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建国の聖女の再来と言われてます が全然そんなんじゃありませんごめんなさい!

作者: 六
掲載日:2026/09/22

異世界転生を書いてみたかったので。


「おお……この方が建国の聖女ハルカ様の再来と言われる令嬢か」

「見て、あの気品、所作……素晴らしいわ……」

「御年十八歳だそうよ」

「まるで妖精のようなご容姿だ!」


 周囲から浴びせられるまくる実力以上の称賛の声に私は肩を窄めた。

 だって私、貴族令嬢のマナー以上の所作も気品も持ってない。

 十八歳にしては、顔も体型も子どもっぽいだけで、別に妖精と讃えられるほど、可愛いわけじゃない。

 ……あと私全くちっとも『聖女』らしいことなんてしてませんが!

 普通に料理を作っただけなんですが!


 それもこれもコイツのせいだ!

 私は私を平然とした顔で、エスコートする男を睨んだ。

 後へと整髪料で撫でつけられな紺色の髪に、深い緑の瞳。私より頭一つ半高い身長、鍛えられた身体にシュッとした雰囲気を持つ、我がキブス・ラウトゥス王国第三王子、マイル・カビヨ・ウ・マイモ・ノスキー。

 なんか知らないうちに、だだの伯爵令嬢に過ぎなかった私を、建国の聖女ハルカ様の再来だと担ぎ上げ、更に自分の婚約者に仕立て上げた男。


 

  私はハリエット・ソラヌム・ヤポンスキー。

 ヤポンスキー伯爵家の三女として生を受けた。

 まあ上に優秀な兄姉と貴族として必要な人材が、一揃いいたからか、結構放ったらかしではあったけど、きちんと教育を受けさせて貰えたと思う。

 私の分の予算もちゃんとあったし。

 両親もお兄様たちを可愛がるついでにだけど、私のこともそれなりには、可愛がってくれたし。

 あ、でも出される食事が、パンや麺以外ビミョーな味付けで、もしかして地味な虐待されてる?とはちょっと思ってた。

 仲良くなったキッチンメイド伝いに、料理長から分けてもらった調味料で、子ども部屋のミニキッチンで乳母に味付けし直して貰うのが、毎食のルーティン。こっちのが美味しい!って乳母が喜んでたわ。

 けど十歳になって家族と食卓を囲むことを許されてから、家族みんながあまり美味しくない料理を、食べてるんだと知った。

 こっそりお姉様に『これ美味しい?』って聞いたら『ヤポンスキー家の料理はこうよ』って遠い目で言われたの。そのあと

『お互い小麦系以外も、美味しい料理が食べれる家に嫁ぎましょうね!ね!』

って、えらく真剣に誓わされた。……お姉様よっぽどウチの料理嫌いだったのね。



 それから四年私は特に問題なく育ちました。

 だけどこの国の貴族が皆通う、王立学園に十四歳で入学してから問題が発生した。

 私の産まれたキブス・ラウトゥス王国はその名の通り、美食の国だと世界中に知られている。

 (……我が家のごはんは大して美味しくないのに。)

 その中でも初代王が、好んで食べていた牛肉料理を至上としている。 

 だからか牛肉産業に携わる貴族が、一番偉くてその下に豚肉鶏肉羊肉と続く。

 魚や果物なんかはその下で、野菜は皿の隅に彩りとして添えれるだけ(あくまで添えられるだけで、食べられることは殆どない。勿体無い!)のサンプル扱い。

 野菜美味しいのに!!寒い日に食べるゴロゴロ野菜のポトフとかシチューとか、野菜たっぷり具沢山の豚汁最高よね!?

 肉じゃがだってじゃがいもメインでしょ!?

 ハンバーグだって玉ねぎ入れないと、肉肉しすぎて胸焼けするじゃない!!

 野菜大事!野菜ないと食卓が茶色!

 はい、すみません。興奮しました。ちょっと落ち着きますね。

 (落ち着くため深呼吸三回)

