混乱が招いた混乱 その5
「……で、また酒場、と」
「いや、だって……」
酒場っぽい店の前で二人立ち尽くす
「いや、ロストちゃんの言いたいことは分かるよ? お金無いし酒飲めないし安直過ぎるってのは分かるよ? でも、やっぱり何となくここしか無い気が……」
情報収集と言われてパッと思いついたのがやはりこれだった
「だって酒場だよ? RPG的に酒場が無難だよ?」
「いや、必死にならなくて良いから…… まぁ、僕が丸投げしたのも悪いんだし、一応入って……良いんだよね? 今更だけど」
「だ、だって此処しか思いつく場所が……」
「いや、そうゆう意味では無くて」
ロストは自分の体を見下ろして
「僕明らか子供だけど、こうゆうお店入ってOKなの?」
本当に今更である
「さっき酒場に入ってたよね、ナチュラルに 自称マスターの酒場に」
「いやまぁ、そうなんだけど」
「だったら一応大丈夫だと思うよ」
「う、うーん………」
「ダメでした」
予想通りと言えば良いのかどうか、入った途端「子供の来る場所じゃねぇ!」って言われて追い出された二人
「うーん、元の僕くらいだったら誤魔化せたんだけどなぁ」
「……もう何も言わないからね」
ロストの良く分からない発言はもうスルーする事に決めておくとして、これで思いついたことがすべて無くなってしまった
「一回作戦ダメになっただけで詰みとかどんだけガバガバな作戦なんだよ」
「元々行き当たりばったりなんだから作戦も何も無いんだけどね……」
安請け合いしちゃったかなぁ と今更ながら後悔する
「どうする? アリス達の情報を待って僕らは観光でもする?」
「うーん…… 観光するにしても、責めてここの人達がイドル達をどうしたいかくらいは知りたいんだけど……」
「………お前」
と、唐突に声をかけられる
「は、はい…?」
イドルの話しをしていたので、もしかして何か疑われたとドキッとしながら振り向く
「えと…… 何でしょうか?」
そこには深くフードを被った男性……… ん?
「今、イドルの話しをしなかったか?」
ん? あれ?
「えと、一つすいません」
と、フードの隙間から見える顔を見て、
「あの、もしかしてユウキ?」
何だかガタイの良さそうな妙にがっしりとした体、そして少しキツメの目つき、明らかに私と同じクラスの男子、時杯 優鬼だった
「あ? 俺が『ユート』だ 誰かと間違えてんのか?」
「あ、す、すいません 間違いみたいです」
声や口調も同じなのだが、どうやら別人、他人の空似のようだった
「まぁ、いい それより、お前らさっきイドルの話しをしてたよな?」
「えと……」
助けを求めてロストを見る
「うん、してたよ」
それを見取ってた、元々私に期待してなかったのか、ロストが口を開く
「……お前ら「気にならない方がおかしいでしょ」
ユウキ…… じゃ無い、ユートの言葉を遮ってロストは言う
きっと、疑いを掛けられる前に、言葉に詰まる前に言葉を離したのだろう
お前ら裏切り者か、と聞かれて返答に困る前に
「僕ら子供だから大人たちがイドルの事について聞いても何にも答えてくれないんだよ だから僕たちでイドルの事について調べようって、ね、シバ姉ちゃん」
「う、うん!」
「…………そうか」
少しいかがわし気だが、一応納得っしたようで、
「悪かったな 変に脅しみたいなのをかけちまって」
「ううん、気にしないで」
と、ロストは笑って言う
何事も無くて良かった と、胸を撫で下ろそうとした時、
「脅すのはむしろ僕らの方だから」
「あ?」
ロストは目が笑って無い笑顔で、
「お前が知ってる事全て聞かせろ、勿論お前に拒否権は無い」