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日記のような物語(ダイアリーテイル)  作者: ミハヤ
「王と  」
18/129

「偽るは城壁の道」 その8




・・・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別に




別にどうでもよかった


少年が一人、暗い部屋でただ二人、そこには居た

周りの事なんてどうでもよかった


別に、罪を擦り付けた子を責める気はない 信用してくれないクラスの人達を、親を怨む気も無い

ただ、ただオレは守りたかった ただ、それだけだった

ただ、ただ僕は侵されたくなかった ただ、それだけだった


自分の王国を 自分の拠り所を


ただただ奪われたくないだけだった


静かに本を読む時間  五月蠅く演劇を楽しむ王国


オレはそれを守りたかった

僕はそれを楽しみたかった


だけど、それは奪われてしまった


その代わり、無慈悲な噓つき(偽造者)と言うレッテルと、僅かに(あら)がった後が残る部屋(王国)は残った


なら、もうそれでいい それだけでいい

なら、もうそれでいい それだけでいい


それだけでいいって思っていた


オレはそれで良いと思った

僕はそれでは良くないと思った


この世界を知らされるまでは


オレは願った——————————————————————————

僕は願った・・・・・・・・・・・・・・・・・


『                     』と、

                       と、







「っ!! はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・・・・」


それはロストの息、いや、オレの息? ・・・・いや、どっちもか

二人して目覚めた途端荒く呼吸をしていた


「・・・・・・・・ひどい顔だな、ロスト」

辺りは暗い 寝た拍子にロストの企業秘密の何かが解けたのか辺りは真っ暗で、辛うじてロストの顔色の悪い顔が見えていた


「・・・・・それはお互いさまでは?」

そういわれて、ふと自分の顔を撫でてみると大量に汗をかいていた


「お風呂に入りたいね」

ロストも自分の顔を撫でて、大量の汗に苦笑いを浮かべて言う


「そうだな」


取り敢えず顔の汗を、拭く物が無いので服の袖で拭きながら思う


「・・・・・・何か、悪い夢を見ていた気がする」


「奇遇だね、僕もだよ」

ロストもオレに習ってタオルで汗を拭く


「って、どっから出した、そのタオル さっきまで持って無かったよな?」

お互い一張羅な上にバックの一つも持って出て無いのでそんなものがある筈が無いのだが・・・・


「偽造で、いや現像の方が正しいかな? 現像を偽造して作ったの はい、王さまの分」


「お、おう ありがと」

仕組みは良く分からないが 取り敢えず受け取って汗を拭く


「ところで、王さまはどんな夢を見てたの?」


「え? うーん・・・・・  何だったかな・・・・・・・?」

良く思い出せ無い 何か、暗いところで誰かが何かしていたような・・・・・


「それで、ロストの方はどんな夢だったんだ?」


「夢を見てた」


「いやそれは知ってるから・・・・・」


「夢を、見てたの」

その視線はどこか遠くを、此処には無いどこか遠くを見ている様だった


「・・・・・・・ロスト?」


「ん?  あぁ、何でもないよ」

オレの言葉に我に返ったのか、ロストは照れ隠しのような笑みを浮かべる


「・・・そうか」

オレも深くは掘り返さないようにする  と、


ぐぅ~~~

「あ」


そう言ったのはロスト お腹を鳴らしたのもロスト

ソフトに腹パンされたのは絶対に照れ隠しだろう


「そういえば昨日夜食食って無かったしな てか昨日なのか? 今何時なんだ?」


「丁度太陽が昇り出した頃だね」


「へぇ、ロスト、良くわか」

唐突に ガバッ と振り向くロスト


「? どうした、ロスト?」

暗闇を睨むように見つめるロスト チラリとこちらを見たときはどうして気付かなかったのだと睨むような目線だった


「そりゃ、気付かないでしょ ボクらみたいにレイは吸血鬼では無いのですから」


「な・・・・! 仁!?」

何!? もう見つかったのか!!


「・・・・・・君にもそんな冗談が言えるんだ」


チラリとオレの目を見ながらロストが言った途端、視界が真っ暗なのに明るくなった

ロストがまた企業秘密を使ったのだろう


そして見えた光景は沢山と岩々と、苦笑いだが警戒気味のロストと、

「何時からそこに居たの? シザース」

無表情のシザースだった


同胞(レギオン)がお前らを見つけたのが二時間前、俺がここへ着いたのが一時間半前だ」


「割と前から居たんだな・・・・・」

全く気付かなかった 角度的には思いっきり真正面に居たのに


「・・・・・・・仁はどうしたの?」

油断ならないように辺りを見渡しながら言うロスト


「まだ伝えていない」


「・・・・・どうゆうこと?」


それはオレも同感だった

普通ならもう仁に伝える、もしくはオレらを捕まえてもいい物なのだが・・・・


「ま、その前に」

と、シザースは背負っていたリュックサック降ろし、ファスナーを開けながら言う


「取り敢えず持ってきた林檎(リンゴ)でも食べ」

「ふぉへへ、ふぁんふぇひふぁふかっふぁふぉ?」(それで、何で言わなかったの?)


