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第七話 デス・コックの実力

食事会の後編です。駄文ですみません。こんなので良ければ楽しんでください。やや短めです。

 

 生徒会室 side天宮


「今日はありがとうございます。会長たちと一緒に昼ごはんを一緒にできるなんて幸せです。」


「どういたしまして。楽しく食べましょう。」


 会長に鼻の下が思いっきり伸びている俊介。言われた理由も知らずに哀れだな。


「蓮、昨日は会議じゃなかったの。どうして今日もなのかな。」


 凄まじく不機嫌な遥、昨日の件は俺のせいじゃないんだがな。

 一つ気になるのが、橘先輩が深刻そうな顔をしていないことだ。どっちかと言えば楽しそうにしている。あまりの恐怖に気でも狂ったのだろうか。

 観月先輩は今にも死にそうな表情になっている。死を覚悟しているみたいだ。


「えっと、いいんですか。私たち部外者なのにこんなところに入って。」


 メイは落ち着かなさそうにしている。そんなに緊張するような部屋だろうか。部屋の中は雑多な感じをしていて、そこまで格式張った空気にはなっていないはずなのだが。


「いいのよ。気にしないで。私が招いたんだから、」


 嵯峨会長は弁当箱を取り出した。

 来たな。死の調理師(デス・コック)の異名を取った実力はどうなんだ。

 遥とメイは弁当を取り出した。俊介はいつものようにコンビニ弁当だ。


「はい。いただきます。」


 嵯峨会長が手を合わせてそう言うと、全員がそれぞれの食べ物に手を伸ばす。

 今日の会話は自然と主に自分たちの弁当の話になった。


「へぇ、メイちゃんはお母さんが作ってくれるんだ。」


「はい、危険だからって台所に入れてくれないんです。前は一緒に作らせてくれていたんですけどね。」


「橘先輩って自分でお弁当を作っているんですか。」


「そうだが。私も一応は自覚はしているが、お前も似合わないと思うか。」


「いえ、別に。いいんじゃないんですか。料理が得意でも。おかしいとは思いませんよ。ただ普段の仕事態度を見ていると、想像できなかったですけど。」


「遥ちゃんは自分で作っているの。」


「うちの母親は料理が苦手ですから。いつも怪我をして、逆に見ていられないんです。そうしている間に、私の方が上手くなって。」


「会長のお弁当、うまそうですね。」


 下心全開で、嵯峨会長に声をかける何も知らない俊介。


「あっ、雜賀くんも食べる。今日はみんなにあげる分も作ってきてあるの。」


 ついに来たか。

 さっきまで黙っていた皇先輩と嵯峨会長と話していた遥の動きが止まった。

 止まったのなら遥も知っているんだな、会長の異名は。

 二人は知らないのか、純粋に喜んでいる。二人ともには悪いが、これもみんなの生存率を少しでも上げるためだ。犠牲になってもらう。


「はい、これ。観月ちゃんが好きな青椒肉絲。辛い物も好きって言ってたから。特製ハバネロソースとピーマンの代わりにハバネロを入れてみたの。」


「あ、ありがとうございます、嵯峨会長。頂きます。」


 観月先輩は微妙に顔が引きつっているし、声も震えている。

 見せられたそれは真っ赤だった。匂いだけで涙が出てきそうだ。いくら何でも限度があるだろう。

 どうしようかと、観月先輩は手をつけられないでいる。


「唯は唐揚げね。チョコレートが好きって言ってたから卵の代わりにチョコレートを使ってみたの。たぶん気に入ると思うわ。」


「ありがとう。わざわざ悪かったな。」


 おかしい。何故、先輩は笑顔でいられる。あれだけ嫌がっていたのに、おかしくなったのか。

 手元に置くと、やはり橘先輩も手をつけようとしなかった。


「蓮くんは好きな物がわからなかったから、餃子よ。たぶん美味しくできたと思う自信作よ。」


 俺だけは見逃さなかった。今の一瞬のうちに橘先輩は唐揚げを取り替えた。

 確かに取り替えたいのはわかる。チョコレートって尋常な考えでできるモノではない。始めから橘先輩を殺すつもりとしか考えられない。

 観月先輩も同じだ。始めから殺すつもりなんじゃないのか。


「4つあるから、4人で分けて食べてね。」


「はい。」


「先輩の手料理ですか。感激です。」


「あ、ありがとうございます。」


 誰も手につけない。俺たちは警戒して、二人は遠慮して。

 この餃子、見た目は普通だ。案外食べられるかもしれないが、先輩の実績を聞くと食べる気がしない。それに二人への料理から考えて、中身が何なのか全く想像できない。

 俺たちは目配せして、一気に食べることを約束した。


「いただきます。」


 3人で箸を伸ばす。遥も一緒に掴むと、口に運んだ。




 side皇


 私は覚悟して一気に真っ赤な青椒肉絲を口へと運んだ。

 確かに私は辛い物は好きだし、青椒肉絲も好物だけど、これは。


「うぅ――ん。」


 口の中が焼ける。

 それと同時に一気に喉にくる不快感、これって料理を食べた時に感じるモノじゃない。

 箸を落として、口を抑える。吐く、絶対に吐いちゃう。吐かないように必死で抑える。少しでも緩めると、一気に吐いてしまいそう。

 私は床にうずくまった。



 side姫野