 では、私の名前もう一回いいますね。

 ハリエット・ソラヌム・ヤポンスキー。

 ええ、ラテン語で『なす』ですね、『なす』。

 ミドルネームの『ソラヌム』は、産まれた時につけられたものじゃないのだけれど。


 我がヤポンスキー伯爵家は、キブス・ラウトゥス王国の小麦産業を、一手に引き受けている。

 肉や魚より序列は低いと言っても、主食を生産しているからか、貴族社会ではそれなりの地位につけてる、んだけど。

 この国の貴族の子女は、十四歳の学園入学式で時々創造神様から、食材にかんする祝福を授かることがままある。

 その為か新入生は一名ずつ、王様にお目通りすることになっている。

 王族の目があるところで、祝福されれば身内に隠蔽されたり、不相応だと恨まれたりしないから、らしい。


 そして、とーっても名誉なことに、私にも祝福が授かりました。

 ええ、『なす』の祝福が。



 なにそれ?って思うでしょ?私も思ったわ。

『なすの祝福ってなんだよ!?』って。

 そしてタイミングが悪いことに、私のすぐ後ろに並んでたリーリア・スミルノフ男爵令嬢も、祝福を授かった(祝福を授かった者は、祝福食材をミドルネームにしなくちゃならないの。それで私はハリエット・ソラヌム・ヤポンスキーになりました。……ヤポンスキーもなんかアレね)。

 しかもそれが『ヴィツリーナ』、子牛の肉の祝福だった。


 はい、もうわかりますね?

 肉料理が至上とされる国で、同日に『子牛の肉』と『なす』の祝福を授かった同年齢の貴族令嬢。

 どっちに称賛が集まるかなんて、わかりきってることだったけど。

 まーあ面白いくらいリーリア嬢ばかりが、褒められ持ち上げられた。

 建国史上『肉』の祝福を授かった者は、片手の指で数えられる程度しかいないのも、彼女がちやほやされる一因だった。

 だからかしら。

 なんだか知らないけど、私すご〜くバカにされたのよね。

 リーリアからも、その取り巻きからも。

 確かに私は創造神様から、この国では底辺食物と言われてる野菜の祝福を授かったけど、祝福を授かること自体はとても名誉あることなのに。

 それに『なす』の祝福を授かったとは言え、私が伯爵家の娘であることは変わらない。

 依然貴族の序列としては、男爵令嬢のリーリアより私が上なのに、彼女も彼女の取り巻きたちも、それを理解することなく、散々私を虚仮にしてくれた。

 授業中私がなにか発言するとくすくす笑ったり、移動中に足を掛けて転ばそうとしたり、私物を隠したり汚したり。

 幼稚な嫌がらせではあるけど、回数が重なればそれなりに鬱々した気分にもなる。

 学園の図書室で司書を務める『りんご』の祝福を授かったイリス・ポ厶・ペトラルカ女史と、良く慰めあったものよ。

 なんで!ペトラルカ女史の祝福はフランス語なのよ!?統一しろ!

 

 あ、もうなんとな〜く、気付いたひといるでしょうけど、私実は前世の記憶があります。

 日本と言う国の職業婦人だった記憶があります。

 裕福な平民の娘として産まれ、風邪によく似た病気で亡くなった記憶を持ってる。

 とは言っても、私の前世?は特になにかを成し遂げられるような知識を、持ってるわけではなかった。

 蛇口を捻れば水が出ることは知ってるけど、なんでそうなるかはわからない。

 蒸気と言うもので機関車?が動いてたのは知ってるけど、動かしかたとかサッパリわかんない。

 飛行機ってものは知ってるけどなんで浮いてるかなんて興味ない。

 前世の知識で無双!なんてことが出来るようなそんな都合いい存在ではなかったです、がっかり。

 でもまあ料理の知識と、栄養学の知識はちょっとだけあった。

 肉ばっかじゃなく野菜も食べろ、よく噛んで食えレベルのだけどね。

 あと前世の私は肉もそれなりに好きだったみたいだけど、今世の私は肉がちょっと苦手。

 キブス・ラウトゥスで一番とされている肉料理は、赤身肉のレアステーキなのだけど、初代王の好物は手を加えてはならんって、余計な法律があるせいか、筋切りもしてない噛み切り難いシロモノで、柔らかくする為に叩いたり、摩り下ろした玉ねぎに浸けたりもしない。

 あとなんか四十年くらい前から、原点懐古主義とかで、魔物と掛け合わせた肉牛のステーキが定番になって、それが普通の牛肉よりも、固くて噛み切り辛い上にめっちゃ獣臭い。

 前世で味わってた嫌な肉臭さがなくて、程良いサシが入った柔らかくて肉汁溢れるステーキなんてものは、この国にはない(断言)。


 だから私は、肉を食べるなら豚か鶏派。こっちのが柔らかくて美味しいし。

 玉ねぎと炒めたポークジンジャーや(醤油あるのよ、この国)、唐揚げには勿論蒸したじゃがいもを、自家製マヨネーズで和えた簡易ポテサラを添える。

 あ、マヨネーズは各ご家庭で作るものなの、食中毒防止の為に。賢明な判断よね。

 

