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オブテイン~人見知り転生少女の異世界生活~  作者: 華丸chan
第一章 無唱の魔女
3/21

3、お母さん?と夕食作り。



抱きしめられたシズクは無抵抗でそのまま抱きしめられる。


「ごめんなさいね。こんな危険な依頼をしてしまって。

お義姉様もありがとうございます。」


「いや、血は繋がって無くても義妹の為だ、私のことは気にしなくても良いのだが…

そろそろ離してやってはくれないか?」


「あら?ごめんなさい。」



シズクは仮面によって呼吸は確保されてはいるが、抱きしめられれば暑い。

その上、お腹に子供が居るので抵抗することも出来ずに、大人しく抱きしめられていた。



「もう少ししたら陛下が来ると思うから、詳しい説明はそこでね。」

「…はい。」


「簡易厨房は護衛の都合上、隣の部屋を改築させている。」


「それなら王様が来るまで下準備して来ます。」


「分かった、それで…私の分も…。」

「分かってます。」

「あら?私達の分は?」

「…分かりました。4人分で良いですか?」

「ん~…一応陛下の分もお願いして良いかしら?」

「分かりました。王様が来たら知らせてください。」

「分かってる。」



シズクはリギットの案内で隣の部屋へと案内される。



「うふふ♪お義姉様からよく聞かされてましたから、楽しみです♪」


「シズクの料理は美味しいぞ。この国の料理とは全然違うがな。」




シズクはリギットの案内で通された部屋を一瞥して確認していく。

棚には大小の平皿、大小のボール皿、グラスなどの食器類が、

調理場所はシズクの背の高さに合わせた高さの流し、

火の魔石を使ったコンロも3基用意され、換気扇も付けられている。



「ふむ…。」


「どうかされましたか?」


「いや…師匠は私に料理を作らせる気満々だったんだと、思っただけです。」


「…確かに、シズたんの為に作ったような高さですね…。」


「まあ良いです、準備します。」


「あの~、お手伝えることはありますか?」


「……ないですね。」


「そうですか…。」


しょんぼりしたリギットにシズクは声をかける。


「現段階ではありませんが、調理の時にはお願いします。」

「あっ♪はい♪お手伝いします!」


シズクは仮面の下で、自分が子供だった時のことを思い出し少し苦笑いをする。


「さて…今日買った牛肉をベースにトマト、タマネギ、キュウリ、キャベツ、ニンジン、パンっと…ハンバーグにしようかな?」


シズクはそう呟き牛肉を適当な大きさに切って球体の結界で包み、風魔法で細かくミンチにする。


「ひき肉完成っと♪」


ミンチを容器に入れて蓋をして、アイテムボックスへとなおす。


「次はケチャップを…。」



トマトのヘタを取って流しで洗い、

アイテムボックスから鍋を取り出しコンロを使って煮込む。

時間短縮の為に水魔法と火魔法の合成魔法でお湯を作り出して使っている。



「で?いつまでそうして見てるの?」


「え?ダメでしたか?」


「別に良いんだけど…退屈じゃない?」


「いえ!退屈何てとんでもないです!魔法をあのように使うなんって誰も思い付きません!」


「あのよう…ああ、簡易ミキサーか…。」



シズクが使った簡易ミキサーは料理に使えば便利なのだが…モンスターや人に使うと残酷で凶悪な魔法に変わってしまう。

この魔法は以前結界を使用してなかった為に、通り名の『ちみっこ』が付けられた原因でもある。

シズクの通り名の1つ『ちみっこ魔女』は『血身っ子魔女』…シズクの身長から付いた通り名というだけではなく、モンスターなどの返り血を浴びている姿から付いた通り名でもある。




「それなら、トマトの皮が外れたら教えて。」

「はい♪」


とリギット返事して、真剣に身動きせずに鍋を凝視している…。



なんだろ?子供に料理を教えるお母さんみたいな?


