朝食での団欒
「いや、あの、先程使用人のリーティアさんから俺を助けるよう指示したのはその、エトワールさんだと聞いたので…」
そう言いながらリーティアを探すが、どうやら厨房に居るらしい。
「ああ、エトワールさん、ね!」
と、男が言い、横を向いた。
蒼太も男が向いた方を見てみると、先程入って来た青年が座っている。
「エトワール様はあの方だよ、少年。私はモブリット。ただの穀潰しさ!」
「主の前でただの穀潰しって胸張って言えるなんて、なかなかなのものですね!」
「ガハハハハッ!!」
皮肉とも取れる蒼太の発言にも大きな笑い声で応じ、モブリットは席につく。彼はきっと、自分が緊張しているのを察し、場を和ませようとしたのだろうと思った。恐らく只者ではない。…色んな意味で。
今度こそ、エトワール本人にお礼を伝えようと歩み始めたその時、残り2つの椅子の利用者と思われる2人が入って来た。
蒼太より2、3歳年下に見える少年と少女だ。双子か?
気になる身だしなみは、まぁ年相応といった感じだ。
ということは、1番最初に入って来た少女が姉になるのだろうか。この子達の為にも、もっとしっかりしてもらいたいものだ。
「誰?、何その服」
そう言ったのは少年の方だ。
だいぶバカにされている感じだがここは抑えて、
「俺は高木蒼太、よろしく!」と応じる。
「ふーんソータね、へんな名前、服もダサいし。」
今度は少女の方がそう言った。
この子達の教育はどうなっているんだ!、と周りを見たのだが、目に入ったのは姉であろうボサボサの少女だったので、肩を落として諦めた。これから俺がしっかりと躾けてやる。
「2人とも、そろそろ席につくんだ」
エトワールがそう言うと、2人は黙って席に着く。
なんだ、案外素直じゃないか。
配膳が終わり、それぞれ朝食を食べ始める。
「美味い!!、これを、リーティアさんと、セルフィちゃんが作ったの?」と聞くとリーティアが、
「はい、お客様。料理は主に私が担当しています。セルフィは一人前まではもう少しです」
リーティアにはただただ感心するばかりの蒼太だった。
「君たち2人は双子なの?」
生意気な双子に話しかける。
「うん。俺が一応兄でパルス、こっちが妹のサーシャ」
「へぇー、しかし、お年頃の割には2人とも中良さそうだよね」
「仲が良いのかは分からないけど、双子だしね」と、パルス。
「年下に興味あるなんて変態の極みね!」
「今の会話でどうしてそうなる!?」
妹の方は要注意だと肝に銘じておこう。
今いるメンツの中で聞けていなかった名前を知れて満足する蒼太。年頃の子供が多い中、母親らしき人物が見当たらないのはあえて聞かなかった。
「それで、君はどうしてこの屋敷の庭で倒れていたんだい?」エトワールが言う。
「それが、何も分からないんですよね。俺だって目が覚めたらベッドにいた訳で」蒼太はありのままを伝える。
「ふうむ、この国のことも知らないみたいだけど、どこか頼る当てはあるのかな?」
「いや全く、今はとにかく早く、住むところと、仕事を見つけないと」
「ならウチに住むと良い。使用人として働いてくれるのならね!」
エトワールからの突然の提案だった。