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第二話 転入する『天』

サブタイトルは第一話のようにするのは大変なので、これからは止めます。楽しんでくれると嬉しいです。


 次の日


 8時前に着くように家を出た。その前に朝ごはんを買う必要があったので、コンビニに寄ると、遥に会った。


「あれ、蓮。こんなところで何してんの。まだ学校の時間には早いわよ。」


「昨日引っ越してきたばかりだからな。冷蔵庫の中が空っぽなんだ。だから、朝ごはんを買いにきた。それに早いのは転校生だからだ。始めは職員室に行くべきだろ。場所がわからんから迷う時間も込みだ。」


「ふぅ〜ん。」


 遥はどうでもよさそうに返してくれる。聞いてきたのはそっちだろ。


「なんで遥はこんな時間に来ているんだ。まだ7時30分だぞ。」


 授業が始まるのは8時30分からだ。ここから学校まで歩いて10分ほどで着く。

 昨日送らされた感覚でいうと遥の家までここから5分ぐらいだ。何故、こんなに早く家を出たんだ。


「あれ、言ってなかったけ。私は生徒会に入っているのよ。生徒会か風紀委員会に新入りが入るから昨日の晩に緊急集合がかかって、かなり急に決まったのよ。」


 それは俺のことだと言う気にはならない。どうせ後でわかるのだから無視して構わないだろ。

 適当に相づちを打ちながら、何個かおにぎりを選んで、レジに打ち込んでカードを通す。

 昨日のレストランや飲食店、デパートでは実用化されていないが、24時間営業のコンビニでは無人化が進み、欲しい物をレジに打ち込んで、カードを通すと、品物を持って来てくれる。

 このカードは魔法使いだと個別の魔力に反応するように作られており、違う者が使用すると警報が鳴り、品物は運ばれない。

 一般人だと指紋と声紋認証で本人か確かめられると聞いている。

 運ばれたおにぎりと飲み物をバックに入れ、遥と一緒に登校することにする。

 歩いている間にクラスや制度についての詳しい説明を聞いた。


「そうね、クラス分けは簡単よ。入学試験での成績を上から並べた順番、だから名簿は適当よ。同じ名字の生徒が数人いたり、ア行の生徒は一人もいないとか。完全な実力主義の世界ね。

 だからといって、クラスが違っても仲が悪いわけではないから。部活とかでも、どのクラスが頑張っていても全校で応援している。

 テストの結果とかも全部張りだし、順位も全部わかるわよ。これは実技と筆記、そして総合の3つね。

 実技は二つやるけど、一つは一人でやるパターンと戦闘実技の2つ。一人でやるのは術式の展開とかが総合的に判断される。戦闘は勝敗と中身ね。だから実力が均衡している者同士でやる。

 行事は都市全部でやる魔法祭と各学校の創立祭、クリスマスとかのイベント企画ぐらいね。

 魔法祭は10日間行われる。ここだけのお祭り、マスコミとかもこの中にいる人しかダメ。完全封鎖なの。ここの住民のためのお祭り。外部の人はこの日まで残ろうとしても、全学校の風紀委員会と警察組織の協力で『都市狩り』が行われる。他のはそこまでの規模じゃないけど、そこそこ盛り上がる。

 こんなぐらいかな。部活とかもこっちから出向いて試合とかするから。ここに招くことは決してないから。」


「そんな学校で、よく仲良くできるな。」


「だからこそ、じゃないの。でも中には差別意識がある奴もいる。問題を起こす生徒はいるから。」


 できたら、いなければいいんだけどね。遥は呟くが、それは仕方ないだろう。どんな時にも制度に反発する人間はいる。そういう人間はいなくならないだろう。

 そんなふうに話しているうちに、学校に着いた。遥のおかげでだいたいこの学校についてわかった。


「はい、わかりました。」


 遥は耳に手をあてて頷くと、


「悪いけど、職員室までは一人で行って。そろそろ会議が始まる時間らしいから。職員室なら右に行って曲がったら、すぐにわかるから。」


 遥はそう言うと、走って階段を上っていった。俺の方も向かうことにする。

 右に行って曲がったら、すぐわかるだったな。言われた通りに曲がると端から端まで職員室になっていた。


「確かに迷子になるほうが難しいな。たしか久世先生に話を聞けってことだから。」


 手に持った書類を確認して、職員室をノックして一言挨拶をかけてから入る。

「失礼します。今日、こちらに転入することになっている。天宮蓮っていいますが、久世先生はおられますか。」


 声をかけると奥の方から若い女の先生がこっちに来た。


「私が久世だけど、天宮くんね。詳しい説明はいるかしら。時間はあるから説明ならするわよ。」


「あっ、ちゃんとここについては調べてきましたので、構いません。それよりもクラスはどこですか。」


「A組よ。編入試験の結果を見せてもらったけど、すごいわね。国からの推薦で、戦闘実技が得意なんだって、筆記もほとんど満点って聞いたわ。生徒会とかは放課後に改めて紹介させてもらうから。」