「まあいいや、ニンジンとタマネギを…これ、リったんでも出来たか…まあいいや。」


シズクはひき肉を作ったのとは違って、少し調整した結界と風魔法で微塵切りにしてから、容器に納めて、アイテムボックスになおす。



「シズたん。トマトの皮が外れ出しました。」


「ん。ありがとう。」



シズクはトマトと皮、ニンニクとタマネギを一緒に再度結界と風魔法で磨り潰しから、鍋に入れて煮ながら塩と胡椒で味付けをして行く。



「これでコトコト煮込んで、水分が飛んで、ドロッとしてきたら完成。

で、こちらがその完成品です。」


シズクはまるで何かの料理番組のように完成品が入った容器を取り出す。


「え?完成品があるんですか?」


「うん、あります。」


「…何故今作ってるんですか?」


「残りが少ないからついで。」


「ああ…。」


「これでリったんはこのケッチャップの作り方を一通り見たから、自分でも作ることは可能になった。」


「ぁっ…そうですね♪はい♪」


「さて、あとはしばらく煮込まなきゃいけないから、戻ろうか。」


「はい。」



2人が簡易厨房の扉を開けると同時にもう一方の、シズクたちが入って来た扉も丁度タイミングよく開かれた為に、両扉に居る人からは視線がぶつかる形となった。



「お?氷結の、今回は無理を言って済まないな。」


「いえ。」


「陛下。」



カルゼイは動こうとしたリズリットを手で制して、傍まで移動して座る。


「説明なのだが…。」



カルゼイは一旦そこで言葉を止め、視線をシズクに向けたように見せかけて、シズクの傍のリギットに向けた後に…。



「お腹が空いたな。先に食事にしよう♪氷結の食事は美味だとテレシアが言ってたからな、今日の晩餐はキャンセルしておいたのだ。」


「それは――。」

「作って来ます。あっ、パンだけ用意してもらっても良いですか?」


「…分かった。」



テレシアの言葉を遮り、シズクはパンの用意を頼んで、再び簡易厨房へと入って行き、その後をリギットも付いて行く。

テレシアは部屋の外に居る護衛の兵にパンの手配を頼んでカルゼイに向かって。



「リギットには聞かせられない内容なのか?」


「ああ…出来れば聞かせたくない。聞かせて変に不安にさせる訳にもいかんからな。」


「それなら先に言っといて欲しかったが?」


「すまない。少し状況が変わってな、ドゥンケルハイトが動くかもしれん。」


「⁉、それは本当なのか?」


「まだ分からん、が、その様な報告が入って来た。全く…王位なんぞ何で欲しがるのか…面倒なだけなんだがな。」


「欲しい奴には黄金以上に見えるんだろ。」


「違いない。例え幻であっても…か。」



ドゥンケルハイトとは殺し、暗殺を専門にした組織で、依頼達成率100%の組織である。

何故100%なのかは謎であるが、受けた依頼は今まで失敗したことが一度もない。



「テレシアご自慢の弟子の手料理を楽しみにしてるぞ。」


「あ~弟子といえば弟子ではあるんだけどね…。」


「どうしましたお義姉様?」


「私とあの子が出会ったのは3年前で、私が教えたのは魔法の基礎だけ、体術はあの筋肉莫迦が教えたんだけどね…。」


「筋肉莫迦とはアレクスか…それは氷結も大変だったろうな。」


「いや、半年ほどであいつを倒した。魔法に至っては3ヶ月で私を超えてたね。」


「なっ⁉魔法はなんとなく理解出来るが…アレクスはあれでも拳聖だぞ!いくら何でも!…手心を加えてたのか?」


「いいや、カルゼイも知ってるだろ?あいつにそんな器用なことは出来ないって。」


「確かに…本気のアレクスに勝ったのか?あの氷結が⁈」


「そうだよ。だから弟子って言われると、こっちの方が恥ずかしくなって来る。」


「ち、因みになんだが、帝国最強と氷結だとどっちが強い?」


「あっちも大概だけどね…純粋な戦闘なら帝国最強の方が少し上かね。」


「そうか…。」


「ただ、何でも有なら、あの子の方が上だね。」


「…何でも有とは?」


「何でもは、何でもだよ。地形、罠、奇襲とかね。」

「…。」



扉が開く音がして、扉の方からリギットがテレシアに声をかける。

扉からは美味しそうな匂いが漂って来る。



「フォイマン様。」


「ん?どうした?」


「もう直ぐ焼けるそうなので、テーブルの準備をお願いしますだそうです。」


「了解。」


「お願いします。」



リギットが扉を閉めた為に匂いは少し辺りを漂い消えていく…。





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