「無名の人間」 その1
「うーん……?」
木、木、木、木
何処を見ても木の中、いや森の中を一人さ迷い歩く
何故こんなことになったのか、それはオレにも分からない
何故か一人、森の中をさ迷うという異世界ものでは結構べたそうな展開の中、森をさ迷い歩く
「本当に何がどうした事なんだ?」
せめてここがどこか分かる人がいれば……
何て思いながら歩いていると、
「お、」
少し遠くに人影が見えた
「あの人に聞いてみるか」
少し小走りにその人影が見えたところに向かう
「あのー、」
人影に近づき声をかけようと———————
「………」
人影かげに近づとそれは人影だった
人ではない、人影
冗談のように真っ黒で、手がクロー的な形で、いかにも敵キャラっぽい、人の形をした、文字通りの人影だった
と、人影がこちらに気づき人影と目が人影に目など無いが、合う
「……………………………」
「 」
一瞬の沈黙の間、そして、
「……やっべ」
後ろを振り向いて全力で逃げた 本能が逃げろと言っていた
何だよ、何だよ! 何だよこいつ!!
ちらりと後ろを振り向くと、人影は追って来ていた
「一体何なんだよ!!」
いきなり説明無しの森スタートからの敵エンカウントで死にそうだとか小説だったら読者付いていけないぞ!
そんなことを思いながら走っていたせいか、
「おわ!」
木の根っこにつまずいて転んでしまった
「いてて…」
慌てて立ち上がろうとしたが、
「っ!やべ!」
いつの間にか目の前に既に人影がいた
人影がそのクロ―のような手を振りかぶり、オレを裂こうとする
やっべ、殺される!
思わず、意味は無いと思うが頭を庇い、目を閉じる
そして、
チャキン、と何か鉄がこすれるような金属音
その後引き裂くような痛みがオレを……
「…………?」
襲って来なかった
恐る恐る目を開けると、そこに人影はいなった
代わりに、
「大丈夫?」
白い、いやどちらかと言うと銀色の髪に赤い椿のような飾りのついた簪、そして桜の花びらが描かれた和服を着た少女が、身長とは不釣り合いな日本刀を持って、桜の花びらが舞い散る中、
そこに立っていた
「ははは! それは災難だね!」
魂桜 刹那と名乗った少女の後を追いながら、オレたちは森の中を進む
「災難ですむレベルじゃないだろ……」
この子が助けてくれなっかったらどうなっていたことやら……
「……? どうかしたか?」
ふと、刹那がこちらをげしげしと見つめている事に気付く
「ん? あ、いや、人間がここに迷い込むとは珍しいなって」
人間が、って……
その言い方だとまるで人間が遠い昔絶滅した見たいな感じがするが
……あー、そうかそうか
「成る程ね、ここってガチのエルフやらドラゴンやらがいる異世界なんだね」
異世界って、お前何処から来たんだよ 的なことを言ったらここは異世界だと確信しようとしたが、
「うーん… 遠からずも近からず、って所かな……」
何か、妙に曖昧な返事だな……
「ま、詳しいことは」
と、いつの間にか森を抜け、
「ここの館の主に聞いてね その方が良いと思うから」
少し古ぼけているが汚くはない、そんな大きな館がそこにはあった
「知ってるかもだけど、ここの館の主、『最悪の吸血鬼』仁は吸血鬼と―————————」
…………
「そのために仁には悪い噂ばっか出てるんだけど————————— って、聞いてるの?」
「ん? あ、あぁ……」
正直聞いている余裕は無かった
その館の光景は異常だった
いや、風景はただの豪華、いや豪華と言うほどでは無いが、館で特に変わったところはない普通の館だ
何人ものメイドが、窓を拭いたり、話し合っていたりしているのも普通
小人のように小さいのと浮いているのを除いて 更に話しに音声的な言葉は無くジェスチャーだけなのも覗いて
「……なぁ、さっき人間が珍しいって言ったのって、ここが妖精の国だからか?」
ならここガチ異世界じゃね? 当たらずとも遠からずって言うか思いっきり当たってんじゃん
あぁ、そうゆうことか と、笑いながら刹那は言う
「ここは妖精の国じゃ無いし、あの子ら、叛軍人形は妖精じゃなく人形なの」
「いや自立して飛んでる時点で一緒なんだが……」
やっぱり異世界だ、ここ
「まぁ、何度も言うけど、」
と、たどり着いたのは一際重厚感のある扉の部屋の前
刹那はその扉を開ける
「こいつに聞いてね」
その部屋は………… これはこれで異常だった
薄暗い部屋の中、少し大きめの画面三つのデスクトップパソコンの前でゲームをする少年
部屋を見渡すとPPPやら、ミーテードースイッチやら、山積みのゲームのカセットやらがあり、外見の古風な館にも、ファンタジーな人形たちにも似合わない、現代の部屋が、そこにはあった
「ここ、世界観がバラバラじゃね?」
思わず、そう呟いてしまった
「そりゃ、ここはそうゆうところですから」
と、少年は椅子をくるりと回転させ、こちらに振り向く
「…………っ!!」
ゾクリ としたのは気のせいではないだろう
「ようこそ、願望が集まった、理想とは程遠い理想郷へ」
何せ少年の笑みは、
「歓迎はしないよ」
人影に出会った時よりも恐い、何かがあった