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決戦の夜明け

「エボリューションタイム・・・それが、奴らの狙いか」

 同時刻。レイから報告を受けたジョージが、うめくように声を上げた。

「はい。ただ、なぜβをさらったのかが、まだはっきりと分かりません。・・・おそらく、彼のユナイトとしての力を何かに利用するつもりなんでしょうが・・・」

「いずれにせよ、その三人は危険すぎる。・・・刑事諸君、そしてソフィア。これは、銀河警察太陽系支部長としての命令だ。三人のエボルバーを抹殺し、虹崎君を救い出してくれ。それが・・・君達の目下の急務だ」

「はい・・・承知しました、長官」

 カグラの返事を受けると、ジョージは通信を打ち切った。それと同時に、一同の間に重苦しい雰囲気が流れる。

「抹殺って言われたって・・・・・・イリスになれないボク達が、あの三人に勝てるわけないよ・・・!」

「そんなことない・・・って言いたいけど、キリアも同感。だって・・・あの三人を一人ずつ相手にしたって、誰も勝てなかったんだよ?そんなのが三人も揃ったら・・・もう勝ち目なんてない・・・!」

 ミュウとキリアが、相次いで悲観的な声を上げる。他の刑事達も何も言わなかったが、今の自分達に勝ち目がないことは、嫌でも理解せざるを得なかった。

 と、その時――

「だらしないですねえ、皆・・・」

 傷が痛む体を励まして立ち上がりながら、ミナミが口を開いた。

「私達は、何ですか?私達の使命は、一体何ですか!?・・・私達は銀河警察の刑事。宇宙の平和と、誠人さんを守ることが、私達に課せられた使命じゃないですか。それを・・・勝ち目がないから諦めるなんて、そんな簡単に投げ出せるわけないでしょう!?」

 いつになく熱い口調で、ミナミは他の刑事達に訴えかけた。皆の目を代わる代わる見つめながら、彼女はさらに言葉を続ける。

「まだ・・・勝負はついてません。エボリューションタイムが始まる前に誠人さんを助け出せれば、奴らの計画は阻止できます。だから皆・・・私に力を貸してください。確かに、私達一人一人の力じゃ、あいつら一人倒せないかもしれません。だけど・・・私達が力を合わせれば、越えられない壁なんてありません。今までもそうやって、皆で乗り越えてきたじゃないですか。だから・・・お願いです。私と一緒に、戦ってください!一緒に、誠人さんを助けてください!どうか・・・どうか・・・!」

 その目に涙をにじませながら、ミナミは一同に頭を下げた。するとその時、ソフィアが座っていたソファから腰を上げると、ミナミの肩に手を置いた。

「教え子にここまで頼まれちゃ、断れないわよね。いいわ。私も付き合ってあげる」

「・・・!ソフィア・・・!」

 ソフィアの言葉に、ミナミが驚いたように顔を上げた。それとほぼ同時に、レイとカグラも立ち上がる。

「私も行く。βを守るのが、今の私達の最重要任務だったはず」

「ああ。あたしとしたことが、あいつらの強さにビビって一瞬忘れちゃってたよ。少年を守る・・・これが、一番大事なあたしの任務だって」

 二人がミナミのもとに歩み寄り、協力を約束する。それを見たキリアとミュウが瞬時視線を交わし、うなずき合うと同時に立ち上がった。

「ごめんなさい、ミナミ先輩。ボク・・・もう泣き言は言いません。ボクも戦います。銀河警察の刑事として!」

「お兄ちゃんには、今までいっぱい恩を受けてきたもん。その恩を返すのは・・・今をおいて他にはないよね!」

 先ほど弱音を吐いたとは思えないほど、二人の瞳には強い決意が宿っていた。それを見て強くうなずくと、最後にシルフィが立ち上がる。

「私の役目は、誠人お坊ちゃまをお守りすること。この任を果たせずして、どの面下げて故郷の星に帰れましょうか。・・・皆様、私も戦います」

『それと、オレも・・・な』

 シルフィの体の中から、ディアナも協力を表明する。ミナミは目元の涙を拭うと、一同に感謝の言葉を述べた。

「ありがとう・・・皆・・・!」

「ううん・・・感謝するのは私達。あなたが思い出させてくれたの。私達の使命を・・・戦う勇気を・・・!」

 レイの言葉に、ミナミは潤んだ目で強くうなずいた。彼女は笑みを浮かべると、一同に向かって叫びかけた。

「さあ、反撃開始です!行きますよ、皆!」

「で・・・でも、お兄ちゃんやあいつらの居場所、分かるの?」

 意気込むミナミに、キリアが冷静に問いかける。その問いに答えたのは、彼女の隣に立つミュウであった。

「大丈夫だよ、キリアちゃん。あの時・・・誠人君の様子がおかしくなってから、グリーンビートル君をつけておいたんだ。ほら。その座標、GPブレスに届いてる」

 その言葉通り、ミュウは誠人に異変が起こった際、秘かにグリーンビートルに彼を追わせていた。グリーンビートルはその後も擬態能力を活かしてイヴ達の目をごまかし続け、ついに敵の本拠地である城の座標を、ミュウのGPブレスに送ることに成功していた。

「さっすがミュウ!あたしの教育の成果が出たね!」

「えへへ、それほどでも・・・ミナミ先輩、この座標の示す場所に、誠人君やエボルバーがいると思います」

「よーし・・・じゃあ、行くとしますか!」

「お待ちを。・・・ミナミ様、あなたにお渡ししたい物がございます」

 逸るミナミを引き留めると、シルフィは自分の荷物が入ったハンドバッグから、小さなケースのような物を取り出した。ケースが開かれ、その中身が露わになった時、ミナミたちは息を飲んだ。

