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第二話 歓迎会

更新遅れてすみません


 side天宮


 歓迎会は近くのレストランで行われることになった。

 すぐさま先輩たちは貸し切りにするように予約をし、授業が終わって放課後の業務もそこそこで、全員でレストランへと繰り出した。

 来ているのは、生徒会の教師推薦組を除く全員と今日の放課後に会議があるはずの橘先ぱ・・・・・・、


「って、今日は警察との合同会議でしたよね、橘先輩。」


「あれなら、副委員長たちに一任しておいた。最近の警察は神龍のガーディアンといったら、私みたいになっているからな。

 もうちょっと他の奴にも頑張ってもらわないとな。」


「という言い訳でサボったの。」


 遠井先輩が音もなく、橘先輩の背後に立った。

 橘先輩の顔にうっすらと冷や汗が出ているのは見間違いではないだろう。先ほどからアイコンタクトで、俺に説明するように促している。


「遠井先輩、今日の会議は先日の問題ではなく、各学区に対する警備の問題です。

 例の区を除いた部分でもあるので、今回の会議は橘委員長とは直接の関係はありません。

 どちらかと言えば、俺の方が出席をしないといけないものです。」


「まあまあ、今はそういうのはなしで、楽しみましょう。」


 嵯峨会長は二人の間に入った。この人は思いっきり楽しむ気でいるよな。歓迎会についてもこの人から話を始めていたし。

 真木先輩だけは総部会の用事で欠席すると、事前に連絡したらしい。

 遥は観月先輩と二階堂先輩と何やら話している。

 嵯峨会長は橘先輩と遠井先輩の間に立って、二人の仲介をしていた。


「先輩、今から向かう店ってどんな感じの店なんですか。」


「普通の店よ。ただ代々、生徒会の歓迎会はそこでやっている、ってだけ。」


「そうですか。」


 だから、俺は生徒会ではないですから。俺が所属しているのは風紀委員会ですよ。

 そう言いたくなるのを抑えて、会長の言葉にうなずいておく。


「あっ、ここよ。」


 看板を見ると、何やら英語で書かれているが、俺には読めない。


『TIBERIA』


「あれで『ティベリエ』と読むらしい。ここの店長が適当につけた。」


 二階堂先輩が隣に来て、読み方を教えてくれる。


「変わった店長ですね。」


「まぁな。腕だけは良いから楽しみにすればいい。」




 ティベリエ 店内 side天宮


「来ましたよ、店長。いつものやつでお願いします。」


「よく来たな。そいつが新しい役員か。」


「はい。いつもは風紀委員ですけど、手の空いているときは生徒会も手伝ってくれますから。」


「歓迎メニューでいいんだな。」


「はい、おまかせします。」


 会長は店長と手早く会話をすると、席に着く前にある物を取り出した。

 見た目はただのくじに見えるが、いったい何をするつもりなのか。


「これで席を決めます。万里、唯、観月ちゃんに二階堂くん、遥ちゃんに私に蓮くん。七人いるので、片方は三人、もう片方は四人って具合に。」


 会長の差し出したくじを遠井先輩から引いていく。二階堂先輩と観月先輩は何やら祈るようにくじを引き、会長以外の全員が引き終わる。


「蓮は何番だった。」


「うん、6番みたいだな。」


 遥はくじを見て、良し、と手を握った。


「万里は4番、唯は3番、私が2番だから、二階堂くんは。」


「1番です。」


「二人は。」


「5番です。」


「私は7番です。」


 遥は5番、観月先輩は7番になったらしい。観月先輩も良しっとばかりに手を握っている。


「1番から4番はこっち、5番から7番はそっち側に座ってね。」


 会長の言った通りに全員が席に着くと、店長が料理を運んできた。

 二階堂先輩は悔しそうにこちらを睨んでいる。なんでそんなにこっちに座りたいのかわからない。

 店長が運んできた料理はイタリアン料理だった。

 何種類かのパスタとピザが運ばれてくる。見た目も美味しそうだし、匂いもいい。確かに期待できそうだ。


「それじゃあ、蓮くんの生徒会所属を祝って、かんぱーい。」


「かんぱーい。」


 全員が運ばれたジュースを近くの人にグラスをぶつける。さりげなく俺が生徒会にされていた気がするが、もう気にしないことにしよう。

 料理の方はかなり美味しいと言えるモノだった。


「マスター、相変わらずいい腕しているわね。うちの寮でシェフやりませんか。」


「女子寮ってところには惹かれるが、遠慮させてもらおう。」


 嵯峨会長とティベリエのマスターが軽く冗談を交していると、二階堂先輩が俺に話しかけてきた。


「改めて聞くが、天宮はどういう魔法系統の使い手なんだ。西洋魔術か精霊魔法か。」


「主に西洋魔術ですね。陰陽道はあまり俺には合ってないみたいです。」


「会長は陰陽道の名家でしたよね。」


「えぇ。万里は仙術も使えるのよね。」


「ただ使えるだけよ。実用レベルにあるわけではないわ。」


 耳慣れない言葉を聞いて首を傾げる。遥や二階堂先輩もよく分かっていないようなので、俺は代表して聞いてみた。


「仙術ってなんですか。」


「一応三大魔法の一角よ。

 西洋魔法、精霊魔法もこの中に含むわ。他にもいっぱいあるけど、説明する時間もないし今回は飛ばさしてもらうわ。

 次に中国魔法、道術や仙術が含まれるわ。陰陽道もここから派生したモノと言われているわね。

 最後に日本の神道、神の力を借りるモノよ。みんなも知っていると思うけど、代表なのは巫子とか、神社の関係ね。」


「そうなんですか。」


 それなら聞いたことがあった。