 主食と肉と魚と野菜と果物(は高いからあんまり買えなかったけど)をバランスよく食べる!と、前世で洗脳されてたせいか、今世の私もそうやって食事を摂ってるのだけど、それもリーリア一派に誂いのネタにされてた。

『流石なす令嬢!』『野菜をあんなに食うから野菜の祝福を得られたんだ』『あなたも野菜をたべたら野菜の祝福が授かるかもしれなくてよ?』『いくら祝福を授かれるとは言っても野菜はなあ』

 語尾に(嘲笑)(失笑)って付けてますよね?と、確認してまわりたいくらいバカにされたわ。

 

 でもね。

 学園生の全員が全員リーリア派だったわけじゃない。

 前述のペトラルカ女史は勿論、野菜を生産する家門の方は私の味方が多かった。

 それに牛肉至上主義とは言え、他国の人間にまで嗜好を押し付けられる筈がないもの。

 国賓として我が国を訪れる方の中には、野菜が好きな方も、肉が苦手な方もいる。

 それにメインにはならなくても、ソースやスープには野菜が使われてるでしょ?

 いくらシンプルなステーキが最高!って言ったって、肉に塩だけ振って筋切りもしてない焼いた肉を、饗応の食事には出すことはできないし。

 勿論この国にも口には出さないけど、野菜や魚が好きな高位貴族だって少なくない。

 キャベツが大好きな伯爵令息もいるし、茹でたカリフラワーにマヨネーズをつけて食べるのに、ハマってる侯爵令嬢もいる。

 勿論その二人とは仲良くなったわよ、きゅうりとじゃがいもとキャベツとカリフラワーのチョップドサラダを作ってあげたら、一人一個のサラダボウル抱えて食べてくれるくらい仲良くね。

 でもその二人と仲良くなったことが、私が聖女ハルカの再来だと、担がれた一因でもある……。


 その元凶が、こいつ。

 私の隣で薄く微笑みを浮かべてるマイル王子。

 男性としては珍しく創造神様から祝福を得た方。

 でもその祝福は『カビヨ』─たら─。

 初代王の子孫のくせに、魚の祝福を得てしまったと、王族であるにも拘らずハズレ扱いされてた。

 学園では、もさもさの髪(絶対天パ)に、黒縁眼鏡のThe冴えない男子!の代表だった。

 いくら第三王子でも、アレはないわよね〜なんてくすくすこそこそ笑われてた。

 肉を嫌い魚料理ばかり食べたせいで、あんな風になったんだと、兄王子達からも馬鹿にされて。

 魚王子と結婚するのは、罰ゲームだとも言われて。

 だからかなあ。

 私、仲良くなった伯爵令息と侯爵令嬢との、ランチに急遽参加してきたマイル様に(この三人は元々幼馴染)、魚と野菜の麺料理って美味しいんですよ、少しお食べになりませんか?って、タウンハウスから届いた出来立てアツアツランチを半分分けてあげた(伯爵令息と侯爵令嬢は自分の分をマイル様に分ける気なく、お上品にがっついてたから)の。

 ナス入りペスカトーレもどきを。 


 そしたらなぜか。


 マイル様は、ペスカトーレもどきと私を何度も何度も見比べて、フォークを手に取りペスカトーレもどきを一口食んで『うっま!!』と叫んだ。

 私の『ああっ!私のなすが!!』と言う嘆きをこめた静止も聞かず、一気にペスカトーレもどきを食べたマイル様は、口元のソースも拭かないうちに私に言った。

『美味かった』

『それはどうも、ウチの料理人が作ったものは、私が作るのとは、ちょっと違うんですけどね』

『……は?今なんと』

『ウチの料理人が』

『そのあとだ……。まさか君はこの料理を自分の手作りだしたのか!?』

『ええ、まあ』

『ガイ!ジョアン!彼女を借りるぞ!』

 は?と友人たちが聞き返す間もなく、私は王城に連れて行かれて、王太子宮で王太子様と王太子妃様に謁見し、あれよあれよと言う間に料理人を排した厨房で、なす入りペスカトーレもどきを作らされた。

 いきなり言われても材料ないから作れません!て逃げようとしたけど、さすが王家。

 なすもトマトもイカもアサリも鱈もちゃんとあったから逃げられなくて、私を凝視するマイル様をウザいな……と思いつつも仕方ないクソ度胸だ!と作ったペスカトーレもどきを、お二人の前にお出ししたら。

