猫は金貨よりも コイン四枚目
「ほうほう、ふむふむ……」
一心不乱に何か描かれた壁を見つめるトラ
「くぁ~……」
そしてそれを暇そうに見つめる私
お宝があった部屋に戻ってきて早々、トラはずっと壁画を見っぱなして飽き飽きして来た
「そんなにお金にならない物を見て楽しいですか?」
「ええ、とっても楽しいですよ」
「そうか」
私には全く分からない世界だ 早々に理解するのを諦める
暇を持て余して適当にトラの作業を見ていると、
「逆にあなたはそんな金目の物を集めて楽しいんですか?」
「んー、楽しい、と言えば楽しいが……」
…そう言えばそんな事考えた事無かったな
「んーと…… 私としては趣味、と言うより生活に近いかな? 楽しいと言うより続けなくちゃいけないって感じかな……」
「成る程、あなたはトレジャーハントを探求心では無く生活本能を埋める為にやってるんですか」
珍しいですね、とトラ
「そうか? 世の中にはトレジャーハンターとしか生きられない奴なんて結構いると思うが」
「それでも生きる為にやる人は珍し過ぎますよ それこそ名前が無い人よりも」
何だが私の行動に文句を言っている様で思わずカチンと来る
「んだよ、人様の生き方に文句付けるなよ 生きる為に金を稼いで何が悪いんだよ」
「では、つかぬ事をお聞きしますが」
と、トラはこっちを向いて言う
「あなたにとってはお金と命どっちが大切ですか?」
「あ? そんなのお金に決まってんだろ」
そして、更に私が続けるよりも早く、
「なら、別にトレジャーハンターなんかやらなくてもいいのでは?」
「は?」
「お金を得る為、と言うより生きる為なら窃盗の方がいいと思いますが こんな秘境に一人で行くよりもはるかに安全で、その上確実だと思いますが」
「‥‥…」
突然の言葉に呆気を取られる
「そこのところ、どうなんですか?」
「……確かにそうゆうの考えた事無かったなぁ」
そう言われて見ると確かにそうだ と、言いたいが……
「そうゆうのって何度も出来ないだろ ずっとやってると顔バレるし」
「成る程、あなたは顔を隠す為にトレジャーハンターをやってるのですね」
「っ!」
思わず剣を抜いて臨戦態勢を取ってしまった 臨戦態勢を取ってからしまったと思う
「やっぱりですか……」
こんな露骨な態度をしてしまっては動揺していると言っているのと同じ事
それを感じ取ってかトラは同情するようにため息を付く
「いえ、さっき親が喋らないと言って、おまけに友達や親戚も居ないと言ったのに何で言葉は喋れるんだと思ってましたが、 成る程、もしかしてそれ尋ねてくる借金取りから覚えましたね」
スッキリしたようにトラは言って、また壁画を見る作業に戻る
「だから過剰にお金を得ようとするんですね、生きる為には、と言うより自由になる為にはお金が必要だから出来る限りお金を得ようとする、と」
「そ、それの何が悪い!!」
全部当てられて冷静を繕いながら私は言う
「私が普通に生きる為に命を張って何が悪い!! お前は逃げるのがカッコ悪いとか、言いなりになってるのがカッコ悪いとか言うのかよ!!」
「一生懸命生きている人をカッコ悪いと言うのはクズしかいませんよ」
と、一しきり壁画を見終えてトラは
「さて、まさか本当に呪いが見つかるとは思いませんでしたよ」
「え‥‥ え、え!? の、呪いあったの!?」
「ええ、ありましたね」
と衝撃の事実をいった後にトラは
「で、その呪いの主は何処に?」
「い、いやそんなの私に言われても……」
壁画に書かれてた呪いの事なんか知らないし…
「あなたに呪いをかけた主は何処にいるかって聞いてるんです」
「……え?」
その時だろう 私の中に金貨よりも大切な物を見つけたのは
「あなたを追い詰めようとするヤツから救ってあげますよ それ、何となく詐欺の匂いがしますし それなら俺がいれば何とかなるでしょう、こう見えても俺結構大きいところに所属してるんですよ」
と、トラは私に手を差し出し、
「あなたを自由にさしてあげますよ あ、そうだ 折角だからあなたの名前は『自由』にしましょう」
……唐突な、完全に脈拍の無い、どうしてそんな会話になったのか、そんな結論になったかさえ曖昧な突然の出来事
突然過ぎて小説にだって出来ないような訳の分からない展開だったが
けどま、人生ってそんなものなのかな と手を取ってからそう思ったのであった
ミハヤ)これは流石に回想を早く終わらせようとし過ぎで何か雑になってる感じもしますが…… マイッカ