「影絵の鴉」 その4
「くっそ、どうなってんだよ! 何であの鴉みたいなんはオレたちを襲うんだよ!!?」
町中の悲鳴を聴きながら、叫ぶ
「正確には鴉では無く『シルエット』と呼ばれる、この世界の悪害、正確にはみんながあいつをいじめるから自分もいじめるといった集団的悪意の塊だ 因みにその個体の固有名詞はクロウだ」
「そんな呑気に解説してる暇があるかっ!? あとやっぱ鴉じゃねぇか!? クロウって鴉って意味だろ!?」
「GiシャアアAAAアAaaa!!」
襲ってくるシルエットとやらを頑張ってかわすオレに対し、
「呑気に解説している暇は俺にはあるな」
パチン パチン と音がする度にシルエット、クロウの首が飛んでいく
勿論、シザースが鋏で、何故か刃が届かない距離なのに、首をはねているからだ
「しかし、量が多いな と言うより・・」
と、周りを見渡してシザースは言う
「何故シルエットが町中に居る」
「どうゆ っと、あぶね、 ことなんだ?」
何とかクロウに食われないようにと口ばしから逃れながら尋ねる
「そのままの意味だ シルエットは普通町、言い方を変えれば表に出ない
路地裏で集団暴力をやるのと同じ原理で、シルエットたちは人目が付くところで獲物を襲わない なにせ存在が発覚すれば退治されるのは目に見えているからな
だから町には出ないはずなのだが」
「めっちゃいるんですけど!?」
本当に異常なほどクロウが居る
もうそこら中シザースが首なしに変えた死体だらけなのに一向に減る気配がない
「だがまあいい クロウは数は多いがそれ以外何のとりえも」
シザースの真横をを何かが飛来し、パシャ と音を立てて地面に落ちる
何か落ちた方を見ると、そこには紫で、ベトベトして、そして何か沸騰したみたいにポコポコと音を立てている物が・・・・・・・・
「・・・・・・・毒じゃね? これ?」
「ふむ、一体どうなっているんだ」
驚いて、無表情なので驚いているかどうか判らないが、シザースの手が止まる
そのすきを付いて
「っ、シザー、後ろ!!」
「む」
素早くシザースは後ろを振り向き鋏を閉じる
「giaaaaaaaaaaア!」
そのクロウは、毒を吐こうとしたのか、首が真っ二つになった途端毒が首から飛び取る
「む」
シザースは避けようとするが避けきれず、多少毒を浴びてしまう
「だ、大丈夫か!?」
心配して声をかける
「大丈夫だ そもそも人形の俺に毒など効かない 臓器やもとい皮膚すら無いのだから」
「そ、そうか・・・」
その言葉に安心す
「・・・・・身体、溶けてるぞ?」
「む」
ふと、シザースの身体を見れば、毒が付いたところが少し溶けている
「すまない、大丈夫ではなかった だがこれくらい、活動には問題無いし、直すことレイ後ろ」
「は?」
唐突に後ろと言われて後ろを振り向く
そこにはもう既に毒を吐いたクロウが居た
「あ・・・・・・・・」
時すでに遅し
この距離では避けることも出来ず、反応することも出来ず、ただただ毒の飛来を眺めるだけだった
あ、オレ死ぬんだ ロスト、どうしよう?
そんなことを思っていると遂に、毒が体に付着する
「レイ!」
そんなシザースの少し感情が入った叫び声が聴こえる
ぬめぬめとした感触、だが不思議と痛みは無かった
毒って、痛みは無いんだな・・・ それとも感覚がマヒしてるだけか?
そんなことを呑気に思っていると、
「クギシヤヤヤヤヤヤヤ!!!!」
目の前の、オレに毒を吐いたクロウが、溶けだし、のたうち回り、死んだ
「・・・・・・・・・・は?」
全てが、シザースもクロウも、町全体が止まったような沈黙の中、オレの間抜けな声がポツリと出る
「え、あ、あれ?」
取り敢えず、体に付いた毒を手で振り払う 毒の付いていた部分は、無残にもドロドロに溶けて・・・・・・
とかは無く、特に何にもなっていなかった
しれっと毒を手で触ってしまっていたのがだ、特に何にもなっていなかった
「どうなってんだ・・・・・・?」
と、ふとクロウたち皆が固まっている事に気付く
「あ、シザース、今!」
とシザースは少し辺りを見渡し、
「運命切断」
と、謎の技名とともに鋏を振り払うと同時に、クロウたちの首が一斉に飛ぶ
オレは辺りを見渡し、クロウたち全員の首が飛んでいるのを確認してから、
「よし、片付いたみたいだぞ、シザー・・・・・」
シザースの方を見ると、そこにはシザースの、首なしの体と、その足元に鋏と頭が転がっていた
「お、おい、シザース!」
慌ててシザース駆け寄る、すると、
「何者だお前は」
「うぉあ!!?」
足元の頭が喋り、胴体が動き出す 繋がっていないのに
そして胴体が頭を拾う
「俺は今、所かまわずに鋏で切った」
とシザースは頭と胴体をくっ付けながら言う
「無論、お前もだ」
「は・・・・・!」
何でオレも!? ・・・・って、オレも?
「しかし、お前は無事だ」
そう、シザースがオレも狙ったのだとしたらオレは無傷じゃないはずだ
「しかも、何故か俺の首が飛んだ」
と、頭と胴体をくっつき終えたシザースは鋏を拾い、
「もう一度言う」
その鋏をオレに向けて、言い放った
「何者だ、お前は」