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狐の嫁入り

掲載日:2026/03/11

2017年6月20日 午後21時半

私はたった今ジムで筋トレを終えてお風呂に入った。

そして出てきたら20年後になっていた。


橘 花菜 26歳

私は25歳を過ぎた辺りから健康を気にするようになりジムへ通いだした。

仕事終わりにジムへ行き、ジムでお風呂に入り

帰宅する。

これが私のルーティンだった。


この日、お風呂から上がりドアを開けたら

「KEEP OUT」とかかれたよく警察映画なのでよく見る規制線が貼られていた。

私はイタズラだと思いそれを払いのけ

自分のロッカーへ向かった。

ただ何かがおかしい。

店内BGMも、照明も、止まっているのだ。


私は、スマホだけは風呂の時も脱衣所まで持ち込むタイプの人間だったので

ズボンのポケットに手を突っ込みスマホを出す。

風呂に入る前は確か39%位は充電はあったはずだ。

それなのに充電が切れている、私は使ってないのになんでだろうと不思議に思った。

でも電気はさっき私が使っていた風呂で付いていたからきっとと思い、ロッカーから充電器を取り出し風呂場へとまた向かった。


だけど、電気は消えており風呂場はカビだらけ

嫌な臭いがしていた。

そして私は何となく察した。

この場所が劣化している、ということは自分ももしかして、と。

恐る恐る鏡を見た、だが鏡の中の自分はいつも見ている自分と何ら変わりなかった。

26歳の橘 花菜がそこにはいた。


少し安心した私は、解決の糸口を探した。

電気が付いてないということはジムのドアはオートロックなので開かないかもと思った。

が、中からは非常解錠が付いていた為普通に開いた。


私は外に出てまたびっくりした。

いつも見ていた街並みが全部違うのだ。

そしてさっきまで夜だったのに今は夕方位の空の感じだ。

私は恐らくタイムスリップしている。

今は何年の何月何日なのか、自分の家族は、友人は無事なのか。

状況が飲み込めた瞬間一気に不安が込み上げてくる。

私は走った、自分の自宅へ。

母や父が待つ家へ。


家へ走る間の道のり、見覚えのある建物もあるがほぼ変わっている。


家へ着くとそこには私の見慣れた家があった。

カバンから鍵を取り出し勢いよく家へ入る

「お父さん!お母さん!」


部屋の奥から驚いた様な声が聞こえる。

私は玄関から突き当たりのリビングに向かった。

そこには目を見開いて立ち尽くしている母がいた。

少しシワが増え、身長が小さくなった私の大切な母がいた。


「花菜、花菜なの!?」

母は私の手を勢いよく掴みそのまま抱きしめた。


安堵からなのか涙が込み上げ子供の様に泣いた。

母は「よかった、花菜本当によかった」と泣きながら私の背中をさすり続けた。


その後、私は母とこれまでの話をお互いした。


今は2027年8月3日 午後18時26分

あれから20年程の月日が経っていた。


私の体感時間としては風呂に入った約20分間の出来事だった。

母から聞いた話によると、私が帰って来ない事を心配し母が警察へ連絡したのだという。

その後、私がどこに行ったかを聞かれ

私と母の最後のLINEに「いつものジムいって帰るね」と残っており

これを手がかりに警察がジムへ向かい、ジムの従業員の方と監視カメラを調べたそうだ。


だが、風呂に入った所までは確認できたが

出てきた所は確認出来なかったらしい。

20分後位には鍵は空いており別の人物が入って行く姿が見られたそうだ。

その人は普通に20分後位にはその風呂から出てきたらしい。


不思議でたまらなかった。

私はどこへ消えたのか。

ただ私は普通に風呂に入り、20分程で出てきただけなのに未来へ行っていた。


その後警察に行き、また自分に合った出来事を伝えた。

当然信じられるわけもない話だったが

担当の警察官が良い人で、「僕個人としては信じるよ」と言ってくれた。


とりあえず失踪届けは取り下げられたが

まぁここからが凄かった。

こんなおかしな事が起こりニュースになり

マスコミが家に押しかけてくる始末。

色んなテレビ局から取材したいだのなんだの

なんかの週刊誌の見出しなんて

「美魔女!失踪と虚偽か!」

なんて書かれてた。年取ってないからって美魔女ですか(笑)と思った。


もちろん20年も私は何処かに行っていた

という訳で仕事は無くなり、私はこれからどうするかと悩んだ。

だって、見た目は26歳かもしれないというか中身も別に26歳ではある。

けれど他人からしたらタイムスリップした46歳のおばさん。


そうして1年の月日が流れた。

私は近所のスーパーで正社員として働ける事になった。

そのスーパーによく来る私と同い年?まぁ同い年。27歳の浅見さん。

高身長イケメンだ。

あの事件から3年後そんな浅見さんに私は口説かれて結婚した。


主人は私の話を否定せず受け入れてくれた

ただ、お付き合いしている時から少し

違和感だったのは

私の祖母を知っているような発言があった事だった。

一緒に新居に引っ越す時に出てきたアルバムを二人で見ていた時の事。

「そうだ!かなちゃんのおばあちゃんってさ髪の毛クルクルしてたよね!」


ん?私アルバム見せたことなかったよな…

と思いつつ自分のおばあちゃんとかと勘違いしてるのか?と思っていた。

けど小さい声であまりしっかりは聞き取れなかったが

「カミ…ハニ…マッテトレナカッタ…」

まぁ特に聞き返したりはしなかった。


ある時、主人の部屋を掃除していた時の事だ。

主人は漫画が好きで本棚いっぱいに漫画が置いてあるのだが、巻数がズレていたので直そうとその漫画を手に取った。

すると奥に日記が置いてあり見てはいけないと思いつつも好奇心が勝ってしまい手に取ってしまった。


最初の1ページ目には子供の字?だろうか

拙い文字が書かれていた。

(ぼくのすきなひとはかなちゃんです!でもかなちゃんはニンゲンのひととしかけつこんしたくないんだて!)

