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「ギャハハハ」


朝、程よい微睡(まどろ)みの中突如外から下品な笑い声が聞こえた。体をを上げ、布団で寝る女の様子を見る。どうやら様態は安定しているようでこのままなら問題なく起きるだろう。


「おい、なんだよこのボロアパート!人住んでんのかぁ!?どう思うよりょーくん」

「鍵ボロッボロで入れんじゃね!中入ってみよーぜぇー!」


そして隣の部屋を開けようとドアを叩いたり、蹴ったりしているような音が聞こえるようになった。さすがにブチギレる。寝癖だけ直し、服装を治して外へ出る。そして横を見るとやはりと言うべきかチャラそうと言うよりはウザそうな顔をしている金髪頭の男が二人いた。


「おい、お前ら何してんだ」


その言葉にこちらを見る2人。そして気色悪い笑みを浮かんでこちらの前へ立ち、睨んでくる。なんだコイツら。


「りょーくん、こいつここの人かな?」

「かもねー、でもこんな所に住むやつって底辺っしょ?だったら何しても良くね?」

「ごちゃごちゃうるさい、さっさとこっから居なくなれ」


2人で会話しているがその内容は身勝手、その一言に尽きる。ここはそういう場所じゃない、と言いたいが事実どころか事情すら知らない一般人に何を言っても無駄だと分かっているため何も出来ない。


「なーんーでー?君みたいな底辺に僕達がめーれーされないといけないのさ」

「うるせぇなぁ、とっとと居なくなれって言ってんのがわかんないのか?日本語理解してる?どぅーゆーあんだすたん?」


なにかが切れる音がした。片割れの方が何故かキレて殴りかかってきた。反射的に裾を掴み引っ張ってしまった。しまったなぁ……ここまで来たならやっちゃうか。そしてこちらに倒れてくる男の腹に反対の手で拳を叩き込んでやった。


「ぅぐぅ!」

「いきなりなんで殴りやがる、バカか?」

「ちょっ!お前何してんの!底辺のお前がなんで抵抗してんの!?それ犯罪だよ?分かってんの!?僕達に手を出して──」

「しゃらくせぇ!監視カメラがあることに気づけクソ野郎が!それにお前らのことなんざ知るか!犯罪者ごときが口出してんじゃねぇぞ!」


顔を伏せ腹を抑え込むやつの襟をつかみ隣に立つやつに投げ渡し追い払う。そのままそいつを肩に担ぎ走り去っていく姿は滑稽だ。さて、女が起きた時のために飯作っとくか。







ふざけるなふざけるなふざけるな、なんだあのボロアポートの男は!中島財閥の御曹司に手を出して済むと思ってるのか……!殺してやる、絶対にぶっ殺してやる!


「竹井ぃ!」

「はいはい、なんでございましょうかおぼっちゃま」


いつまでこの執事のじじいは俺の事を子供扱いしやがるんだ……!


いや、いい。この怒りはあの生意気な平民にぶつければいい!


「あのボロアパートに住む生意気な平民を殺せ!ボロアパート事ぶっ壊せ!」

「承知致しました……亮様は治療しますのでこちらへ」

「あ、あぁ……」


俺に従わねぇやつは全員死ねばいいんだ……!









昼頃、周りには空き家しかない一帯に重機であるショベルカーが来た。なんだぁ?どっか売り払ったのか?と思いきやこっちに来ていきなり壊そうとしてくるではないか。


「おいおいおいおい!」


どういうことだ!こっちは解体する予定なんざないっての!急いでショベルカーに駆け寄り運転手を引きずり出した。執事服……?どっかの執事か?一体なんのためにこんな重機引っ張り出して俺のアパートを壊そうとしやがった。


「おい、ジジイ!これは一体どう言う了見だ!」

「離しなさい!あなたみたいな平民ごときが触っていいほどこのスーツは安くないんですよ!」


手を払われ思いっきり突き飛ばされた。平民ごとき……?平民だァ?そんな選民思想持ってるようなやつがなんでこんなことしてやがる。執事ってことは誰かに雇われてんだよなぁ、誰かに恨まれるようなことしたっけなぁ……大量にあったな。


「お前、誰に雇われてやがる」

「中島(しょう)様ですよ、これで満足ですか平民。おぼっちゃまの命令で仕方がなく平民である貴方を殺すのです、大人しく死になさい」


拳銃だと?目の前のジジイ、どうやら本気で俺を殺そうとしてるらしい。だが拳銃とは舐められたもんだ。発砲する瞬間体を沈ませ、曲がった膝を伸ばし前へと駆ける。そしてそのままジジイの顔を掴み地面へと叩きつける。


「中島ということはよ、お前、中島財閥の人間て事だよな。そんな偉いとこがこんなことしていいと思ってんのか?」

「離せ!その薄汚い手を離せ!虫唾が走る!」


どうも話を聞いてくれないようだ。ということで電話1本。スピーカーに設定し下で這い蹲るジジイにも聞こえるようにする。


「あー、もしもし平蔵さん?」

『何用かね御劔(みつるぎ)くん。今ちょっとした会議中なのだが』

「ご当主様!?なぜお前如きがご当主様の電話番号を知っている!」


やっぱりか。確信はなかったがこの反応で中島財閥の人間ってことは確定した。次はなんでこんなことを命令したか聞こうじゃないか、場合によっては血で血を洗う殺し合いに発展するぞ。


『その声は……息子達のお世話係の泰造か?なぜ御劔くんと一緒に居る』

「てことは知らないってことでいいんだな?」

『一体なんの事だ?泰造と一緒にいることに何か関係があるのか?』

「ご当主様!助けてください!この平民が私に暴力を振るったのです!」

『……御劔くん、どういうことか聞いても?』

「おういいぜ」


そして今までの経緯、って言ったってこいつがショベルカーで来てアパートを壊しに来たことを伝えただけだが。


『……泰造、それはバカ息子共の指示か?』

「え、あ、はい……」

『ふぅ……御劔くん、済まない。うちのバカ息子共の命令のようだ』

「俺は平蔵さんの息子とあったことは一度もないんだが、なにか恨まれることが?」

『いや、無いはずだ。後で確認する。泰造、お前は帰れ、事情は後で話す』

「ご当主様!なぜこの平民ごときの話を──」

『黙れ!死にたくないのであらば帰ってこい!』

「ひぃっ!わ、分かりましたァ!」


そして膝が抜けながらショベルカーを撤収させていく泰造とかいうジジイの執事。


一体なんだったんだ……?

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