ユーザーチェック その5
歯車の街、『アンティーク』は、少なくともあの三人の会話よりも何となく感覚がつかめる場所だった
歯車、歯車、歯車… そんな日常的には見ないであろう光景、だが何処か既視感はある光景
例えるなら…… そう、日本に似た外国の場所に居る気分だった
見た事の無い文字、日本人とは少し違う人、何となく空気の違和感、
それでも一度来た事のある場所、そんな感じだった
「:@-1;」
「え、えと… こんにちわ?」
それと聞いた事の無い言葉 ロボットが手を振ってる動作でギリギリ挨拶なのだと読み取る
「……いい雰囲気だね…」
私は現実逃避気味に呟く いや、事実現実逃避だった
イキナリ知らない所に飛ばされた、は、まだギリギリギリ良い、まだ許容範囲内だ(震
三人が訳の分からない話しをしているのは仕方が無い、問題は……
「…私、何すればいいんだろう………」
どうにも手持ち無沙汰で悩んでいた
何か帰る方法を… と言っても何だかそんな方法は無さそうだと自分の感が言っていた
何せ、私は把握していないが、誰かがこうした理由が『面白そうだから』らしいのだから、逆に考えると『面白い事をすれば良い』、もっとライトノベルのお約束的に言うと、『異世界に来たんだから事件に巻き込まれろ』という意味なのだと推測できる
「事件に巻き込まれろ、とは言っても… まさかクエスト発生のメッセージも、村人の頭にビックリマークが出てる訳でも無いし……」
よく考えると、異世界に飛ばされるってほぼ無人島に飛ばされるとイコールな状態なのに何でそう都合よくやるべき事が見つかるんだろ…… あ、この世界と違ってしっかり神さまはがいるからなか?
何て適当に逃避しながら街を歩いていると、ふと、一つ思うところが
「……そう言えば、人間、見ないね…」
歯車、歯車、歯車、いくら街をふらついていても人間、いや、最早鳥とかの生物すらも見当たらない
「何か…あったのかな……」
どうしても、ロボットとかそうゆうのを見ると想像するのが、映画で良くあるロボットの反乱、もしくは人間が滅びた後の世界というヤツだ
大気汚染の問題で生物が住めなくなったとか、世界平和の為に人間抹殺だとか…
もしかしたら、此処もそんな事情があったりするのだろうか
「そう言えば、さっきここの近くに最先端な場所があるって言ってたっけ?」
何とか理解できていたアリスの会話を思い出す
でも、周りには荒野しか… と思ったが、よく考えるとこのアンティークも唐突に目の前に出てきたので、そんな感じでその最先端な場所も隠されているのだろうか
「此処より最先端… どんなところなんだろう?」
こう… SFチックにガラストンネルの道があって、乗り物は空飛んでて、服は何かピッチリしたやつで、ロボットは人間に見間違える感じ…あの、び~ばっくの人みたいな感じの…
何て適当に思いをはせていると、
「……ん? あれもしかして人かな?」
ふらふら歩いていると、ローブを頭まで被った人(仮)が居た
全体的によく分からないが、少し見える唇辺りのところは思いっきり人間だった
いや、もしかしたら胴体はロボットかも知れない 歯車が沢山かも知れない 腕にサイコガン付いてるかも知れない
とは言っても、こうしていても仕方が無いので話しかける事にした
「こ、こんにちは……」
果たして言葉が通じるのだろうか そんな思いをしながら話しかけると……
「……っ!」
そのローブの人はバッ、と凄い速度で振り向き警戒した様子で構える
「あ、え、えと…」
その様子に思わず戸惑ってしまう
「あの… 人間…です、か?」
「……………」
「ロ、ロボット…です、かね……?」
「…………」
「……言葉、通じてます、か?」
そう言った途端、
パタン と、
「………え、ええーー!!?」
そのローブの人は倒れた
「だっ、大丈夫ですか!?」
私は慌ててそのローブの人に駆け寄り、その人に触れ………
「っっ!!」
びくっ と手を引っ込めた
「……………………」
私は、恐る恐るローブをつまんでめくる
髪は真紅と呼んでいい程に赤い少女、見た目は人間だ 見た目は………
「…………………………」
流石に、体まで確認する勇気は無かった 何せ体を触った時、それは明らかに人間の感触、いや、ギリギリまで人間に似せた感触で、どうしても触れる気にはならなかった