ページをめくるとゾッとした

(かなしいかなしいかなしいかなしいかなしいかなしいかなしいかなしいかなしいぼくだけのかなちゃんなのにかなしいかなしいかなしいかなしい)

この文面が数10ページ以上は続いていた。

そして空白ページの次のページ

(じゃあかなちゃんにはぼくがおとなになるまでまっていてもらわなきゃ誰も触れられない所で)

私は思わず「ひぃっ」と声が出てしまった。


私と主人は既に出会っていたという事か…

私は頭の中を必死にフル回転させ記憶を辿った。

その時背後から


「かーなちゃん何してるの?」


主人だ主人が帰ってきた。

怖くて私は後ろを振り向けない。

身体が固まって動けない。


「かなちゃん、僕の事覚えてなかったよね?僕は20年間片時もかなちゃんの事忘れたことなかったのに」


そうだ、全て思い出した。


小学校1年生の夏休みに祖母の家に遊びに行った時の事だった。

「花菜ちゃん裏山には入っては行けないよ

特に裏山にある蔵には絶対に入っては行けないよおばあちゃんとの約束だからね。

こわーいモノに嫁入りさせられちゃうからね。」

祖母は優しい人だったので優しい声でそういった。

と言われたのにも関わらず私は裏山に入った。

何故入ったかというと、祖母の誕生日が近かったので花を摘みたかったのだ。

ところが突然大雨が降り出し急いで山を下ろうとした所で蔵を見つけてしまった。

雨に濡れる方が嫌だった私は迷わず蔵へ飛び込んだ。


蔵の中には色んな物が置いてあった、壺やら絵やら壊れた家具なんかも置いてあった

ちょうどよく椅子があったので私はそれに座った、雨が止むまで待っていようと。

すると後ろから

「ねぇねぇ君はドコノコなの?」

私はビクッとしたが自分と同じぐらいの年齢の声だったので振り向いた。

すると、狐の様な顔に人間の手足が付いた

人?のようなものが経っていた。

私は怖くなって後ずさりした

「ねぇねぇねぇねぇねぇキミはドコノコなのおしえておしえておしえておしえて」

急に壊れた機械のように同じ言葉を発し出した。

私は、逃げたら殺されると思って言ってしまったんだ。

「花菜!!!橘 花菜!!」


そのよく分からないモノは「かなちゃん?かなちゃん!ボクかなちゃん好き僕とケッコンしようよ」


私は咄嗟に

「嫌!人間としか結婚したくない!!」

と言い放った。


するとそのモノは

「エエッエエエエエエエエエエ」

低い声で叫び出した。


「ジャアジャアジャアボクがさニンゲンになったらケッコンしてくれる??」


私は今この場から逃げ出したかったすぐに

だから

「うん!結婚する!人間になったらね!じゃあ私いくねさよなら!」


私は駆け出した蔵の扉を思い切り開き

裏山を下った。すると裏山の入口の方に祖母と父と母が私を探してるのが見えた。

私は今あった出来事を祖母達に話した。

そこから祖母達の空気は一変した。


「すぐに花菜を連れて東京に帰りんしゃい!

良いか、三日三晩はこの子を家から出したらダメだよ結衣さん、太一この子を絶対に守るんだ私は村の人達に手伝ってもらってここから花菜を守るから絶対に」


祖母に会ったのはそれが最後だった。

葬式には父だけが出席し、私は合わせて貰えなかった。


「ニンゲンになったらケッコンしてくれる?」


私は約束してしまっていた。

でも、この私の目の前にいる旦那はあのモノって事なのか?

頭を悩ませてる余裕は無い。

結局あのモノは私を迎えに来たという事だ

という事はジムの風呂ぇ神隠しの様に消えさせたのもこいつの仕業という訳だ。

全てこのわけのわからない現象の辻褄が付いた。


「ごめんね忘れてて」


私は旦那…いやあのモノに向かって振り返った。


旦那の姿じゃなく、私が子供の頃に見た狐の顔に人間の手足の容姿になっていた。

「ボク人間になれたんだ、喋り方も、文字も、でも、でも、カナちゃんの事大好きなんだけどでも、でも、」


何だか少し可愛く思えてきた。

私と結婚したいから20年間閉じ込めて

自分が人間になれたタイミングで結界を切ったという事だろう。


「デモヤッパリニンゲンタベナイトお腹空いたナァ」


口がガバッと開いて私の目の間に歯が迫った所で私の意識は切れた。


2017年6月20日 午後21時半

私はたった今ジムで筋トレを終えてお風呂に入った。

そして出てきたら20年後になっていた。





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