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日記のような物語(ダイアリーテイル)  作者: ミハヤ
「王と  」
9/129

「影絵の鴉」 その5


「特にこの子がですね」


「うん、わかるわかる!」

静かな喫茶店に、二人の声が響き渡る


・・・・まぁ、僕と仁の声なんだけど


仁が穴場と言う喫茶店で二人、 マスターを除いたら本当に二人しか居ない  大好きなライトノベルについて語り合う


「僕はあの紫のケモ耳幼女が好きだなー」


「えー、ボクはあのアイドル神さまの方が好きなんですがねー」


「確かにあの子もかわいいよねー!」


・・・・誰かと好きなことを語り合う そんなことがこんなにも楽しいことだとは知らなかった

思えば、ずっと、ずうっと一人でいたから、誰かと話すことなんてほとんどなかったからな・・・・・


「それでですね・・・・・・   どうました?」

僕の考えていた事を感じ取ったのか、怪訝な顔をして仁は尋ねてくる


「いや、別に それより・・・・・・」

と、取り敢えずはぐらかしといて会話を再開仕様とした時、


「キャァァ――――――――!!!!」


「んぇ!?」

急な悲鳴に思わず飛び上がってしまう


誰かの悲鳴が店内に響く いや、これは外か?

「何ですかね・・・・・ 外に出てみましょう」


「え、あ、ちょっと待って!」

僕の返事も待たず駆け出す仁を追いかける


そして、仁と一緒に店の外へ出てみると、

「ん、あ、え? な、何? あのへんな生き物!?」


町中に真っ黒なキウイみたいなやつがうじゃうじゃといた

そのキウイは、時には人、あ、人じゃないんだっけ まぁとにかく! 手当たり次第に襲い、周りに在るものを壊していった


「何、あれ・・・・・・?」


「・・・・・・クロウ?」

ふと、ぽつりと仁が呟く


「何か知ってるの、仁!?」

と、聞いてみるも


「何故シルエットが町中に?」


「・・・・おーーーーい?」


「しかも何故集団個体のクロウといえどこんなにも大量に」


「おーーーーーーーーーい??」

顔の前で手を振ってみるも、反応は無い


あ、これは完全に考え込んでるわ


仕方ない、仁なら放っておいても大丈夫だろう 何せ吸血鬼なんだし


街の者たちには悪いけど、僕は隠れさせて・・・・・・

と僕が逃げようとした時ふと、頭をよぎる


街の者たちを助けないのか、 と

「た、助けてくれー!」


やけに胴体が長い男性が悲鳴を上げて逃げ惑う

「ギシヤヤァァァァァlaaaa!」


その男性を追いかけるキウイ


今仁がポツリと呟いたことを聴けば、クロウと言うらしいが、

そいつからみんなを助けな

「くだらない」


ふん と、その思考を鼻で笑い、一蹴する


助ける? どうやって?


こんな幼女の身体でどうやって?

そもそも、助ける意味などどこにある

所詮は他人、助ける義理も、ましてや助ける意味など無い


そして僕は姿を隠そうとしたその時、

「きゃ!!!」


ふと、転んでしまった獣の耳を生やした少女が目に映る


そして少女が起き上がろうとしたその時、

「guaシャァアァァァァァァアァ!!」


「きゃぁぁぁぁ!!」

少女の上に乗り、少女を押さえつけるクロウ


このままだと、少女はクロウに食べられてしまうだろう


だが知ったことではない 僕は気にせず隠れる


「やめて・・・・・・っ」

少女は恐怖に染まった顔で言う


気にすることではない


「giaaaaaaaaaaaぁ!!」

パカッ と大きな口ばしを開けるクロウ


「いや・・・・・・っ」

そして段々と口ばしが少女に近づく


「いや・・・・・・・・・っっ」



僕には関係ない



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




 僕に、助ける義理など、無い








「グギヤァァァァァァァァッァァァァ!!!!」

ふと、そんな悲鳴のような声で、目が覚めたような感覚を得る


「・・・・・・・・・はぁ」

足を下ろしながら、今の状況にため息を出す


どうやら僕は、無意識に少女に乗りかかっていたクロウに蹴りを入れていたらしい

ふと、呆然と僕のことを見る少女が視界に入る


「逃げなくてもいいの?」

少女に声をかけると、少女はハッ とした顔になって


「あ、ありがとうっ!!!」

おぼろげな足取りで立ち上がり、つまづきながらも走り去っていった


「はぁ・・・・・・」


さて、どうしようか・・・・・


こちらを睨むクロウを見て頭を掻き、ついでに冷や汗も掻いて、考える

敵対視されてしまえば隠れることは出来ない


実はこれは昨晩王さまで実験してみていたのだ

居るのがバレた後、試しにもう一度隠れてみたのだが、全く効果が無かった

まぁ、それはそうだろう


僕は隠れる、隠すだけであって、別に透明になれる訳ではない

要は視界に入らないから分からないだけであって、視界に入っってしまえば隠れるもへったくれもない

つまりは、このクロウと戦わないといけないという状況になってしまった


「・・・・・ちっ、」


戦う? 冗談じゃない 武器も力も無いのにどうやって戦えと?

