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いきなり迷子
2ヶ月が経ちました。未だに街は見えません。
「あれ?何で僕は山の頂上に居るんですかね?」
いつの間にか山を登っていたようです。前々々々々々々々世くらいに人間だった頃の方向音痴を引き摺っているのでしょうか。
「だとしたら深刻ですね。死んでも治らない方向音痴なんて。」
そもそも雲より高い場所を幼児が歩いていることがもっと深刻なのかもしれませんが。
『お主、此処が誰の縄張りか分かった上で来たのであろうな?』
と、突如右斜め後ろやや上から声をかけられました。いや、それは変です。今、僕は山の頂上に居るんです。なぜ上から声が聞こえてくるんですか。
振り返ると、そこには赤紫の鱗を持つドラゴンが油断の無い瞳をこちらに向けていました。そうです。ドラゴンです。西洋龍です。前肢の無い劣化竜のワイバーンでも無い、ドラゴンです。数千年もの年月を生き、無敵の強さを手に入れる、ドラゴンです。するべき事は一つしかないでしょう。
「すいません、ここから街はどっちですか?」
『へ?』
ドラゴン
『なんだこいつ』