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日記のような物語(ダイアリーテイル)  作者: ミハヤ
「王と  」
10/129

「影絵の鴉」 その6


「何者だ、お前は」


シザースがオレに鋏を向けて言ったその時、

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


遠くから少女の叫び声が聴こえた

「叫び声って・・・ もしかして、あっちにもクロウが!!」


しかも聴こえた方角って・・・・・・

「ロストたちが行った方角じゃねぇか!?」


こうしてはいられない 早くロストの所へ・・・・・

「待て」


喉ぼとに鋏を突き付けられ、思わず固まってしまう

「質問に答えろ」


「っ! 今はそれどころじゃねぇだろ!! ロストが危ねぇかもしれないんだぞ!」

たまらずそう叫ぶ


しかしシザースは無表情で、淡々と言う

「それどころなのだが」


「お前っ、何をふざけて・・・・」

「ふざけていない」


思わず息を飲んでしまった

それくらいの剣幕でシザースは言った


「ロストの方は安心しろ 仁が居たら問題ない だから、」


と、声のトーンを変え、そして怒りを顔に作り出し、言い放つ

「質問に答えろ お前は何者なのだ!!」


「・・・・・・・」

黙りこむオレには気にせずシザースはなおも続ける


「正直に言う 俺はお前を疑っている いや、正確にはお前とロストだ」


疑う? 一体・・・

「・・・・何に、だ?」


「町にクロウを呼んだ犯人」


「はぁ!? 何をい・・・・・・・・っ」


首の筋に固い金属の冷たさを感じる

シザースは鋏の刃をオレの首元で、皮膚が切れるギリギリまで鋏を閉じている


「これで最後だ」


思わず、冷や汗を掻く


「お前らは何者だ!」


「オレが、何者か・・・・・・・?」



そんなことを言われても・・・・・



「そうだ」


 

どうすればいい・・・・?



「言え」



どういえばいい・・・・・・?



「早く!」



だってそんなの知らねえもん! 知らない物をどう答えれば良いんだよ!





「・・・・・・・・知らねぇよ」


ため息を付きながら言う

結局、素直に言うことにした


「オレが何者かとか? ロストが何者だとか? 首謀者がオレたちだとか??

オレが何者かも、ロストが何者かも、この事件の首謀者も知らねぇよ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


無表情に戻り、黙り込むシザース

その表情の真意は判らない


判らないが、別にそれでいい


別に、分からなくていいのだとオレは思う

無理に判る必要なんて無いと思う


「本当に、知らないのか」


「あぁ、知らないし、分からない」


「・・・・・このまま切り殺すぞ」

脅し文句 しかし、その言葉にさっきのような剣幕は無く、あったのは、戸惑いだった


「真面目に答えないと、殺すぞ?」

やはり、剣幕は無い


はぁ、ため息一つついて、

「なら、真面目に答えてやるよ」


と、シザースの鋏を持っている腕を掴んで言う

「今はそんなことどうでもいいんだよ」


・・・・・どんな風に聞こえてのだろうか

まさか、シザースが思わずといった感じで表情を変えるとは


「今はそんなことよりロストだ」

と、シザースの腕をどかそうとした時、


「三つ、質問がある」

と、シザースは、淡々とした、本当に淡々とした声で、言う


「一つ、お前は自分のことが分からなくてもいいのか?」


「別にいいし、興味ない」

思い出せない物に興味は無い


「二つ、ロストが何者か知らなくてもいいのか?」


「・・・・まぁ、別にいいかな」


「・・・・・・三つ」


これが本題だ とばかりに、間を開けて言う

「何故そこまでロストを信用する?」


・・・・・・・・・・・そういえば、何故だ?


よく考えてみれば、あったのは昨日の夜が最初だ

それなのに、何故ロストをこんなにも心配したくなるのだろう


・・・・・・・・・・


「・・・・・・・分かんね」

結局笑顔でこう言い放つことにした


「・・・・・・・・・・・・」


「まぁ、ただ一つ言えることは・・・・・・・」

と、ロストの、昨日見た目を思い出して、言う


「ロストのことは信用していいと思うぜ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


数舜の間 そして、

「・・・・・・そうか」


シザースは鋏を降ろす

「仁が居るから問題ないと思うが、一応行ってみるぞ」


「・・・・おう!!」

そして、オレとシザースは走り出す


待ってろよ、ロスト!