 俺は西洋魔法以外は得意ではない。日本の神道にしろ、中国魔法にしても術式から西洋魔法とは全く違うのだ。


「そんな話もいいけど、料理は冷めちゃうから、早く食べましょう。」


 会長が魔法談義を打ち切って食べ始めると、周りもそれにならって食べ始めた。


「ちょっと、蓮。これ貰っていい。」


 遥は俺の許可もとらずにパスタを自分のフォークに絡ませて口に運ぶ。

 そんなに食べたかったなら、始めから自分で頼んでおけ。


「おい、言いながら取るな。俺に拒否権はないのか」

「あるわけないじゃない。当たり前のことを言わない。」


「当たり前なのかよ。」


 俺が呆然としていると、観月先輩が俺の皿に分けてくれた。


「私は小食だから、遠慮しないで食べてください。」


「ありがとうございます。」


 観月先輩に分けてもらうと、何故か遥が不機嫌そうにこちらを見ている。


「良かったね。」


 口ではそう言っているが、全く良かったようには聞こえない。

 前では二階堂先輩が悔しそうな顔を、嵯峨会長と橘先輩は楽しそうな顔をしており、遠井先輩だけは表情が読めなかった。


「ねぇ、蓮くんって、外から来たんだったわよね。今の外って、どんな感じなの。」


 突然、嵯峨会長から俺に話をふってきた。


「やっぱり魔法使いにとって生きにくいと思います。大半が一般人ですから、魔法犯罪もそれなりに多いですし、取り締まれないので魔法使いが恐怖の対象になっている街もありますから。」


「やっぱりか。」


「こうなり始めたのはこの都市ができてからですよ。全国の魔法使いの卵を集めて英才教育を施す。

 そのせいで、この国の魔法使いはほとんど都市か首都にいますし、地方警察には魔法犯罪を取り締まれる戦力がまるでないんです。」


 しかし、この国が考えていることも分かる。資源も乏しいため、少数精鋭にならざるをえないのだ。

 ただでさえ西には世界最大の人口を持つ国と北に最大の領土を持つ国があるのだ。この国が優位に立とうとするならば、一人でも多くの優れた魔法使いを生むしかない。

 問題はそれだけではない。大抵の魔法使いは警察に入ることの方が稀なのだ。


「そんなことよりも、俺に魔法都市のことを教えてください。まだよく分かっていないところもあるんで。」


「神龍は魔法学校としては現在トップだ。この都市における魔法の最大行事、魔法祭こと、五芒星祭(ペンタゴン・フェスティバル)では四年連続で総合優勝しているからな。」


「今までの最高記録は四連覇だ。つまり私たちは新記録に王手をかけている。今年だけは負けられんよ。」


「蓮くんも主力として出てもらうことになると思うから。」


 俺の歓迎会はこの後、一時間ほど続き、解散することになった。






 今、道路を歩いているのは俺と橘先輩の二人だった。遥は観月先輩と遠井先輩が一緒の道順で、二階堂先輩と嵯峨会長は別らしい。

 橘先輩は俺と同じ方向に用事があるということなので、一緒に帰ることになったのだが。


「なぁ、後輩。」


「なんですか、先輩。明らかに先輩狙いみたいですから。逃げて、いえ助けを呼びに行ってもいいですか。」


 俺と橘先輩は柄の悪い連中に囲まれていた。全員が下品な笑顔を浮かべている。正直に言えば、こんな前時代的な人間がまだいたことが驚きだ。


「ちゃんとスティックを持っているなら協力しろ。後始末が大変なんだ。」


「分かりました。」


「『起動(アウェイク)』」

 スティックを起動させ、刀の状態にする。橘先輩も起動をしていない。


「私の流派は無手なんだ。雑魚にそんな物は必要ない。」


 結局、不良たちを倒すのは数分もかからなかった。この不良たちは魔法使いではなかったらしい。


「魔法を使わずに済んだのはありがたいな。厄介な調書を書く必要がなくなった。」


 たとえガーディアンでも、街中で魔法を使えば警察に状況を説明しなくてはいけない。

 不良たちを警察に引き渡すと、再び帰路に着いた。


「おっと、ここだ。また明日だ。」


 そこは今日風紀委員会が集まる予定だった場所だ。サボっていることも多いが、やっぱりトップとしての自覚を持っているらしい。

 俺は先輩がどこかに行くと、適当に食材を買い込んで家へと帰った。




 ??? side??


 暗い部屋には私と上司しかいなかった。


「例の計画は『神龍の交流会』に仕掛ける。お前にも重要な役割がある。」


「はい。」


 馬鹿げた計画だ。魔法使いである私たちとただの一般人が交流するなど、頭がおかしいとしか考えられない。


「お前は私にさえついてこればいいんだ。私だけが居心地のいい場所を君に与えることができる。」


「はい。」


 この方との出会いは私にとって、幸運な出会いだった。傷ついた私を迎えてくれたこの方のためにも、私は全力を尽す。


「では君は一回帰りなさい。くれぐれも我々のことは悟られてはならない。世の中の愚か者は我々の正義を理解できないのだから。」


「了解しました。」


 私は一礼をして、部屋から出る。


「愚かな一般人たちに裁きの鉄槌を下す時がきた。」


 あの時の行為を後悔させる。そのための障害は例えどんなものでも叩き潰す。




 side??


「くっくっ、愚かな娘だ。」


 近くにある電話を取って、目当ての番号にかける。

「例のモノの用意は進んでいるか。計画は『神龍交流会』にて実行される。精鋭を選んでおけ。」


 捨て駒の信者たちは集まった。しかし、使い捨てにはあの娘は惜しい。あれだけは我がモノにさせてもらおう。


「。偽りの幸せに溺れるがいい。真なる絶望を味わわせてやろう。」


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