表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪態を吐きながら異世界で  作者: 木虎海人
プロローグ
12/114

 四人組 ①


 一瞬身体がフワッと浮きあがるような感覚に陥ったが、すぐに足裏に感触が伝わって来た。

足? と思い視線をそちらに送ると靴とズボンが見える。

右足左足と意識して順番に持ち上げてみる。


 動くっ!

 今俺の目に見えているのは俺の足で間違いないようだ。どうやらフルチン転生は免れたらしい。

そして見えた靴もズボンも見覚えがある。どこかで見た事のある作業服だ。膝横にポケットの付いた六ポケットの作業ズボンに、編み上げの安全靴だった。

 身体を起こして上半身の着衣を確認してみると、こちらも見覚えがあった。

長袖ワイシャツタイプの作業服で、左肩には使い古されたボールペンが刺さっている。

 視線を落として腰元を見ればベルト通しに通っているのも見慣れたベルトで、長さを測るスケールと腰ポーチが付いている。なるほど。


「あー、これ死んだ時の服装か」


 仕事帰りの車の中で死んだというのが最後の記憶だったが、それが今裏付けらた形になった。

多分確定だろう。運転していた新人くんがちょっと恨めしくなった。


 つい大きくため息を一つ吐いてそこで気づいた。

目の前に何かいる。人型の塊が四つ。合計八つの瞳が俺を見ていた。

慌てて一歩バックステップをしてファイティングポーズを取った。

魔物と戦う事になるとは聞いていたが、行き成りかよ。



「待って、ちょっと待って」


 俺が慌てて動いた事で、相手も一気に動き出した。聞こえたのは女の声だ。


・・・・・・女の声?


 落ち着いてちゃんと見てみると、そこにいたのは人間だった。

男女が半々の四人組で、それぞれがロールプレイングゲームのキャラクターのコスプレみたいな恰好をして「落ち着け」なんて言っている。何となく敵意は無さそうだと思った。

 だがどうしよう?

思いっきりファイティングポーズ取っちゃったよ?

 なんて内心では困っている俺が、そんな態度は出さないように気をつけながら目の前の男女四人を順番に見ていると、その中の一人の女性と目が合う。っと驚いた顔をされた。


「えっ、モミジ!?」


 ・・・・・・その呼ばれ方、嫌いなんですけどー。

誰だ、こいつ?


「ちょっ、ちょっと。ねぇ、アンタ! モミジ? モミジでしょ?」


 何かおかしいな?

とは思いつつも呼ばれた名前にカチンと来る方が勝る。


「モミジ! ねぇモミジでしょ!?」

「いや、赤の紅に葉っぱの葉でもみじとも読めますけど。俺の名前はコウヨウですよ。あなたはどなたですか?」


 また言われた。しつこい。

〝秋野 紅葉〟 いまさらだがこれが俺の名前だ。多分最初に言ったけど。

けど設定決まるまで長かったからなぁ。


 確かに〝もみじ〟とも読める、だが俺の名前は〝こうよう〟と読むのだ。

変わってはいるが気に入っている、大事な名前だ。だが、たまに心無い奴にはもみじという呼び方をされる。俺はその呼ばれ方が好きじゃない。俺の名前は〝アキノ コウヨウ〟である。


 まだここで自己紹介はしていない。

 なのに何で知ってんだ?


 男性二人はどっちも俺と同じくらいの目線なのでおそらく身長は180センチ前後だろう。

女性の方は少し目線が下がる。どっちも170は無いだろう。

 顔に見覚えは・・・・・・・ねぇな。

ふむ、では何故俺を?

そう思ってもう一度女性を見てみる、と目が合った。

こちらを見て指をさしたまま固まってはいるが、口元が微笑んでいるようにも見える。

人を指さしてはいけません。早くおろせよ。


 ん? あれ? この顔?


 いや・・・・・・あるな。あったよ見覚え。

ありやがった。どうなってるんだこれ?


 この女性だけでなく、他の三人も見覚えがあった。

何でこいつらが此処に? 先にいた四人。

四人が四人ともまさかの中学の時の同級生でいやがる。



「ひょっとして・・・・・・高野、さんか? 中学の、3年の時一緒のクラスだった」

「そう、そうそう、そーだよ! 一緒のクラスだった! カノ! カノ!」


 声を掛けて来た女性は顔見知りの女性だった。

たしか字は〝高野 華音〟だったかな? よく覚えて無い。

で、〝タカノ カノ〟と読む。

 中学の同級生だ。


 四人ともおそらく俺と同じヒュームのままに見える。

なので、多分卒業アルバムに載ってた頃のような顔でそこにいるのだろう。

正直記憶はもう大分薄れているが。

何しろ死んだのが三十歳で、相手は中学の同級生だ。

だが、思い出してみればこんな顔だったなーみたいな記憶がある。

卒アルなんてもう見なくなって久しい。


 あー、うん。懐かしい。

と思うよりも面倒くさい、が先に来た。


 そう言えばそう言う存在だったわ、こいつ。コウヨウだって言ってるのにモミジモミジ呼んで来るから、内心嫌っていた存在だ。あれから何年だ? もう結構な年月か経つ。

大人になっても変わってないのかよコイツ。中学を卒業した年齢が死んだ時には折り返しの年齢になっていたのに。


「紅い葉っぱでモミジって書くが俺の名前はコウヨウだっての。それより俺は高野って呼んでるんだから、そっちも秋野って呼べよ」

「えー、モミジはモミジじゃん。あんたら男子だってあたしの事カノだからカノンとか、キャノンとか呼んでたじゃん。つーか秋野って苗字だし、絶対やだ。そっちがカノって呼びなよ」

「お前をキャノンとか呼んでたのは俺じゃねぇ」


 何と言うか、一瞬で昔のノリに戻ったな。昔の知り合い、恐るべし。

中学の時にも何度も同じことを言った覚えがある。それでも聞かないんだよ、こいつ。

 カノ だから カノンになって、キャノンになったらしい。

誰が付けたあだ名だか知らないが、そう呼んでたのはもっと馬鹿みたいなノリで生きているグループの連中だ。少なくとも俺じゃねぇ。

 同じクラスでそれなりに話す程度の距離感ではあったが、こいつには彼氏、っぽい存在がいた。

だからこちらからは距離を取っており積極的には話しかけなかった。名前で呼べと散々言われたが頑なに受け入れず、他人行儀に〝高野〟と、あえて意識して呼んでいたのだから。

それでもずっと〝モミジ〟と呼んで親しげに話しかけてくるコイツを内心、俺はあまり好きではなかった。


 という事でだ。他の3人も当然・・・・・・見覚えがあるだけでは済まない訳で。

彼女と、高野と親しい関係の人たちだろう。


 あー、やっぱりだ。全員当時からの仲良しグループ? みたいな関係の人らだ。

まだ付き合い続いてたんですか、とても長い付き合いなんですね。

全員同い年だから死んだ時三十歳だぞ? さすがに中学の同級生と普通はそこまで続かないだろうに。

個人単位なら多少は分かるけどさー。

四人で一緒に死ぬまでの付き合いかよ。



 はー、一気にめんどくさい度がマックスになった。

この4人いわゆる、ダブルカップルっていう存在だ。そのうち一人と俺が卒業前に揉めて、そこで縁が切れた関係なのに。

 それが何でこんな場所にいる?

まさかこれもお導きか? そんな導きは要らなかったんですけど? うへぇ、って感じだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 先行組が知り合いなのは偶然か、訳ありなのかきになるところ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