混乱が招いた混乱 その7
「おー、ユートさんじゃねぇか、いらっ………」
私達を見て一瞬固まる酒場のマスター
「談室空いてるか?」
「あ、あぁ、一応空いてるか……」
見てはいけない物を見るような目の店主
店主には私達の事どう見てるんだろ…… 常連の人の連れを追い返えしてしまってマズイと思っているのだろうか
「あー、ユートさん、別に俺がユートさんの趣味に口出しする気は無いが…… そんなに小さい子が好みなのか?」
「ちげぇよ! 別にこの女の子達をどうこうする気じゃねぇよ!!」
どうやら店主の目にはユートが私達をナンパしたように見えたらしい
そこでロストは、
「大丈夫だよマスターさん、僕たちが乱暴する側だから」
「ぶっっ!!!」
思いっきり噴き出してしまう店主
「おいガキ、お前な……」
「さーて、まず早速何か奢って貰おうかなー♪」
こちらに助けを求めるユート 私はただ苦笑いを返す事しか出来ない
この幼女ホントペースを取るのが上手いな……
「そうかそうか、そんな生意気な嬢ちゃんなら大丈夫だな 悪かったな、さっきは追い出して」
「ま、事実一文無しだし追い出しても仕方ないけどね で、部屋はどっち?」
「あっちの廊下の突き当りだ」
「はーい!」
ユートさんや私を置いて先に部屋へ行くロスト
「………あいつ、あの年でヤバ過ぎないか?」
「しかもあの子影みたいなの操れるんですよ?」
「…………あいつ人間か? もしかしてアイツ新型のイドルとかじゃねぇよな?」
「た、多分人間だと思いますよ? ……多分」
ロストについて分からない事が多すぎで断言は出来なかった
「おー、フカフカじゃ無ーい」
部屋に入ってみると、ロストが少し大きめのイスで遊んでいた
「ま、そんなモンだろ」
ドカッとユートさんは座り、私はロストの隣に座る
「ま、まずは何か食べな」
そうユートさんが言うと同時に店員さんが飲み物を持って来てくれた
私とロストには何かの果実のジュース、結構赤い色をしている為ジュースかどうか判断しかねるが、も持って来てくれた
「凄い見た目してるね…… 血液?」
「ちげぇよ まぁ、確かに血みてぇな見た目してるが、それはブドウの果実を使ったジュースだぜ?」
そう言いながら、ユートは別の飲み物を飲む
お酒だろか、そんな感じの匂いがその飲み物から匂う
未成年でお酒は…… と言いそうになったが、この人は同級生のユウキでは無く、別のユートさんで、似てると言っても年までは同じでは無いかと思い直す
「で、お前らイドルの事知りたがってたんだな」
「うん、聞いた話だとイドルが人間にヘルプ出したけどそれを跳ねのけたせいでイドルの人? 達が怒っちゃってピリピリしちゃったとか」
「……意外と分かってんな、お前 それ単独で調べたのか?」
感心する様にお酒を飲みながらユートは言う
「そうだ、AIの争いに巻き込まれたイドルが俺達人間に助けてくれと言って、そんなめんどくさい事はゴメンだと人間はその要求を跳ねのけたんだ」
「何でイドル達を助け……」
思わず私声を上げて言おうとしてしまう 何故困ってる人を助けないのか、と
だが、私がそう言い終わるよりも早く
「跳ね、のけてしまっちゃったんだよ……」
と、少し笑いながらユートは言う
いや、訂正……
「上のバカどもは、跳ねのけてしまったんだよなぁ………」
は、はは、 と、何処か壊れたラジオのように笑うユート
「あっのバカ貴族どもが跳ねのけちゃったんだよ!!」
ガンと机を叩くユート
思わず私とロストは少しビクッ、と肩を跳ねてしまう
「くっっそあいつらー!! いっつもいっつもめんどくさい事は他人に丸投げしやがって! 俺らがどれだけどれの尻ぬぐいしてると思ってるんだよ!!!」
「「…………‥‥」」
唖然とする二人
「………えーと、愚痴なら聞くよ?」
おずおずと、ロストはそう言うしか無いのであった