「早いな」 「早ぇよ」

いつの間にか林檎をロストは持っていた

全く見えない程にくっそ速かった

シザースにも見えなかったようで、視線をロストとリュックサックを行ったり来たりしていた


「それで、何故仁に言わなかったかだが、」

と、目の前で起った神速劇は一旦置いといて、シザースはオレに林檎を投げつけて言う


「特にない」


「無いのかよ・・・・・・・」

林檎を受け取り、皮ごとかぶりつく 

甘い、と言うよりかはほのかに甘苦かった まだ少し青いのだろうか それともまだ旬じゃ無いのか?

林檎の旬の時期っていつだっけ?


「むぐ、意味の無い行動?」

林檎が苦かったのか、それともシザースの言葉が苦かったのか

「そんなの、シザース(人形)らしくない」

苦々しい苦笑いを消すためだろうか、再び林檎にかぶりつくロスト


「仁にも似たような事を言われた」

無表情に肩を竦めるシザース


「まぁ、強いて言えばお前らと少し話しがしたくてな その為に一時間半も待った

一時間半も待っていたのはお前らがうなされていたから起こすのが(はばか)られてな だからお前らが落ち着いた後に声をかけた」


まぁ、確かに悪夢を見た後に追っ手を見たくはないな

その気遣いには感謝だ


「それで、僕らに話したいことって何?」


クイッ クイッ と、手を動かしながら言うロスト 

もっと林檎をよこせという事だろう


「それは」

と、オレ同様ロストに林檎を投げて言う

あ、これは・・・・・・


「特にある」


「無いのかえあるぐっ!」

無いのかよ と言おうとしたが在った事に驚いて え、在るの!? と、言おうとしたが林檎のキャッチをミスり頭にぶつけたことで謎の呪文を詠唱する羽目になってしまったロスト


ナイノカエアルグ

「なんか強そう」


「何がだよ っつつ・・・・・」

頭をさすりながら それでも頭にぶつけても林檎は地面に落とさないようにしていたロストは言う


「で、僕らに話したいことって何?  いや天丼(お笑い用語で『繰り返す』という意味)じゃないよ構えるな!!」


「そうか」

もう一度林檎をオーバースローで投げよとしていたシザース それに待ったをかけるロスト


本当に人形劇みたいなことをするな、こいつ


「一つ、お前に伝えたかった事がある」

ロストの代わりにオレに林檎を投げながら言う


「今度は本気でお前を殺そうとしている」


「初めから殺そうとしてただろ」

と、一回深呼吸をして、

「って、言う意味じゃないよな」

目の色の鋭さを変えてロストは言う


昨日のように、楽しくお喋りをする気は無い、そして今度見つけたら本気でロストを殺しにかかる ということだろう


「・・・・・・・・気づいちゃったかぁ」

出来れば気付いてほしくなったとでも言うようにロストはため息交じりに言う


「気付いたって、どうゆうことだ?」


「そのままの意味だよ  ったく、何でこうも唐突に気付くのかなぁあのゲーム馬鹿は」

と、頭を掻きながらロストは一人呟く


「ま、それならもう選択肢は一択か」

と、ロストは一人歩き出す


「どうする気だ」

その後ろ姿に林檎を投げてシザースは言う


「決まってるだろ」

それを見ずに受け取り、


「仁との殺し合い(ゲーム)だ」


そして林檎を握りつぶ、そうとしていたがロストの握力で林檎を潰すなどという芸当は出来るはずも無く、結局諦めて林檎をこちらに投げる


てか何故こっちに投げたし

そう思いながらも受け取り、林檎を齧る


「・・・・・・・・ん?」

何か変な味がした 齧った後を見てみれば、


「・・・・・・・・・・・・」

ロストが何かしたのだろうか、林檎の中身は血のように真っ赤で、果汁がまるで鮮血のように滴り落ちていた


「夢が続くか、夢に終わるか 王さま、これから始まるのは少々現実の味がある演劇だよ

その血の味がする林檎みたいに」


冗談()に、それでいて緊張感のある声でロストはそう言ったのだった

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