表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【9】やりなおしの歌【完結】  作者: ホズミロザスケ
第一章 再び動き出す季節
5/30

第五話 再び動き出す季節5

 あれから一週間が経った。もうすぐゴールデンウィークがやってくる。学生がいつも以上に訪れ、売り上げも上がる期間だ。だけど、メーカーも問屋も軒並み休みになってしまうから、発注は今のうちにやっておかないといけない。レジは桂っちに任せ、事務所で発注作業をしていると、

「いらっしゃいませ~……って、ギャー!」

 桂っちの悲鳴。慌てて立ち上がる。どうしよ……。強盗? 虫? そういえば、こないだ下半身露出した不審者情報あったなぁ。女ばっかの職場だから狙われた? 次々と嫌な予感が頭の中をよぎる。とにかく、桂っちを助けないと。近くに立てかけてあった床掃除用のモップを手に、店内に駆け込む。

「桂っち、どした⁉」

 レジ内で固まっている桂っち。彼女の視線の先を辿るとダダが立っていた。バケットハットを被り、あの日と同じように首元のよれたTシャツに、デニムとスニーカー。登山用じゃね? っていうくらいデカいリュックを背負っている。ズレたメガネを押し上げて、こちらを無表情で見ている。

「は? ダダじゃん」

「えっ? 店長、知り合いなんですか」

「高校の同級生」

「ど、ど、ど、同級生⁉」

「ちょっと驚きすぎしょ」

「だって! タイスケさんですよね? イエフリの!」

「そーだよ~」

「ヒーッ……本物だぁー!」

 桂っちが絶叫する。他にお客さんがいなくてよかった。

「てか、桂っち知ってんだ?」

「はい! 知ってます! あの、総一郎(そういちろう)がっ、あ、彼氏なんですけど、イエフリが大好きで! ワタシもこないだの喜志芸祭ライブや、一週間前の心斎橋のライブも参加してて! 曲も聴いてて!」

「ありがとー」

 駿河っちが好きなバンドってダダんとこのバンドだったのか。意外と知名度のあるバンドなんだ。

「で、ダダ、何しに来たの? 店の住所とか言ってなかったと……」

 戸惑うアタシを放置して、ぐるりと店内を一周したかと思えば、アタシの前にやってきてこう言った。

「キムキム、オレ、ここで働きたい」

「はぁー⁉」

「えー!」

 アタシと桂っちは同時に叫んだ。

「店長! タイスケさん、働いてくれるんですか!」

「いやいや、アタシも寝耳に石だし」

「寝耳に水っすか?」

「そうそう。ビックリなんだけど」

「でも、三月に一人辞めたから、人手足りない状況じゃないですか!」

 確かにバイト募集の紙を店内に貼ったり、公式サイトやSNSでも告知していて、面接ももう何人か済ませた。けど、出勤希望日数が店の提示してる日数より多かったり、逆に少なかったり、面接時の態度があんまり良くなかったとか、採用するかどうか正直悩んでいるところではある。

「ダダ、働きたいって言うけど、履歴書持ってきてんの?」

「履歴書持ってきたら働ける?」

「とりあえず話は履歴書持ってきてからだわ」

「わかった」

「タイスケさん、履歴書ならウチの文具コーナーでも扱ってますよ!」

「じゃあ、買って書く」

 ダダは履歴書を買うと、桂っちと一緒にレジ内で書き始める。

「桂っちもこれ書いた?」

「もちろん書きましたよ。何回も書き間違えちゃいましたけど」

「カタクルシイよね」

「ですよねー。あ、あの! 採用されたら総一郎にも会ってやってください。イエフリでタイスケさん推しなんですよ。こんな近くでバイトしてるって知ったら絶対喜ぶ」

「ソーイチローね。わかった。会えるの楽しみにしてる」

「ありがとうございます! ビックリさせたいからしばらく内緒にしとこーっと」

 なんか採用しないといけない流れになってるんですけど。でも本当に条件が合うのなら採用してもそれはかまわないけどさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