 お二人もマイル様と同じように、私とペスカトーレもどきを、何度も何度も見比べて、フォークを手に取り一口食べると

『聖女様の再来だ!』『あなた!それよりこれ粉チーズかけましょう!』『僕は唐辛子を足したい!』『なにそれ天才!?』と歓喜の声を上げた。

 え、なに?なに?とマイル様を振り替えれば、彼はもさもさな前髪をかきあげ、出来立てペスカトーレもどきの湯気で曇った眼鏡を外しながら

『父上、母上、少し落ち着いて』

と呆れ声で言った。

 けど私こそが呆れた。

 だってもさもさの前髪(前世で例えるなら昭和のオバチャンパーマにも似てる天パ)と、黒縁眼鏡の下には整った顔が隠れていたんだもの。

 ハズレちゃうやん!大あたりやろがい!と突っ込まなかった私を、誰か褒めて欲しい。

 王太子ご夫婦が恥ずかしそうに、居住まいを正すと、マイル様はちょっと魚介臭い私の手を取ってお二人に言ったわ。

『創造神様より授かった祝福を、このように有効活用出来るなど私は思いもしなかった』

『私もだわ……』

 王太子様の言葉に、私は一瞬『ん?』と首を傾げた。

 だって今の発言は王太子妃様『も』、何かしらの祝福を授かってると言ってるみたいで。

 私の顔を見た王太子様は、困ったように笑うと

『ええ私は、クルリア・プッリー・ペクトゥス・ラ・ウ・マイモ・ノスキーと言うの』

 プッリー・ペクトゥス、ラテン語で鶏むね肉。

 鶏むね肉だと!?

『と』

『と?』

『鶏むね肉って言えば、なすとあわせて照り煮にすると美味しいですよね!

 私あれ甘辛くて大好きなんです!ちょっと濃いめに味付けすれば、ごはんが進む進む!久しぶりに食べたく……あ』

 前世での好物を思い出して興奮した私に、三人の視線が突き刺さった。

『す、すみません!御前ではしたなく大声を!』

 五体投地くらいの勢いで私は頭を下げた。

『これはまるで……古文書に記載されているハルカ様の御業』

 信じられないものを聞いたと言わんばかりに、震えながら立ち上がった王太子様は、マイル様と王太子妃様と頷きあった。

『貴方、わたくし夢を見ているようだわ』

『お二人共、これは夢ではないと再確認しましょう。ヤポンスキー令嬢』

『はい』

『君が今言ったトリムネニクナスノテリーニを』

 マイル様の喉がごくりと動いた。

 王太子ご夫婦の喉も。

『材料あれば作りますよ?』

 ははーん、食べたいんだ〜?と思った私は、にへらと笑って腕まくりした。



「どうした?ハリエット」

「どうした?じゃないですよ。なんですか料理作ったくらいで聖女の再来って」

「聖女ハルカは様々な料理を発案し作った傑物だ。  

君も祝福を授かった食材を使い、様々な料理を発案し作っている」 

 発案、と言うより前世で食べたことあるものを、作っただけなんだけど。


 この国では貴族は料理しない。

 基本的に料理を生業にする一族がいるので彼等を雇い、何か新しい料理が食べたい時は、『これこれこういうものが食べたい』と伝えて作ってもらう。

 あとから知ったのだけど、祝福を授かった私も本来であれば、なすの料理を料理人に新しく作らせて広めることや、なすの品種改良や増産を求められてた。

 だけど私は、自分が祝福を授かった食材を使い、自ずから料理を作ってみせた。

 それは建国の聖女ハルカ様が、披露なさった御業そのもの。

 けれどハルカ様が料理を作っていたことは、資格のある王族にしか読めない古文書にだけ記されたトップシークレット。

 にも拘らず、一介の伯爵令嬢でしかない私がハルカ様のように、料理を考案しそれを手ずから作ってしまった。

 そのせいで、あれよあれよと言う間に、私はマイル様(と王太子様)の庇護下に置かれ、今聖女の再来だと国中で注目されてしまった。



「料理なんて誰でも作れるでしょ……」

「作れない。君は間違いなく聖女ハルカの再来と言うに相応しい存在だ」

「…………はあ」

「君の婚約者となれて私は幸せだ」

 マイル様はそう言って笑う。

 セリフだけ聞けば、私愛されてる!みたいなかんじだけど。

 全くそうじゃない。

 この人は兄王子たちを蹴落とし、自分が王位に就く為に、聖女の再来だと私を担ぎ上げたんだから。


「どうした?我が愛しの婚約者どの?」

 私の視線に気付いたマイル王子は、優しげに私の側に一歩寄る。


「あら御覧になって」

「お似合いですわね」

「学園で『野菜令嬢』と蔑まれていた聖女様を救ったのが、マイル王子らしいな」

「悩むマイル様にハリエット嬢が、癒しを与えたとわたしは聞きましたぞ」


 ……救われた覚えもないし、癒しを与えた覚えもないんだけどなあ!

