃうね〜。」
そう言いながら姉さんの部屋に足を踏み入れる。
何も変わらない本棚にベッド。
……ずっと、変わらないな。
鼻歌を歌いながら机の上にあるものを順に見ていく。
「これは姉さんがよく付けているお気に入りのネックレス。」
確かこれ、僕がプレゼントしたんだったっけ。ちょっと奮発したんだよなぁ。
「あ、これは姉さんが好きなキャラクターのキーホルダーだ。」
姉さん、これ限定のやつなんだって嬉しそうに自慢してきたんだったっけな?
「ふふっ。この頃も美しかったな。」
「……でも、やっぱ今の方が美しいよ。姉さん。」
「ねぇ、君のお姉さんはどこにいるんだい?ここからだと人がいるように感じられないんだが……。」
警察の人は僕に問いかける。
「え?この部屋にいますよ?姉さんのこと、見ますか?」
「あぁ……。なら、君のお姉さんに会わせてもらうよ。」
「わかりました。なら部屋の奥にきてください。奥に姉さんがいるので。」
警察の人は恐る恐る部屋に足を踏み入れる。
「警察の方、こっちですよ〜」
手招きをしながらゆっくり奥へと進み、
僕は部屋の奥に置かれた冷凍庫の前に立ち止まる。
「姉さん、警察の人が来たよ。なんか、話がしたいんだってさ。」
僕は口元に笑みを浮かべる。
「……久しぶりの、お客さんだね。」
取手に手をかけ、冷凍庫の扉を開ける。
足元に冷たい空気が広がる。
「見てくださいっ!姉さん、とっても美しいでしょう!?」
僕は警察の人に笑顔でそう問いかける。
「──ぁ………ぇ………え?」
警察の人は何かを恐れるような青ざめた顔をし、少しずつ後ずさっていく。
「ん?どうしたんですか?ちゃんと見てくださいよ。こんなにも美しいのに……。ほんと、勿体無い。」
「なんだか不思議だね、姉さん。」
「……っ、あっ、ぇ……?」
「……何してんだろ。」
うーん。姉さんを見て何も思わないのかな?
「………こ、こちら松原。応援、願います。」
警察の人は消え入りそうな声で無線機に連絡を入れる。
「あのぉ〜?姉さんを見たいんじゃなかったんですか?見たいって言ったんですから、ちゃんと見てあげてくださいよ。」
警察の人は僕に怒気を孕んだ声で言う。
「君っ……。何を……何をしたんだっ……!それ、は……お姉さんじゃ…ないのか…!?
「何当たり前のこと言ってるんですか?そりゃ、そうですよ?」
僕は警察の人に笑顔で言う。
「はっ……?」
「僕はただ、姉さんの時間を止めてあげただけ。てか、姉さんも望んでたし。いいじゃないですか、別に。」
「えっ……?」
「だって、姉さんに聞いたんですよ。」
──姉の誕生日前日。
「姉さん。突然、変なこと聞くけどさ………。いつまでも、美しくいたいと思う?」
「えぇ?急にどうしたの?」
すると、姉さんは考える素振りをしてから答える。
「うーん。私はいつまでも、美しくいたいわねぇ〜。」
「──!!やっぱり、そうなんだね。」
自然と笑みが溢れる。
「どうしたのよ?そんなニコニコしちゃってぇ〜」
僕の頬をぷにぷにと突く。
「もう、やめてよぉ。僕はもう子供じゃないんだからさぁ。」
──そうなんだ。やっぱり、そうなんだ。姉さんは、僕と同じことを思っていたんだ。
「姉さん、誕生日プレゼント……。楽しみに、しててね?」
「えぇ。いつまでも楽しみに、待ってますよ。」
今年のプレゼントも、喜んでくれるかな?
「……僕はただ、怖かっただけなんですよ。姉さんが変化することを、恐れていたんです。」
「愛する人が変わることって、恐ろしい事だと、思いません?」
私の目の前にいる少年は、少し諦めたような笑みを浮かべながらこちらを見る。
「っ……!」
大切な人が、変わっていってしまうことを恐れる気持ちは、私にも理解できる。
──だけど、こんな結末にすることはなかったんじゃないだろうか。
本当に、少年のお姉さんも『変化することが恐ろしい』と、思っていたのだろうか。
お姉さんは、ただ……
『彼と共に生きたい』
そう、願っていただけではないのではないのか?
「姉さんも、変化することを恐れた。これは、お互いに望んだこと……ですから。」
そう言った直後、少年は冷凍庫に入った姉を見て、恍惚の表情を浮かべる。
「あぁ……。やっぱり、何回見ても僕は姉さんの美しい姿に見惚れてしまう。」
姉さんの白い肌。
美しく輝く白銀の髪。
今はもう、閉じられた美しい真紅の瞳。
あの日から、もう姉さんは変わることはない。
変わることなく、いつまでも美しい姿で。
「姉さんは、僕の中で生きている。」
「……だから、大丈夫、大丈夫。」
「これからも、ずっっと……。一緒だからね。姉さん。」
「ふふっ。やっぱり、姉さんを愛してよかったぁっ……」
部屋中に冷凍庫のドアを閉める音が響き渡る。
「おやすみなさい、僕のプリンセス。変わることのない、美しい人生を。」
それではまた〜
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※明日、活動報告に裏事情などを投稿する予定です!見たい方は是非っ!




