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プロローグ

今作は、現在連載中の拙作『チーム・イリスの事件譚』の、番外編に当たる作品となります。

昨年の夏にpixivで期間限定で公開していましたが、この度無期限公開という形でpixivと併せて投稿いたします。


今作は、『チーム・イリスの事件譚』本編の、第18話と19話の間くらいの出来事となっております。あえて本編とのつながりは曖昧になっておりますが、公開当初は本編の要素の一部を先行公開、という形で盛り込んでいました。


既に拙作をご覧になっている方も、これから初めてご覧になるという方も、本編(特に18~20話)と合わせて今作をご覧いただくと、よりお話が分かりやすいと思います。本編もぜひご覧ください

 全ての始まりは、地球から遠く離れた宇宙の果てで起きた事件だった。


 太陽系の外に位置する小惑星、アダガープ。そこには銀河警察の秘密研究所が設置され、刑事達が使う武器や装備品、プラモデロイドなどの研究が、日夜進められていた。

 その秘密研究所の入り口に、三人の若い女が近づいていった。そのうちの一人である蒼い髪の女が手をさっと振ると、その背後に控えていた褐色の肌の女があっという間に二人のそばから消え、秘密基地の入り口を守っていた警備員の背後に現れてその頭に手をかけた。

「な・・・何だ!?おあっ!」

 警備員は事態を把握する間もなく、女に首をへし折られて絶命した。女は警備員が懐に隠し持っていたカードキーを使い、研究所のロックを解除した。

 研究所の入り口が開かれると、残る二人も合流して中へと入っていった。程なく警報が鳴り響き、三人の間に武装した職員が立ちはだかったが、蒼い髪の女はそれを見ても余裕の表情を崩さなかった。

「多いね・・・死にたがり屋が」

 その言葉に反応するように、職員達が一斉に銃を三人に向けた。蒼い髪の女はそれを見てふっと微笑むと、傍らに控えていた栗色の髪の少女に声をかけた。

「リン、あんたの出番だよ」

「は・・・はい・・・!」

 リンと呼ばれた少女は躊躇いの表情を浮かべながらも、両手に赤いオーラを纏わせて手を交差させ、引き戸を開くように一気に手を広げた。すると彼女の手に宿っていたオーラが霧となって職員達を包み込み、彼らの瞳が赤く不気味に輝いた。

「殺して・・・そいつら全員!」

 リンがそう叫ぶや否や、職員達は近くの仲間に武器を向けて凄惨な殺し合いを開始した。銃声と断末魔が鳴り響く地獄のような光景を、蒼い髪の女は満足そうに眺め、リンはその惨さに思わず目を背ける。

 そして30秒と経たないうちに、職員達は全員死体となった。静寂が辺りを包み込むと、リンはようやく視線を正面に戻す。

「よくやったね。さすがリンだ」

 リンの頭を優しく撫でながら、蒼い髪の女が先に進み始める。女は数人の職員の死体から、彼らが身に着けていたGPブレスを剥ぎ取り、そのうち一つを自身の左腕に装着した。

「カガリ、リン」

 女は残る二つのGPブレスを、リンともう一人の女に投げ渡した。それを受け取った二人に、女は再び声をかける。

「大切に扱いなよ。あたし達の未来がかかってるんだから」

 自身もGPブレスを身に着けながら、女は職員達の死体を踏みつけて先に進む。その後に続こうとしたリンの肩を、カガリと呼ばれた褐色の肌の女が掴んだ。

「次は躊躇うな。イヴ姐様がなさることに、一々疑問の心を持つな」

「はい・・・分かってます、カガリさん・・・」

 消え入りそうな声で答えると、リンは先に進み始めた。カガリと呼ばれた女は能面のように表情を変えず、リンの後に続く。

「さて・・・お目当ての部屋はここかな?」

 女が開けた扉の上には、宇宙文字で『研究室』と書かれた表札がつけられていた。部屋を開けた彼女の瞳に、逃げ惑う研究員達の姿、そしてガラスの容器の中に収められた三つのベルトバックルのような物が映る。