 しばらく職員室で待つように言われ、8時20分ぐらいに朝のHRで紹介するらしく、先生についていった。

 教室の前に着くと、先生だけ中に入って、みんなに紹介した後、入ってきてほしいと言われた。




「じゃあ、紹介するわね。天宮くん入ってきてもらえる。」


「はい。」


 教室のドアをゆっくり開けて、中に入る。見渡してみると、遥も席にすわっていた。全員の目線が俺に突き刺さる。

 ゆっくり深呼吸をした後、自己紹介を始める。


「今、先生から紹介された天宮蓮です。昨日ここに到着したばかりで、この都市について知らないことも多いですが、よろしくお願いします。」


 クラスメートの反応を見てみると、悪くはない。少なくとも第一印象はそこまで悪くなかったみたいだ。

 先生は名簿表を見ながら、遥の隣を指差すと、


「そこが空いているわね。天宮くん、そこに座ってもらえるかしら。機材とかは届くまで隣の姫野さんに協力してもらってね。」


 先生がそう言った途端、教室の空気が一変した。教室内の生徒全員が殺気だっている。

 何かあったのか。クラスメートの雰囲気が先ほどの温和な様子は全く見られない。


「先生、姫野さんの隣は誰も座らないというふうに決めたはずです。」


「そうですよ。お姉さまに近付く男は死ねばいいのに。」

「いくら転校生でもそれは反対です。しかも、昨日の夕方にその転校生と姫野さんがレストランに入ったとの情報があります。」


「ちょっと。なんで、そんなことを知ってんのよ。もしかして見てたの。」


 遥は顔を真っ赤にして、席から立ち上がった。見られているとは思わなかったのだろう。俺も騒いでいたから見られていると思っていたから、気に留めなかった。

 それにしても騒がしいクラスだな。ここが最優秀クラスだとは信じられないな。しかも、お姉さまってけっこう危ない女子もいるんだな。

 数人の目線がこちらに向く。こっちの方にも注目が向いてきたな。


「で、本当なのか。本当に姫野さんと一緒に食事をしたのか。」


 全員が俺の方に向いている。遥は言うなと知らせてくるが、どうするか。

 先生は楽しそうにこっちを向いている。時間はもう授業中で授業する時間のはずなのに、誰も授業の準備をしていない。

 遥と俺を見たというクラスメートは確信した顔をしている。誤魔化しても無駄だろう。証拠の写真などを見せてくれそうだ。


「あぁ、事実だな。」


「まじかよ。ついに『撃墜の姫君』に恋人か。しかも、出会ったばかりの転校生。」


 放っておけば際限なく広がっていきそうなクラスメートの想像を否定する。


「たまたまだ。昔に近くに住んでいた幼なじみだからな。昨日来たばかりで、街についてまだよくわかってなかったから、案内してもらったお礼だ。」


 どことなく安堵した様子が広がっていき、クラスメートたちの注目は俺への質問に切り換えられた。


「はいはい、女の子で好みのタイプは。」


「どこの部活に入るつもりですか。」


「昨日来たってことは外から来たってことよね。どうしてこっちに。」


 一気に質問されて、どう答えるか迷っているときに、クラスメートたちからの質問攻めを区切ったのは久世先生だった。


「質問はいいけど、先に課題だけ出してね。そしたら今日の一時間目の魔法史の授業は天宮くんへの質問で潰してもいいから。」


 クラスメートたちはノートを回して、先生のところに持って行く。

 先生はそれを確認すると、遠慮なくGOサインを出した。先生なら少しは遠慮したらどうなんだ。




 適当に質問はあしらっていったが、休み時間にもほとんど休憩できなかった。次から次へと質問が出てくる。

 よくそんなにあるなと、感心したぐらいだ。

 遥は休みになるとすぐに、適当に理由をつけて逃げていた。

 4時間目の授業中も周りから見られている。かなり居心地が悪かった。遥に説明を求めて、下の名前で呼んだ時も一騒ぎになった。

 昼休みになると、遥がこっちにやって来た。昼休みになって質問攻めがようやくなくなったところだ。

 遥と一緒にクラスメートが二人こちらにやって来た。

 男子は雜賀(サイカ) 俊介(シュンスケ)、女子の方は龍宮 メイ(タツミヤ メイ)というらしい。

 俊介とは休み時間の間に仲良くなった。龍宮さんは遥にとって中学からの付き合いで親友らしい。


「一緒に食べてもいいかな。」


「俺も一緒に食べてもいいか、せっかくだから仲良くしたいしな。」


 二人を拒絶する必要もないので、一緒に食べることになる。

 龍宮さんは弁当、俊介はコンビニ弁当らしい。遥も弁当だ。俺は朝に買ったおにぎりをテーブルに置く。

 授業を受けるテーブルと食事用のテーブルは別に作られている。

 授業では魔法理論など、恐ろしい計算を使用する場合がほとんどなので、一人に一台ずつコンピュータが配布されている。

 そんなコンピュータを汚さないためのテーブルが食事用だ。こっちに弁当を持って来て、会話をしている奴らもいる。

 二人はAクラスの中でも優秀な部類らしく、俊介は一年の中では実戦形式ではトップクラス、龍宮さんも魔法工学に強いらしく、テストではトップ、実技でも実戦ではあまり強くないものの、実演魔法では一年ではトップクラスらしい。

