混乱が招いた混乱 その6
「………なめてんのかガキ」
ユウキと似ているのに何だかユウキとは違う迫力でユートは睨む
「ちょ、ちょとロストちゃんっ!」
「うん、舐めてる」
売り言葉に買い言葉、良い笑顔でロストは言い放つ
「てめ、良い加減に……」
と、言いながら腰に手を当てるユート
きっと、腰に武器が付いていてそれを取り出そうとしたのだろ
(や、ヤバい……っ)
「ロ、ロストちゃん……っ」
途轍もない不穏な空気についロストの名を呼ぶ
「大丈夫だよシバ姉ちゃん」
そんな私をなだめるようにロストは言って、
「もう、癇癪起こした時点でダメだから」
「え?」
一体何の事だ、と聞き返すよりも早く
「……っち、可愛い見た目して中々キレる事するな嬢ちゃん」
「それはキミがキレるって意味? それとも頭がキレるって意味?」
「どっちもだよ」
負けを認めるように腰に当てていた手を上にあげる
「全く…… 度胸あるな嬢ちゃん、俺が癇癪おこして本当に殺しにかかったらどうする気だよ」
「その時はその時、僕はその場しのぎ作戦派だからね」
そう言って何か分かり合ったように笑うロストとユート
「え、ええと………?」
張り詰めた空気から一転、どうしてこうなったのだろうか
「シバお姉ちゃん、痴漢冤罪の詐欺って知ってる?」
「それは知って…… あ、そうゆう事なんだ」
そう言われて理解できて、ポンと手を叩く
「つまりここでロストちゃんが「イドルに襲われるー!」って叫んだら真っ先にユウ…ユートさんが疑われるって事?」
「その通り」
冤罪痴漢を狙っての賠償金詐欺と言うのが近年良くあるのは知っているだろう
出大勢の電車での中、唐突に誰か男性の手を掴み「この人痴漢です!!」と叫び犯人に仕立て上げ賠償金を貰うと言う詐欺だ
そこまでして金が欲しいかと言う個人的な感想は今は良いとして、ロストはこの詐欺を応用してユートを脅したのだった
「痴漢詐欺になぞらえて言うなら、わざとそれっぽい写真を撮った後、それを見せて「僕の言う通りにしないと痴漢だって言うぞ」って感じかな」
「その、チカンってのは分からねぇが、まぁ、此処で俺が銃なんか引っこ抜いてこんな小さいガキ、しかもちゃんとした人間に銃向けたら即刻逮捕モンだろうな
全く、ホントやべぇガキだぜ」
感心するよに、呆れるように言う
「で、そうならない為に俺はあんたにどうすれば良いんだ?」
「さっき言った通り、イドルについて知りたいんだよ 何てったって、僕ら子供だから」
「てめーいつか『子供だから分かんない』って言うだろ」
ロストが『子供』と言う単語をわざと強調しているのき気付きそう苦笑いで言った後
「ま、ここでは何だ 折角酒場があるんだからそこで話そう 見た目がガキだが案外良い事思い付きそうだからな」
「あ、その酒場今さっき追い出されたばかりなんですが……」
「保護者同伴なら問題無いだろ ジュースくらいは奢ってやると」
「わー、ありがとう! ユートお兄ちゃんっ!」
「………お前に兄貴呼ばわりされると何か怖ぇな」