「見つけた・・・GPドライバーV2、これがあたし達の求めていたものだ・・・!」

 女が容器の一つに手を伸ばすと、その中に入っていたバックルが意志を持つように容器のガラスを突き破り、女の手の中へと飛んでいった。女はそれを手に取って腰に装着すると、アタッシュケースを手に逃げようとしていた研究員に目をつけ、その足元に衝撃波を浴びせかけた。

「うわっ!」

 衝撃で転倒した職員の手から、アタッシュケースが離れて地面に落ちる。女は手を突き出してケースを引き寄せると、留め金を外してふたを開けた。

「おや?一枚だけかい?」

 女が開けたケースの中には、一枚のブランクカードが収められていた。怪訝そうに声を上げた女の前で、先ほどケースを持っていた研究員が息も絶え絶えといった様子で、二枚のブランクカードを何かの機械の中に入れていた。

「エ・・・エボルバーめ・・・・・・お前らの思うようには、させん・・・!」

 研究員が機械を操作すると、その中に入っていた二枚のブランクカードが一瞬眩い輝きを放ち、次の瞬間機械の中から消え失せた。研究員は勝ち誇ったような表情で、蒼い髪の女に視線を向ける。

「カードは・・・別の星に転送した。お前らの手に渡ることだけは・・・防がねばならん・・・!」

「へえ・・・よく頑張ったね、褒めてやるよ。・・・でも」

 女は先ほどまでの余裕に満ちた表情から一転して、冷たい氷のような瞳で研究員を睨み据えた。

「命取りになったね」

『Authentication start、please wait a moment.』

 女は手にしたブランクカードを、左腕に着けたGPブレスにかざした。程なくして認証が完了し、ブランクカードは『OURANOS』と刻まれた蒼いカードへと変化した。

『Authentication complete』

 カードが変化するや否や、女は腰につけたGPドライバーV2のパーツをスライドさせ、待機モードにして手にしたカードを挿し込んだ。

「アーマー・オン・・・!」

『Read Complete.震天!衝天!皇天!アーマーインウラノス!ウラノス!』

 電子音声が鳴り響くと同時に、女の体を蒼い鎧が包み込んでいった。やがて鎧が完全に装着されると、バイザー状の複眼が一瞬白く輝いた。誕生した戦士・ウラノスが両手を広げると、研究室のみならず研究所を包む竜巻が発生し、建物を容赦なく呑み込んでいった。

「ここは破壊させてもらうよ。でも・・・その前に」

 ウラノスはカードを別の星に転送した職員の体を引き寄せると、背後に控えていたリンの方へ突き出した。リンは研究員と顔を合わせてじっと目を閉じ、数秒後に目を開けてウラノスにうなずきかけた。

「よーし・・・行くよ、二人とも」

 ウラノスは研究員の体を投げ捨てると、カガリとリンの体を風で包み込んで一瞬でその場からかき消えた。程なくして研究所はウラノスが召還した竜巻によって完全に破壊され、建物が跡形もなく崩壊すると同時に、ウラノスとリン、カガリがその外に姿を現した。

「ドライバーの奪取はお見事でした、イヴ姐様。しかし・・・肝心のブランクカードが・・・」

「心配することはないよ、カガリ。カードが転送された先は、リンがちゃーんと突き止めてる」

 イヴ、と呼ばれた女が、ドライバーからカードを抜き取って変身を解除した。リンはじっと目を閉じながら、空中に手をかざしてそこにある星の情報を浮かび上がらせる。

「あの人の記憶は、完全に読み取りました。カードが転送された先は・・・・・・テラです」

 テラ。その言葉を聞いた途端、イヴの顔がほころんだ。

「ふふっ、それは好都合。もう一つ必要なものが、その星にはあるしね・・・」

 冷酷な笑みを浮かべながら、イヴは目の前の地球の情報をじっと見つめた。そしてこの瞬間こそ、誠人やミナミ達にとって、これまで経験したことのない激闘の幕開けであった。

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