そう思いながら走る



暫く走ったのち、ロストを見つけるだが、

「ん、ロストの様子が変では無いか」


見つけたロストは、何故か真っ青な顔で喘いでいた

「何か、あったのか・・・・・?」


何か、うなされているようにも見えるが・・・

「ともかく、早くロストを・・・・」


と、ふと、

「・・・ん? 何だ、あの黒い鳥?」


何故かクロウたちを攻撃している謎の影絵のような鳥を見つける

「シルエット、いや、違うな あれは何だ」


二人して影絵の鳥に気を取られていた

そして、気付いた時には、


「っ!! あ、ロスト!!!」

思わず叫んだ


気を取られている内に、クロウがロストの目の前まで来ていた

その言葉が耳に届いたかどうかは知らないが、ロストはハッ となった顔をしたのち、ただ茫然とクロウを眺めていた


「危ない!!!」

オレは走り出す


「危ないぞ」

いや、走り出そうとしたが、シザースに止められた


「っ!!! 何を・・・・・・」

オレが怒鳴ろうとした次の瞬間、


「gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaア!!!!!」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


そんな二つの叫び声と共に、目の前が明るくなった


「な、何だ!?」

唐突に、ロストに迫っていたクロウ、正確にはクロウとその周りが燃え出した


と、ふと、

「何やってんだ?」


と、

「あ、仁!」

赤いパーカーに首にはヘッドホン

さっきの黒パーカーではなく、ヒキコモリスタイルの仁が居た


この炎は仁が?


