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1st-Epilogue Part Aura『初めての――』


 目を醒ますと、辺りが騒めいている。

 自分が床に倒れていることに気が付いて、ふと周りを見渡した。

 大丈夫かとか、迷惑だなとか、いろんな声が聞こえてくる。明人はとりあえず立ち上がろうとして、何かに触れた。



=============


 Role:短剣使い


≪スライス≫

≪投擲≫

≪ナイフ・ダンス≫

≪転回避≫



============



 頭に情報をむりやり押し込まれて、それでようやく頭がはっきりと覚醒した。

 今触れている石のような物体――ロールストーン。

 明人は近寄ってくる職員にぺこと頭を下げながら、そそくさと『中央』から出る。

 外の眩しい日差し、肌寒い陽気。

 間違いない、この場所は。



「転移、した……?」



 病院のベッドで疲れ切って寝た後に、転移したのだろう。

 何が転移の条件を満たしたのかは不明だが、どの道こちらの世界に来る予定ではあったので明人としては好都合だった。



 ――最悪、もう全人類転生世界には行けないかもしれないと考えていたけど



 明人は目を閉じて、少しだけ壁にもたれ掛かる。いまだこちらの世界で徹夜したことによる疲れはとれていないのだろう。少しだけ休んで、明人は再度北側へ――『転生種居住区域』へと向かった。

 とあることを、確認するために。



***



 地下への階段を下る。

 いっときは住まい、ある程度は慣れた道だ。

 明人は一歩ずつ歩き、そして小さな地下通路へ出た。

 しばらく歩いて右の部屋が、彼女の部屋だ。


「……」


 明人はコンとノックをして――十数秒待って、反応がないことを確かめる。

 そのまま扉に手をかけると、鍵はかかっておらず、すんなりと開いた。

 そして、部屋の中に入った瞬間、明人は一歩後ずさった。



「そう、なるよな」



 そこにあるはずの、必要最低限のものしか置いていないながら、生活感のある質素な部屋。

 それが物置へと変化していた。前に見たクー婆の遺品の残った倉庫のように。

 これは明人が、そしてフィーナが選んだ未来にある、犠牲の片側。

 すなわち――未来の改変だ。

 『木幡陽波』の過去を大きく改変した。当然、フィーナは別の歴史をたどることになる。

 明人の知る彼女は、消失したのだ。


「ッ――」


 壁に凭れて、そのまま座り込む。

 ひんやりした地下の石壁に、頭を預ける。

 正直、明人は頭が沸騰しそうだった。そして、予想以上に悲しかったのだ。

 彼女とは、ループした日数を合わせても短い期間しか関わっていない。だというのに喪失感はそんな生ぬるいものではなかった。

 それこそ。

 流れる涙が止まらないぐらいには、どうしようもなかった。


「分かってたことだし、うじうじし過ぎだろ、みっともねぇ」


 ガレオに背中を押してもらって、フィーナの決断で定まり、見知らぬ『転生種』に助けてもらって、親友達の助けを得て、なんとか事件の解決まで辿り着いた。

 そしてこれこそが、フィーナ自身も納得した結末だ。

 老婆の部屋で見た、過去のフィーナが選んだ結末。



「自分が消えるとしても、か」



 それに納得できるほどの、未来にはできたのだろうか。

 それに納得できるほどの、ハッピーエンドだったのだろうか。

 それは分からない。

 ただ、それでも明人が選んだ時間は進んでいく。明人は一歩踏み出さねばならないのだ。


「――行こう。働き口、探さないとだな」


 腹がぐぅと鳴った。

 こちらの世界の身体は一日飯を食べていない。酒やスープは飲んだが、吐き出してしまっている。しかも、その後であんな強引な役割(ロール)強化を行ったのだ。どこかで飯を食わないと、最悪飢餓で死ぬ可能性だってある。


「お腹空いた、空き過ぎた……」


 明人は前を向いて歩き出した。

 まずは、食い扶持を――


「……あれ、くろいひとだ! やっほー!」


 奥の階段から降りてくる人影。

 タタタと駆け寄ってきたのは天真爛漫な少女、シルィアだった。

 明人は抱き着いてくる彼女を受け止めながら、驚愕のまなざしでその後ろにいる人物を見つめた。






 淡い金髪をポニーテールにした少女。銀色の瞳と、重そうな鉛色の首輪が特徴的で、とても整った顔立ちの少女。見間違えるはずもない、その少女の名は――






***





 ──今あんたに見せた預言が、有り得る未来だ。

 今のお前を消さない方法は存在する

 だが、アンタが払う代償は……



 ――分かったわ

 エリ婆がそこまでしてくれるなら

 私も覚悟を決める

 見せてくれた未来が本当にくるのなら、私はきっと必要ね



 ――お前が払う代償はあまりに重い

 本当に、重いんだ

 それにどうあっても過去は変わる

 最後まで悩みな

 決める瞬間は、刻が来ればわかるさね



 ――わかったわ。ありがとう、エリ婆

 それでも、あの子と再会できるならきっと




***




 明人は彼女を見ながら、溢れる感情の奔流に言葉を発することができなかった。

 それは、彼女の方も同様だったのだろうか。

 無言で永遠のような刹那の時間が過ぎ去っていく。

 そしてその時間は終わる。

 否、明人が終わらせた。


「初め、まして。俺の名前は黒野明人」

「えぇ。初めまして。私の名前は――――」






 繰り返し、そして立ち上がった少年と。

 慈しみ、そして決断した少女。






 二人はこうして、『初めての再会』を果たした。








1st Chapter ― Back to the Save for 『Fiona』

//Fin







第一章終幕

明日より毎日一話投稿

接続章を二話投稿の後、第二章を開始

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