ユーザーチェック その2
「いや絶対こんな至近距離にこんなの無かったよね? もしかしてワープ? もしくは光学迷彩なのかな?」
「………………」
唐突に目の前に現れた街を前に私たちは立ち尽くす
何もない荒野に突如として現れた街は、崖に沿って建てられている為か奥行きが少なく、いたるところに歯車が見えてるところから、何だか時計を連想さしるような街だった
「さしずめ『歯車の街』と言ったところかな」
子供心をくすぐられるのか少し興奮気味にロストは言う
「…ねぇロストちゃん?」
「ん?」
「あの… 何でこんな不可解な建物を見つけたのにそんな平然としてられるのかな? もう、ここ日本じゃないよね?」
この完全に日本には絶対無いギアタウン(仮)を見てからようやくあることに気付いた
「ここ、もしかして今流行りの異世界ってヤツなのかな? 私今天空の城を見た気分なんだけど………」
「あー、ラピュったってヤツね」
茫然としている私に対してロストは気楽に笑って
「自分の体を乗っ取られるよりかはまだ安心出来る部類の出来事だから気を楽にしなよ」
「…………………」
この幼女人生で何があったの… 場慣れしすぎだと思うんだけど
「さ、れっつごーれっつごー♪」
「あ、ま、待って!」
見学気分のロストの後を追いながら私は街へ入る
「おー、凄いなー……」
そう呟くロストの気持ちも何となく分かる
街の中は妙にアンティークめいた感じがしていた
至るところに歯車歯車歯車………
歯車が歯車を回し、その歯車が更に別の歯車を回し更に更にその歯車が別の歯車を回し………
「………きゅ~………」
「あ、おーいシバお姉ちゃん! めー回しちゃわないでよ!」
危うく目を回して倒れそうになった私を揺さぶるロスト
「……っは! あ、危ない… ホント、時計みたいだね……」
目を回したのを誤魔化す為適当にそんな事を言う
「荒野の崖に沿って作られた歯車の街、中々カッコイイねー! 唐突に目の前に崖や街が現れた不可解さを除けば中々に絵になる街だ」
「まだまだ不可解な事は多そうだけどね………」
唐突なのはこの街どころか荒野に放り出されたところからだし、何よりこの街で不可解なのは………
「…人、見当たらないね」
「ロボットはいるけどね」
軽く見渡しても歯車しか見えない グルグルと回る歯車、家の装飾として使われている歯車、そして、ガシャンガシャン動くロボットの隙間や関節部分に見える歯車………
「そう言えばこのロボットたち僕ら見えてるのかな? はろー」
ロストがそうロボットに手を振ると、
「@:;・。、=」
と、ロボット語を話して手を振り返してくれた
「お、ちゃんと通じる ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」
「,;@-[::\/」
「此処ってどこなのかな?」
「kr.p@:;/30-@/:」
「そうなんだ、ありがとう!」
「::::;.」
ロストは笑顔で、ロボットは特に表情は変えず、お互いに手を振ってロボットは元の場所へ戻って作業する
「えと… ロストちゃん、あの言葉分かったの?」
「ふっふっふ、僕を舐めないでよ」
ロストは腰に手を当てて堂々と胸を張って、
「WA・KA・RA・N!!」
「知ってた……………」
予想通り分かってるフリだった
「とは言え全く分からなかったって訳でも無いよ」
「え、そうなの?」
「うん、あのロボット、話してる時にあの建物を指差してたから」
と、ロストが指差したのは歯車が飛び出している家の中の一つ、看板をぶら下げているところから何かの店の様だった
「つまりあの店に人間の言葉喋れる人が居るんじゃない? どの道何かしないと進まないし、最悪乱闘になっても僕がどうにかするから行って見よっか」
「ら、乱暴にならないように気を付けてね………?」