なら逃げる? それも無理だ こっちは逃げる体力なんて微塵も

「グシャァァァァァl!!」


考えている間にクロウはこっちへとびかかる

「え、あ、ちょ、ちょっとタイム!タイム!!」


思わず両手を前に突き出し訴えるが、もちろん聞いてくれるはずもなく、

「ギシヤアアアアアアアァァァァァlaaaぁぁぁ!!!!!!」


「わ、わーーーーーーーーーーー!!!」

思わず目をつぶって、さらに両手を振る速度を無駄に上げる


「あーもう、どうにでもなれぇ!!!!!!」

そんなことをしているとふと、


サク  という音と共に、手に何かを切り裂く様な感触を感じる


「・・・・・・・・え?」

思わず目を開けると、


「グ ググ・・・・・・・・・・・」

と、息絶えるクロウと、


「・・・・・・え? 何、これ・・・・・・・」

真っ黒になって、クロー状になっている自分の手があった


「・・・・・・これって」

あの時と同じ


そして気づけばいつの間にか自分の手が元の小さい手に戻っていた

「どうなってるの・・・・・・・・」


自分は『隠す』能力じゃ無かったのか?

これって変形させてる? 物事を歪める・・・・・・・

でっち上げる?


「・・・・・・・あ」

もしかして・・・・・・


と、ふと考え事から立ち上がり、顔を上げれば

「あーらら、敵対視されちゃった?」


いつの間にかクロウたちが僕の周りを取り囲んでいた

絶体絶命的な状況、 って、さっきなら思ってたかな


「ま、いいや」

と手を突き出して、クロウたちに言う


「ちょっと実験体になってよ」


「グ・・・・・・・?」

何のことだ? とでも言いたそうなクロウたちを無視して、僕は手のひらの上に鳥を思い浮かべる

するといつの間にか、手のひらに真っ黒な、それこそ影絵のような鳥が停まっていた


そして手をスライドさせる


すると手に停まっていた鳥が最初から二羽いたかのように、一羽は空中に停まっていて、もう一羽は手のひらの上にいる

「・・・・やっぱり♪」


これが、僕の能力の神髄か

じゃ、ちょっとカッコよく決めますか


そして、僕は手を思いっきり薙ぎ払いながら、叫ぶ

「行け! 空飛ぶ(ホログラフィック)影鳥(フライングバード)!!!!!」


薙ぎ払った手のひらから無数の影鳥が現れ、飛び立つ

そして影鳥たちはクロウに向かい、次々とその真っ黒な翼でクロウを切りつける


「グガアアアアaaaaaaaaa!?」


クロウたちはパニックになり、慌てて影鳥から逃げ出す

そしてクロウを追いかける影鳥


「これが僕の能力の神髄か♪」


僕の能力の神髄、それは『偽る』こと


この影鳥(フライングバード)は偽りの鳥、つまりは、『存在しないことを存在させて』作られた鳥だ


「そしてその逆もできる、っと」

逆に今までの『隠れる』ことは『存在しているものを存在させなくして』いたということだ


「ふふん♪」

これは良い能力だ 物の事柄を偽れ———————————————————



『犯人は・・・・』



「・・・・・・・っ!!!!!!!」



唐突に、 ズキン と、頭と心の奥底とが痛む



「っ!!!!!! っ!!!!!!!」



ふと、あることに気付く



「っ!!!! っ!!!!!! っっ!!!!!!」



もしかして、   僕は・・・・・・・・



「っ! っ! っ! っ!!!!!」



僕は、まさかそれを望んでいたのか・・・・・っ?



「っ っ っ っっ っっっ!!!!!」



そんな願いを持っていたのか、お前はっ!!!!!!!!!?






「gusiァaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

「あ」


唐突に現実に引き戻され、間抜けな声を上げてしまう


全く気付いていなかった

いつの間にか、目の前でクロウが大きな口ばしを開けていた


・・・あらら


避けることも出来ない、迎撃することも出来ない

あるのは、ただ、死ぬのみだった


・・・・まぁ、いっか


妙に遅く感じるさなかに思う


別に死んでもいいや こんな醜い僕なんて死んでも

・・・・あぁ、だからか・・・・・・・だから・・・・・・・


そして、クロウの口ばしが届く・・・・・・・・・




その寸前、


「gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaア!!!!!」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


思わずのけぞり、尻餅をついてしまった

目の前のクロウが、急に燃えたのだ


「? ???」


死を覚悟した手前、こんなことになって、頭が回らなかった


と、ふと、


「何やってんだ?」

と、僕に呼びかける声


「あ、じ―—————————」

声の主を見た途端、身の毛が立ち、尻餅をついたまま後ずさりをしてしまった


「っ! 誰!?」

思わずそう言ってしまった


「おいおい、誰とは失礼だな さっきまで一緒にオレとお話していただろ?」

赤いパーカーに首にはヘッドホン

もちろん仁、なのだが———————————


「ま、いいや」

手には短剣、身体が所々燃えて、炎に包まれていた

そして、何より、


「取り敢えず、こいつらを片付けようぜ」

全然違う口調と表情で仁は いや、仁の形をした誰かが言った




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