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日記のような物語(ダイアリーテイル)  作者: ミハヤ
「王と  」
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「影絵の鴉」 その3


「う~~~~~ん、何というか・・・・・・・・」


「本当に統一感無いね、ここ」

和洋折衷、と言えば聞こえが良いが・・・・


京都に在りそうな和風建築の横にメルヘンなお店があったり、かと思えば古めかし看板のお店があったり、ついでに中国風の中華料理店っぽいところがあったり・・・・・、

とにかく、恐ろしい程に景観がバラバラだった


「ホント景観どうにかならないのか?」


「ならないな」

シザースが肩をすくめながら言う


「何度も言われていると思うが、此処はそうゆう場所だ

皆々の空想でできている場所、そして空想とは一人一人違って見える それはこの景色のように悪く感じることもあれば・・・・・」


と、シザースは 辺りを見渡してみろ とでも言うように顎をしゃくる

「善く感じる事もある」


ふと、周りの人々、いや、人とは到底呼べない者たちも混じっているが・・・・・・

「・・・・・・・いい場所だね、ここ」


そうロストは呟く


普通の人型の者、魂みたいに浮いている者、ケモ耳を生やした者、更にはデーモンと呼んでもいいような大きな怪物まで、

そこには多種多様な者たちが、何もいざこざもなく、暮らしている光景があった


「そうなのか?」

ロストは何か感動している様子だったが、オレにはこの光景の良さは判らない


「そうだよ あっちの世界だと・・・・・・・・・・」


「?」

陰りがある物言いにふと疑問を感じたが


「ところで」

と、シザースはオレを、正確には未だにオレに肩車されているロストを見て言う


「肩車されたままだが、いいのか?」


「あー、もう別にこのままで・・・・・・・・・」

何か諦めたように言っている途中、ふとロストは何かを見つけたのか、


「あ! 降ろして! 降ろして王さま!」

ぺしぺしとオレの頭を叩きながら言う


「分かった、分かったって」


降ろすとロストは一直線に古めかしい和風の店に入っていった

オレも後を追って店に入る


「いらっしゃい・・・・・・・」


周りに人魂っぽい物を浮かせた店主をよそに辺りを見渡してみる

「・・・・古本屋か」


重厚感のある本がある本棚の間を進んでいる中、一冊の本を手に取っているロストを見つける


「わぁー! この本が置いてあるんだー!」


目を輝かせながら本を見るロスト

何かの小説の様だが、オレには良くわからない


「本が好きなのか、ロスト?」


「うん大好きだよ! まぁ、小説限定だけど 参考書とかは読めないけど」

とか言いながらまた別の本を取るロスト


「あ! これあの有名な本じゃん! ん?こんな本は知らないな でもおもしろそうだな・・・

いいなぁ、全部読みたいなー・・・」


「・・・・・しかし、オレたち金なんか持ってないが」

よく考えたら本当に何も持ってないな、オレたち


「そうだよねぇ・・・・・・」

ため息を付き、ロストが本を元に戻そうとした時


「仁に『欲しい物があったら買ってやれ』って結構な額を持たされているが」


その言葉に、ロストはピタっ と止まる

「本当に?」


「本当だ」

シザースは財布を見せながら言う


「因みに何冊でも?」


「結構な額を渡されているからな 何でも買ってやれって意味な」

それを聞いた瞬間のロストの動きは速かった マジで速かった


「これとこれとこれと、ああ、これもいいなぁ! 他に何か無いかなぁ!!」

目の前にどんどん本が山積みに重ねられる


「・・・・こんな量、本当にいいのか?」


「よくないな」


「だよなぁ・・・・・」

いくらなんでも、そんなに買ってはお金が・・・・・


「量が多い 持ち運びに苦労する」


「そっちなんだ・・・・・」

結構仁君大金持ちなのね まぁそりゃあんな館に住んでいるんだからそうか


「仕方ない」

と、シザースはクイッ と指を動かす


「? 何したんだ?」


同胞(にんぎょう)たちを呼び寄せた そいつらに運んでもらう」


「へぇ、遠隔でよびよせれるんだな」


「そうだ しかし」

と、せわしなく、目を輝かせて動くロストを二人で見る


「あぁ、これもいいなぁ え!? 嘘、これもあるの!?」