 先輩の実力は聞いていた。それだけ酷いモノだと、先輩たちがする冗談の一種だと思っていたけど、これはヤバい。

 簡単に死ねる。料理で死ぬなんて冗談じゃない。

 これが餃子って呼べるの、餃子っていうより余り物を無理やり詰め込んだ感じがする。


「水、水。何か飲み物ないの。」


 慌てて飲み物を探す。何とかして、押し込まないと。




 side天宮


 嫌な予感はしていたが、ここまでなのか。

 前に仕事で出された料理に毒がはいっていたことがあった。匂いはなかったが、味は酷かったのですぐに吐き出したが、それを上回っている。

 何だこれ、チョコレートにハバネロまで入っていやがる。他にも何か入っているみたいだが、混ざりすぎていて何がなんだかわからない。もはやこれは、


「これは料理ですか。」


 何とか耐えながら言ってみたが、限界だった。


「ぐっ。」


 俺は倒れた。




 side橘


 チョコレート唐揚げと普通の唐揚げを取り替える。秋帆の目線が逸れた時にチャレンジしたが、うまくいった。

 二人には悪いが、ここは逃げさしてもらう。これで私はセーフだ。

 唐揚げを口に入れた瞬間、凄まじい味が口の中に広がった。

 昨日訪れた時のチョコレートの強烈さに忘れていた。こいつの異名の由来はただ材料に触っただけなのに、料理が致死性をもつような物に変えたことだった。


「ぐわっ。水、水。何か飲み物くれ。」




 side龍宮


 えっと、メイです。目の前の光景はなんでしょうか。

 れ、蓮くんや遥ちゃん、先輩たち二人も料理を食べた途端に倒れてしまいました。

 雜賀くんも恐る恐る餃子をくわえると、倒れてしまいました。いったい、どうなっているんですか。


「あれ、失敗したかしら。」


 会長は首を傾げながら、それぞれをつまんでいますが、異変は起こりません。やっぱり問題は食べた人にあったのですか。

 試しに餃子を食べてみることにします。

 うっ、これは


「美味しいです。どうやって作ったんですか。こんなに美味しいの食べたの久しぶりです。」


「えっ、昨日の料理で残った物を適当にボールに詰め込んで、圧縮魔法で一気に圧縮したの。

 それで、適当に混ぜて餃子の皮にお酢を染み込ませて、包み込んで一気にレンジでチンしたのよ。」


「参考にします。私のお弁当って、どこかインパクトがなくて、」


「料理に必要なのはインパクトよね。」


 会長からその後、自分が思いついた料理を全て教えていただきました。

 私は台所には入れませんから、お母さんに作ってもらいたいと思います。


「う〜ん。」


 あっ、蓮くんが目を覚ましました。大丈夫なのかな。




 side天宮


 目を覚ますと、目の前にメイと嵯峨会長の顔があった。


「ここは生徒会室ですよね。」


 おぼろ気になった記憶から無理やり引っ張り出す。会長の料理を食べて気絶して、思い出すと吐き気が。

 テーブルの上を見ると、嵯峨会長とメイの弁当以外はそのままだった。


「えっとメイ、会長の料理。」


「は、はい。美味しかったです。」


 輝くような笑顔で言われた言葉は一瞬信じられなかった。俺は未だに夢でも見ているのだろうか。


「本当に。」


「失礼ね。美味しいって言ったのが、聞こえなかったの。」


 鋼鉄の胃袋と舌を持つのが、この学校に二人もいたのか。

 ヤバい、また吐き気が出てきそう。

 他の人たちも目が覚めて起き上がると、口を抑える。


「すまん、観月。5時間目は欠席するって伝えといてくれ。」


「む、無理です。私も行きます。」


「ごめん、メイ。私も5時間目は欠席するって伝えといてくれない。うっ、もうダメ。吐きそう。」


「龍宮、俺もだ。悪い。」


 全員、生徒会室をダッシュで出て行ってしまった。

 ヤバい。俺も吐き気が抑えられそうにない。この料理は封印されるべきだ。

 俺も生徒会室のドアのところに行き、一言告げてから部屋を出た。


「先輩、もう俺たちの分はいりません。後、メイ。やっぱり俺も欠席するって伝えといてくれないか。」


 ダッシュでトイレに駆け込む。すでに俊介が吐いている。

 今ごろ女子トイレでは三人とも駆け込んでいるんだろう。

 何であの二人が平気なのか分からない。食べた物を全部吐き出してしまう。先ほど食べた弁当だけでなく、朝食べた分までも吐き出した。







 死の調理師(デス・コック)の料理メモ


 餃子編


 野菜室に入っている余り物と(なんでもいい)適当に混ぜる。

 圧縮魔法がお勧めだけど、魔法が使えない人はミキサーがお勧め。一気に混ぜられる。

 圧縮魔法なら美味しさを逃がさないから、そのまま元に戻したら、素材の美味しさがそのままに。

 皮には秋帆の特製ソースにつけて、タネを包んだらおしまい。(今回はお酢だけだったけど。)

 できた餃子をレンジでチンをしたら、はい。

 秋帆ちゃん特製の餃子の出来上がりです。




 おまけ


「あはは、死んだじいさんが見える。」


「誰だ。嵯峨に料理を作って、こさせ、たのは。」


 追加で二名が保健室に運ばれることになったのだった。


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