「偽るは城壁の道」 その4
「そういえばここに来て、もう何日目になるのかな?」
「まだ二週間ですよ あ、それとももう二週間ですか? たまに感じますよね、水曜日がまだかもうかどっちか」
「んー、まだ、の方かなー」
パソコンの前で、一人一つの画面で怪物をハントするゲームの協力プレイをしていた
まぁ、協力と言っても、仁が双剣で無双してるので、僕はただ単にデバフ弓を打ってるだけの作業になっているが・・・
「あ、麻痺ったよ」
「よし じゃ後はお任せあれ」
てってててー ててててー
「・・・・マジで早いね」
「これがハメと言うやつだ」
いや決め顔で言われても僕エンジョイ勢だからただただ面白くないだけなんだよなぁ・・・
「やっぱあーんま楽しくないかなハメは」
「まぁタダの効率化ですからねー ・・・・次は裸縛りでもします?」
「それ僕が死ぬ!!」
そんな会話をしていると コンコン と、扉がノックされる
「ロストー? 買い出しに行くが、お前は来るかー?」
声の主は王さまだった
「あ、行く行く!」
仁にコントローラーを投げつけてから扉を開ける
「んじゃ、行ってくるね 仁」
「ええ、お気を付けて」
投げつけたコントローラーを振って仁は言う
相変わらず上手くコントローラーをキャッチするなー
「そういえば、お前と出会って何日になるんだ?」
「もう二週間だよ」
オレとロスト、二人で街へ行くための森の一本道を二人で歩く
まぁ、厳密には歩いているのはオレ一人だが・・・・
「お前、そこ気にいったのか?」
上を見上げてオレは言う
「うん、結構快適」
下を見下げてロストは言う
何故か、この肩車がロストとの移動方法になってしまった
前はオレが肩車しようかと言ったが、最近ではロスト自らが「肩車して!」と言うようになった
「いやー、快適快適」
「・・・そうか」
まぁ、快適ならいいんだが、まぁ、その、
「これ、絵面的に大丈夫か?」
肩車をしようと最初に言い出したのオレだが そして今更だが
「ダイジョブダイジョブ 吸血鬼もどきの幼女は肩車されるって相場があるから」
「何その相場?」
そんな世の中なのか? 向こうは
「あ、ほらほら街に着いたよ」
「はぁー、はいはい」
ため息を付きながらロストを降ろす
此処でロストを降ろすのはロストが恥ずかしがっているから、ではなくロストが単に店を歩き回りたいだけだからだ と、
「あ! ロストちゃん!」
と、狐のような耳を生やした和服の少女、名前を深月と言うらしい、が声をかけてきた
「よっ」
片手を挙げて返事をするロスト
聞いた話しだと、クロウの事件の時に彼女を助けて、それ以来仲良くなったのだとか
「それに、反王さんも!」
「・・・・おう」
どうしても苦笑いになってしまう
刹那とアイスホッグを退治した時のこと、町の近くということもあってたまたまそこに居合わせあ者が居たらしく、更にクロウ事件の時に仁が逃げて行ったのはオレの活躍があってこそ、つまりレイ、いや反王は二度も町の危機を救って下さったのだ!
と言う謎の噂が広まって何故か反王として評判になっていた
「人気者で良かったね、王さま」
「う、うん? そうか?」
何か複雑な気分だ 嬉しい様な、照れるような、うざったいような
「いや良いことだよ有名になるなんて!」
「そうだよそうだよ!」
「深月まで・・・・・」
まぁ、悪い事では無いか
「ところで、今日はどうして街に?」
「あ、そうだった 買い出し買い出し 行こうぜ、ロスト」
「うん」
そう言ってロストはオレの手を握り、二人で歩き出す
「じゃあね、深月ちゃん」
振り返り、手を振るロスト
「うん、バイバイ ロストちゃん」
肩越しに振り返って見れば、深月も手を振っていた
そして深月が見えくなった頃、
「ねぇ、王さま」
「・・・・・ん?」
ロストの方を見ると、ロストもオレの方を見ていた
「ずっと一緒に、ここに居ようね」
ロストに眼、紫色の瞳と目が合う
「・・・あぁ、そうだな」
笑って言うと、ロストも笑う
「ずっと一緒だ」
「うん ずっと、王さまで居てね」
「ずっとずっと、この世界で、僕の代わりの王さまで居てね」
「そのためなら、僕は命も投げ出すから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「随分ロストと仲良くなったね」
仁の部屋、では無く書籍室で仁に言う
レイとロストが来てからと言う物、一人の時はゲームをするよりも本を読むのが多くなった
まぁ、引きこもるのには変わりないが、最近はどこか楽しそうだった
「ええ、中々良い遊び相手です 刹那もあれくらいゲームに関心を持って欲しい物です」
勿論冗談だろう 嫌そうな顔をすれば、仁はくつくつと笑っていた
「しかし、人間一人と謎の吸血鬼が一人入るだけでこうも館の不陰気が変わるとは思いもしなかったなぁ」
ついそんな事を言ってしまった
レイは何かと手伝いを沢山こなしてくれて大助かり ロストは仁の子守をしてくれてわざわざ怒鳴ることも少なくなった
そして人形たちも、シザースも含めてレイに好感を持っているのか、珍しく交友的だった
あの二人が来ただけで館が明るくなった
「・・・・・・・いつまでもあの子らが居て欲しいなぁ」
「あぁ、無理ですよ」
「まあね・・・」
だって、レイは人間だ 人間の寿命は短いだからいつかは必ずし
「だって僕がそろそろ元の世界へ送り返すんですから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
その言葉を飲み込むには時間が掛かった
「ど、どうして? どうしていきなり?」
ようやくでた言葉はそれだった
「半分は危なっかしいから」
「あ、危なっかしい・・・?」
一体、あの子らのどこが・・・・・?
「いやー、特にレイ君が危なっかしいんですよね」
と、本から目を離し、こっちを見て言う
「え・・・、レイの方なの?」
「ええレイ君の方です こんなにも人を変えるってのは危ないにきまってるでしょ」
人を・・・・変える・・・・・?
「も、もう半分は?」
意味が分からず、取り敢えず落ちつくのも兼ねてもう半分を聞いてみることにした
「もう半分は、」
と、背筋が凍るような虐殺的な笑み、最悪の吸血鬼の顔で仁は答える
「秘密だ」
そう言い残してから、再び本を読む仁
・・・・どうしてイキナリこんな事を・・・・・?
そんな事を考えて、そしてふと気づく
どうして、こんなにもレイを庇おうとしてるんだ?
結局答えは出ぬまま、レイとロストは帰ってきた