 俊介は魔法武道部、龍宮さんは魔法芸術部らしい。遥は生徒会に入っているため、部活には入っていないらしい。


「蓮はどの部活に入るつもりなんだ。今からならどこへでも入れると思うぜ。」


「そうね。委員会は全部決まっているし、生徒会と風紀委員会は先生たちとかの推薦がないと入れないからね。どうすんの、蓮。」


「決まってから言う。状況によっては部活に入れないかもしれないからな。」


 三人とも空気を読んでくれたのか、それ以上は聞かれなかった。しかし、あまりいい方には転ばなかった。


「それにしても、姫野と幼なじみね。気をつけた方がいいぞ。『姫を守る会』と『姫百合会』がお前を狙っているから。」


「なんだ、その怪しい会の名前は。こんな奴にそんなもんができてんのか。」


「こんな奴で、悪かったわね。」


 遥の右ストレートを避ける。遥の奴、なんの躊躇いもなく、顔面を狙ってきやがった。

 やっぱり、こいつにファンクラブができるなんて信じられない。


「まぁ顔はいいし、学力も実技も学年でトップ入学だからな。」


「一年のこの時期から生徒会に勧誘を受けたぐらいですから。」


 詳しく聞いたところによると、まず風紀委員会と生徒会には先生たちによる推薦で数人だけが入れられる。その数人は全員が元々、この高校の附属中学出身とのこと。

 そして半年ほど経ってから、公表される結果や普段の態度から生徒会と風紀委員会の推薦が決められるらしい。推薦された生徒は部活を続けるか、推薦を受けるか、選択するというモノらしいが、大抵の奴は部活を辞めてそちらに入るらしい。

 そんななかで、他を引き離して優秀な成績な遥を生徒会が直接スカウトした。つまり、それだけ優秀だと認められたということになる。


「まぁ、そんなわけで入学してすぐに色々と注目を集めて、ファンクラブが作られたってことになるな。」


「遥ちゃんは生徒会でも頑張っているし、すごく人気があるから。」


 今の話を聞いて思い出したんだが、俺がどっちに入っても注目を集めるってことだな。


 かなり嫌な予感がする。しかも、どうやっても避けられそうにないことらしい。あんまり注目を集めたくなかったんだがな。

 昼休みは四人で楽しく過ごしていたが、最後まで続かなかった。

 遥の端末が新着メッセージが届いていることを伝えていた。


「あっ、生徒会から連絡がきてる。」


「生徒会よりの連絡だ。天宮くんを放課後に生徒会室に連れてきてくれ。風紀委員会と生徒会についてお話があると伝えてくれたら、ついてきてくれる。」


 遥が開いた端末からはそんなメッセージが入っていた。三人の冷たい目が俺に突き刺さる。主に遥からの視線が怖い。視線だけで人を殺しそうだ。


「今日の朝に集められたのはそのためか。蓮、どうして朝に会った時に言わなかったの。」


 怖い、まじで怖い。下手なことを言うと殺される。

 周りに助けを求めるが、二人とも首を横に振る。俊介は楽しそうに、メイ(下の名前で呼んでほしいと言われた)は申し訳なさそうに断られた。


「えっと、サプライズ?」


「死にたいの、蓮。蓮が自殺志願者だとは思わなかったけど。」


 右手を用意しながら笑顔の遥。メイは俺たちを見ながらおろおろとしている。次に冗談を言った時は消されるな。


「冗談だ。正直に言えば、考えている途中だった。自分の実力を他人に判断されるのは好きじゃないんだ。俺の実力を実際に見て判断してもらったなら引き受ける。」


「俺なら遠慮なく引き受けるな。」


「私もせっかく推薦もらったら引き受けます。」


 二人とも納得できないという表情をしているが、遥だけは気付いたらしい。さすが本年度の最優秀生徒、気付いたか。


「ちょっと待ちなさい。実力不明でって、どうやって編入してきたのよ。」


「筆記だけやったら、合格判定が届いた。」


「はい。」


 三人とも驚いている。当然だろうな。ここの入学は実技も込みだ。編入試験もそれは変わらない。

 しかし、俺はいわゆる裏口入学だ。軽い筆記だけで入学許可された。風紀委員会や生徒会に入れば情報は入るだろうが、そこの規則に縛られる。それは避けたかった。


「まぁいいわ。今のところは見逃してあげる。次は隠し事なしだからね。」


 遥がそう言ったおかげで二人とも引き下がってくれた。

 しかし、どうするべきか。情報は欲しい。けど、俺はあまり表に出られる人間ではない。でも、至上主義を倒すにしても、夜などに自由に出歩きたい。





 放課後までの時間は後少し、それまでに結論を出さなければならない。


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