龍さん
『迷子……だと……!?』
「はい、そうです。」
『いやいや、どこでどのように道を間違えればここにたどり着くと言うのだ!ここは大陸の果ても果て、標高9000mを超える魔王山の頂上だぞ!』
そんな事を言われましても、実際迷子になってたどり着いたのだから仕方ないでしょう。うーん、どうやらエベレストを超える山の単独登頂に成功してしまったみたいですね。
話を聞くと、どうやらこの大陸は西へ行けば行くほど標高が高くなっていくらしく、人族が多く住む方向とは逆に来てしまったようです。
『とはいえ、お主は運が良い。このまま三キロほど行った所に、魔族が昔使っていた転移陣が残っている。それを使えばヒトの街の近くの草原に出られるはずだ。』
それはありがたいですが……
「これって仲間になってくれるパターンじゃないんですね。」
『誰が初対面の輩と仲間になぞなるか。』
「笛をくれて、3つ吹くと来てくれたりもしないんですね……。」
『それが何かは知らんが、それ以上詳しく言ってはならん気がするぞ。あと、そんな事はしないと言っておる。』
「ツンデレですか?」
『常識という。覚えておけ。』
残念ながら龍さんは来てくれないみたいです。
僕はまた一人で異世界の街へと足を進めることにしました。
一つ吹くと子供が、二つ吹くと奥さんが、三つ吹くと……おっと、誰か来たようだ。