「これ・・・V2ドライバーじゃないですか!」

『お・・・おい。それはあのボウズに渡せって、長官が・・・!』

 予想外の展開に、ミナミとディアナが相次いで声を上げる。シルフィは胸に手を置いてディアナを黙らせると、ミナミの目を見つめて言った。

「先日、ガイルトン長官より送られてまいりました。長官は、誠人お坊ちゃまがイリスになれない事態に直面した場合に備え、これをお坊ちゃまに渡すようにと、私にお命じになりました。・・・しかし、事ここに至った以上、これはあなたにお渡しするべきと判断いたしました。・・・誠人お坊ちゃまを心から愛していらっしゃる、あなたに」

 シルフィの強い眼差しを受けながら、ミナミはGPドライバーV2を手に取った。それを強く握りしめながら、ミナミはシルフィに頭を下げる。

「ありがとうございます、シルフィ。私は・・・必ず、この力を使いこなします。そして・・・誠人さんを、助け出します!」

 その言葉にうなずくと、シルフィはドライバーと同じケースに入っていた一枚のブランクカードを、ミナミに手渡した。ミナミはそれを受け取ると、自身のGPブレスにスキャンさせる。

『Authentication start、please wait a moment.』

 GPブレスが、ブランクカードの認証を進めていく。そしてその認証が完了した時、ブランクカードは『GROUND』と刻まれた、黒いカードに変化した。

『Authentication complete』

「これが・・・私の、新しい力・・・!」

「ええ・・・参りましょう、ミナミ様。誠人お坊ちゃまを・・・助け出すのです!」

 シルフィの言葉に、ミナミは強くうなずいた。この新たな力で、必ず誠人を助け出す。今のミナミを動かすのは、その思いだけであった。



「ふふ・・・どうだい、坊や。もうすぐ夜が明ける・・・・・・その夜明けこそ、あたし達エボルバーの時代の、幕開けになるんだよ」

 数時間後。夜明けが近づく中、エボルバーの城の塔にイヴ、カガリ、リンの三人が集っていた。三人は三角形を描くように立ち、その中心にはイリスバックルを腰に装着させられ、十字架に拘束された誠人の姿があった。

「くっ・・・放せ・・・!」

「暴れるな。余計な怪我でもされたら、エボリューションタイムに支障が出る」

 なんとか拘束から逃れようともがく誠人に、カガリが無機質な声をかける。誠人はもがきながら、目の前に立つイヴに問いかけた。

「お前達・・・僕をどうするつもりだ?」

「ああ、まだ話してなかったっけ。今回のエボリューションタイムは、ちょっと規模を大きくしてやるつもりでね。あたし達エボルバーの力を、全宇宙に拡散してやろうと思うのさ」

「な・・・全、宇宙・・・!?」

 あまりに突拍子もない言葉に、誠人は驚きを通り越して呆れるような思いになった。いくらこの三人が強大な力を持っていたとしても、まさか全宇宙にその力を拡散できるわけがない。

「そんなこと無理、って思ったんだろ?ところができるんだよねえ。このV2ドライバーと、あんたの力があれば、さ」

「GPドライバーV2を使用することで、私達のエボルバーの力は最大限まで高まる。そしてエネルギーを拡散する際に、お前のユナイトの力を利用させてもらう。イリスバックルに使用されているアルコバニウム鉱石の力に、リンの力を介入させてな」

「鉱石の力を書き換えれば、あんたの力をあたし達の力とリンクさせることができる!そうすれば、全宇宙にエボルバーの力が行き渡る。そして・・・未だ力に目覚めていないエボルバー達が、一斉に覚醒する。その時こそ、あたし達エボルバーの時代の幕開けだ!」

 心から嬉しそうに、イヴは笑い声を上げた。だがそれは、同時に数えきれないほどの悲劇が起きることを意味していた。

「くっ・・・そんなことをしたら、エボルバーの力を持たない人達は・・・!」

「ああ・・・別に死んでもいいよ、そんな奴ら。どうせあたし達の世になれば、力のない奴らは不要だしね」

「そんな・・・そんなこと、許されると思ってるのか!」

 誠人が怒りの叫びを上げたその時、イヴが目を蒼く光らせながら誠人を睨みつけ、片手を彼の方へ伸ばした。すると誠人の喉が見えない何かに絞めつけられ、途端に彼は呼吸困難に襲われた。

「黙りな。どうせあんたには、もう何もできはしないんだ。せいぜいそこで見てるんだね。宇宙の歴史が・・・変わる瞬間を」

 と、その時。何かに気づいたように、リンがはっと声を上げた。

「イヴさん、誰か来ます。・・・この感じ、あの刑事達で間違いないかと」

(・・・!ミナ、ミ・・・!)

 リンの言葉を聞いた時、誠人は確信した。やはりミナミ達も、エボリューションタイムを止めるために動いてくれていたのだ、と。

「ほう・・・坊やを取り返しに来たってわけか。はっ、健気だねえ」

 おかしそうな顔で嘲笑うと、イヴは誠人に伸ばしていた手を下ろした。同時に誠人の呼吸困難は収まり、彼は大きく息をついた。

「カガリ、少し遊んできてやりな。・・・なに、夜明けまでの暇つぶし、って思えばいい」

「承知しました、イヴ姐様」

 イヴに頭を下げると、カガリはその場を後にした。彼女が右手を上げると、周囲で警戒に当たっていた無数のエボルドロイドが、彼女の後について動き始めるのだった。

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[一言] 思った以上にリンの力がやばすぎる そりゃ粗末に扱えないわ…
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