「っ! 誰!?」

ふと、ロストが怯えたように叫ぶ


誰って・・・・ 仁だ

「おいおい、誰とは失礼だな さっきまで一緒にオレとお話していただろ?」

「いやホントに誰だ?」


何故か仁の口調がガラリと変わっていた


「ま、いいや」

と、手に持っていた短剣を弄びながら、

「取り敢えず、こいつらを片付けようぜ」


初め合った時とは違う、全然違う、口調と表情で、仁は言った

いや初めて会った時と同じか、あれは


『歓迎はしないよ』

そう仁が言った時のような不陰気があった


「俺の助けは必要か」

そう言いながら仁の元へ歩み寄るシザースの後を追う


「ん? あぁ、シザースとレイか そっちは大丈夫、っぽくないな」


少し溶けたシザースを見て、苦笑いの仁

「少し油断した」


無表情で肩をすくめるシザース

「報告 クロウが毒を吐いてきた」


「・・・毒を? そんなことがクロウに出来たか?」


「出来なかったはずだが—————————————」


っと、会話を聞くよりも・・・・・

「ロスト、大丈夫か?」


オレは恐怖した顔で茫然としているロストに声をかける


「・・・・・・・・・・」

しかし、反応は無い


「おい、ロスト?」

と、ロストの肩に手を当てる と、


「っっっっ!!!!」


肩を思いっきり跳ね上がらせて、驚いたようにこちらを振り向く

そして、その紫の瞳にじわりと涙が浮かぶ


「そんなに怖かったか?」

オレはロストの頭を撫でようとした、 が、


「ごめん・・・・・・・」


「は?」


「ごめん・・・・・・・・・」

ポロポロと涙を流し、何故か謝るロスト


「本当に、ごめん・・・・・・・・」


「お、おい・・・・?」


「こんな僕で、本当に、ごめん・・・・・・」


「お、おい、本当に

「本当にどうしたんだ?」


と、気が付くと、

「って、それはこっちのセリフだ!!!」


気が付くと、辺り一面、炎の海だった 見渡す限り炎だらけで、きっと建物にも燃え移っているだろう

「これクロウがしたことよりも大惨事になってないか!?」


「それは大丈夫だ」

そう仁が言った途端、


「ちゃーんと、火は燃え移らないようにと、あとクロウ以外の生き物は燃やさないように気を付けましたから あ、クロウはボクが全滅させたのでご安心を」


周りの炎は消え、ついでに仁の謎の威圧感も消えていて、元の口調と態度に戻っていた

「それより、ロス————————」


と、仁が口を開いたと同時に、

「きゃーーーーー!! 最悪の吸血鬼よ!!!!」


と、女の人、見た目は普通な女の人だ が叫んだ


「な、何故あいつがここに!?」


「ほ、本当だ・・・ 何故あいつが・・・・」

その叫びを聞きつけ、様々の者たちが集まってきた


「・・・・さすがにやりすぎましたかね」

と、苦笑いしながら仁は言い、

「シザース、帰りましょう」


「了解」

と、シザースと仁の二人は逃げるようにしてどこかへ行ってしまった


「・・・・・・・えーーっと、」


「ぐす・・・・ひっぐ・・・・・・・・・」

取り残された、オレと泣いているロスト


「・・・・・と、取り敢えず、落ち着こ、な?」

取り敢えず、ロストの頭を撫でて、落ち着かせる事にした






「・・・・そうか」


帰り道、ボクはシザースの話を聞いて思った

間違いないな、と


「レイとロストの関係性は、いじめっ子といじめられっ子だ」


「・・・・・・・・・・」


シザースは何も言わない

シザースは基本話に口を挟まないので、話し相手としてはとてもいい


「ロストは、黒い鳥を出すのが自分の能力の神髄だと呟いていた」


さながら、影絵のような、似たような形でそこに何かが居ると勘違いさせるような、観客を騙すような鳥を出すのが能力の神髄だと呟いていた


ならば、考えだされることは一つ

「ロストは、『自分のやったことが発覚しない』事が願いだ」


自分の罪を『隠し』、自分のやった事をあたかも自分がやってないように『偽る』

さながら、スクリーンの後ろに隠れて姿を偽る影師の様に


「そしてレイは、毒が何故か効かず、しかも何故か毒を浴びせたクロウ本人が毒を受けた」

つまり、反射させた いや、多分言い方としては、


「それは『反発』したから レイの願いは、『いじめてきた子にやり返すこと』、だろうな」


「・・・・・・・・・・・・・」


反発、こっちの方が言い方としては正しいだろう

因みに、反射の意味は、向き、つまり方向を変えることで、反発の意味は、跳ね返す、もしくは他人の言動などを受け入れないで、強く否定することを意味する


『偽り』を『否定』する

それが、レイの願ったことだろう


「そうすると、レイが記憶が無いことも頷ける」


きっと、ロストがレイの記憶を消して、いや偽っているのだろう

自分の罪が発覚しないように 復讐を、されないように


「・・・・・これは、面白い絵面だな」


「・・・・・・・・・・・」


思わず笑ってしまった

いじめられっ子といじめられっ子が仲良くしているなど

もしも、この事がレイにバレたらどうなるのだろうか


「・・・・・・・・・・・っち、」

思わず舌打ちをする と、なると、これは確実に——————————————


「仁」

と、珍しくシザーが口を挟む


「・・・・何でしょうか?」

言って見ろ という意味を込めて、こっちの口調で返事をする


珍しく、何なのだろうか


「仁の推測、いじめっ子といじめられっ子という推測は、多分間違っているぞ」


「・・・・・・・・・ほう」

本当に、珍しい 人形であるシザースが、今の使い手であるこのオレの意見を真っ向から否定するとは


「因みに、理由は?」


睨みを効かせていってみる

心無い人形のシザースだが、感情を表現する、いや演技をすることは出来る

シザースは思わず顎を引く演技をしたが、それでも言う


「レイの態度、 あれは・・・・本当にロストのことを大切に思っていた」


「・・・・それで?」

今度は殺意も込めて言う これで、シザースは黙るはず・・・・・・


「あれは・・・・・レイは、絶対にロストにいじめられていたからやり返したいとなんて思わないと思う」


「・・・・・・・・・・・・・・」

本当に、珍しい 心無い人形が、心を説くなんて


「・・・・そんなに、レイの言った言葉は何か重みみたいなのががあったんですか?」

思わず口調がこっちになってしまう


「そうだ」


「・・・・・そうですか」

ボクもその場に居合わせたかったなー


「まぁ、いいでしょう 一応シザースの意見も頭の片隅に入れておきましょう」

一応、そう言っておく


だがいじめっ子といじめられっ子の線は間違いないと思うが・・・・

「・・そういえば」


何で唐突に、ロストは泣いていたのだ?


何か呟いて用だが、クロウ退治に夢中で聞いていなかった

それに何故か唐突に喘いでもいたし・・・・


「・・・・・・うーん、」


もしかして、()()()()()()()()()()()()()()

それでそれのフラッシュバックであんなことに?


「・・・・・そんなわけないか」


ロストは偽るだけのはずだし、それだと辻褄が合わなくなるしね

さ、早く帰ってゲームでもしよっと、




・・・・・一緒にゲームしたら、ロストは元気になってくれるかな


・・・・・ボクらしくないな 他人に気を遣おうなんて思うなんて


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