「人形のパレードが起こりそうだな」

シザースは初めて、表情らしい表情、苦笑いをしてそう言ったのだった






「一杯買ったな」

と、人形のパレード、とまではいかなかったが、沢山の人形が沢山の本をリアカーで引いていくといった光景を見届けながら、シザースはポツリと言った


「あれ、全部読めるんですか?」


「大丈夫でしょ 僕、結構本を読むのは速いし    って」


いつの間にかロストの隣に黒いパーカーを目深に被った少年、仁が居た

どうやらあの赤いパーカーはリバーシブルになっていたようで、赤い裏生地が見える


付いてきてたのか? と訊くよりも早く、


「じ、じじじじ仁、どうした!!!! お前が町へ来るなんて!!!!! ま、まさか何かされたのか!?」

「ボクが町へ来ただけでそこまで驚きます!!?」


顔面蒼白、といった感じで言うシザース

今までも無表情だった時の面影は無く、オーバーな感じで驚くシザース


「て言うか、たまにこっちに来てますよ・・・・・・・」


「まじか」

今度はさっきの顔面蒼白だった表情の面影も無く、無表情でシザースは言う

シザースってもしかしなくても演技得意?


「ところで、何でこっちに来たんだ?」


「ん~、暇、だったから?」

曖昧に仁は言う


「気まぐれだなぁ・・・・・」

ロストが呆れたように言う


「・・・・ところで、そんなにロストは本が好きなんですか?」


「うん まぁ、主に小説やライトノベルだけだけど・・・・・」


「へぇ あ、ならノーフィクションライフって、知ってます?」


「あ、うん! あれ大好き!!」


「ボク好きなんですあの小説」


「マジで!? 僕も僕も!!」



・・・・話に付いていけない



「折角です 向こうの方に穴場の喫茶店があるので一緒にそこで語り合いませんか?」


「うん、いいよ!!」

そう言って歩き去る仁とロストの二人


そしてポツンと取り残されるオレとシザースの二人

「何処か行きたいところはあるか? 何か食べたいとか、何か観たいとか」


「うーーーーん、特に無いかな」


「そうか」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」



沈黙が流れる


取り敢えず会話をする為に何かいいところは無いのかと聞こうとしたその時、

「お前、趣味は無いのか?」


唐突にシザースは聞いてくる

「うーーーん・・・・・・・・無い、かな」


「そうか」


そしてまた沈黙


折角シザースが会話のチャンスをくれたのに、無駄にしてしまった

しょうがないじゃん だって趣味とかないもん


「質問変更」

ふと、シザースの方を見る そしてシザースと目が合う

無機質な、人形のような目と


「この世界に来る前、つまり現実世界でよく何をしていた」


「うーん・・・・」

現実世界、現実世界、でね・・・・・・・・・・


・・・・・・あれ?

「オレ、現実世界で何していた?」


そもそも・・・・・・

「オレ、あの森で倒れる前って何していた?」


あの森で倒れる前の記憶、いくら探しても、いくら考えても、無い

全くない


「ん? 何故だ・・・・・・?」

本当に無い


記憶が無くなった時に使う表現の、もやがかったようにとは全く違う、

表現するなら、そう、


『思い当たる節がない』


「・・・・・・・・まさか」

シザースが何か言おうとしたその時、


「ん?」


視界に端で、()()()()()が横切った気がした

黒毛の動物が見えた方角を見てみたが、そこには何もいなかった


「どうした」


「いや・・・・・・」

シザースの方を向こうとしたその時、



パチン



「ギャァァァァァッァaaa!!!」」

甲高い声が後ろから聞こえた


「っ!?」

思わず振り向く


そこには鴉、と言うには口ばしが長く、身体が大きい

そんな鴉みたいな真っ黒い物が、首が真っ二つになって、転がっていた


「な、なんだ・・・・・?」

思わず後ずさる


「こいつは」

オレとは逆に鴉のような物に近づくシザース


ふと、いつの間にかシザースの手に大きな立ち切り鋏があるくことに気付く


「レイ」

無表情に、だが緊張感が乗った声で、シザースは言う


「まずいことになった」

ふと、視線を感じて周りを見れば、鴉みたいな者たちが、オレたちを取り囲んでいた・・・・・・


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