 

「見ろよ、あいつら」

 私の耳元に唇を寄せマイル様は、小気味良さげに囁いた。

 マイル様の視線の先にいたのは、リーリア一派と兄王子一派。

 すっっっごく悔しそうに私達を睨みつけてる。

「結構気分いいだろ?」

「それはそう」

 リーリアにとって自分が『野菜令嬢』と散々バカにして来た私が聖女の再来で、兄王子達にとってずっと下に見て蔑んでいた『たら』王子が、埋もれそうになっていた聖女を見いだした慧眼の王子だと、自分達よりも称賛を集めているなんて、許し難いことみたい。

 悔しさに震えるリーリアと、歯噛みする兄王子達

を、見下ろすのはちょっと、だいぶ、気分いい。 

「このまま君が聖女ハルカの再来だと信じこませれることが出来れば、牛肉以外の祝福を授かった者が、バカにされることを失くすことが出来る」

 マイル様は続けてボソっと囁いた。


 うん。

 私もそうなればいいと思ってる。

 美食を謳う国には美味しい食材は山程ある。

 食材の祝福を授かった者も結構いる。

 祝福は創造神様が、この国の貴族の子女に授けてくれる素晴らしい贈り物なはずなのに、『牛肉』関連の祝福以外はバカにされ、特に野菜関連の祝福を授かった者は蔑まれてる。

 おかしいわよね、そんなの。

 創造神様が牛肉が最高で、野菜は最低だと発言したわけじゃないのに。

 初代王は牛肉のステーキが好物ってだけで、牛肉のステーキ以外はゴミ!なんて発言は残されてない。

 ─この国が、こんな風潮になった原因は。


 玉座に座る白髪の、イアン・プラエキースム・ボウィッル厶・ウ・マイモ・ノスキー。

 建国以来最も長く玉座に就く初代王の再来だと謳われる王。

 父王が寵愛する平民との間に誕生した、本来なら王位を継ぐことなかった奇跡の王。

 『牛肉のステーキ』の祝福を授かった神の愛し子。


 そして、牛肉以外の祝福をバカにする風潮を始めたその人。

 王は興味なさそうな目で、私やマイル王子に対する熱狂を眺めてる。

 何を考えてるのかいまいち分からなくて、ちょっと怖い。



「ハリエット」

「へ?」

「君は私の共犯者だ」

「はあ」

「だから君のことは、私や父母も護ると誓う」

「……それはどういう」

「…………」

 無言でにっこり笑うマイル王子。

 その背後に並ぶ王太子ご夫婦も、同じように無言でにっこり笑ってる。

 え、まって。

 もしかして、私危ない橋渡って……る?

 イヤな汗が背中を伝ってきて焦る私に、マイル王子は囁いた。

「グリシン・マックス(大豆)の祝福を授かった子爵がいるのは、知ってるかな」

「っ!!その方は醤油の開発者の!?」

「彼が職人に作らせた新作のだし醤油と言うものが、手に入ったんだ」

「だ、だし醤油!」

 ごくりと沸いてきた唾を飲み込む私。

 だってだし醤油って最高に美味しい神調味料。

 お刺身とかお寿司に初めてかけた時の感動は、生まれ変わった今でも覚えてる。

 素材の味を何倍にも引き上げてくれるそれは、だしに使う材料によって味わいが変わる。

 私が特に好きだったのは牡蠣醤油。

 牡蠣醤油で卵かけごはん作ると、ほんっとにもう美味しくて、炊きたてご飯なんかあったりしたら三杯は食べてた。


 そのだし醤油が、手に入った……だと?


「ハリエット君は聖女ハルカの」

「はい!私は聖女ハルカ様の再来です!美味しい料理いっぱい考えて作りますよ!私の婚約者様!」


 あ。


 言わなくて良いことを言った私の未来はどっちだ(やけくそ)!?


  


恋愛に発展しないんじゃないか、この2人。


トマト風味のペスカトーレも美味しいですが

アクアパッツァにパスタ入れても美味いですよ!

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― 新着の感想 ―
美食の国で最も大事な料理の「牛肉のステーキ」が不味くて外国の賓客には出せないって矛盾しているよね 牛肉派の人間は牛肉のステーキがただ焼いただけで調理しないと不味いとの自覚はあったのかな? 自覚していな…
飯テロ。長編あったら意地悪令嬢やステーキ王も掘り下げられそう。
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