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日記のような物語(ダイアリーテイル)  作者: ミハヤ
「王と  」
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「王と  」 ~opening~


「ふふ、初めまして!」

…いつからそこに居たのだろうか?


黒い長髪に真っ黒な和服に茶色い肌、

見た目だけでも明らかに愉快に笑いそうな黒い少女がそこには居た


「ここに来てくれたってことは、ワタシのお話を聞きに来てくれたってことだよね?」


フフッ と、見た目道理の愉快そうに笑いながら、少女は尻尾を振る

尻尾、そう、尻尾である

黒い少女の頭には猫のような黒い耳、そして腰にはこれまた猫のような黒い尻尾が付いている しかも二つも

二つの尻尾を持つとは、まるで――———


「まるで、猫又みたい、 そう思ったでしょ」

少女は目を細めて笑う


猫又、民謡伝承や古典の怪談、随筆などで語られる、尻尾が二本あるのが特徴の妖怪

人に化け、時には人に取り付いたり人を食らったりたり、

そんな、現実には居ないはずの、妖怪


「ところでさ、」

と、いつの間にか、何処からとりだしたのだろうか白いベットに寝そべっていた黒い少女は言う


「願い って、どうゆう物だと思う?」

よっこいせ と起き上がり、少女はベットの上で胡坐をかく


「一般的には…… 願いって、○○が欲しい! とか、○○になりたい! とかかな ま、つはりは物を欲するってことがよね?」


…そうだと思うし、むしろそれ以外にあるのだろうか


「うん、あるよ」

少女はベットから降りて、言う

「病気になりたくない、いじめられたくない、事故に遭いたくない、受験に落ちたくない

要は『物を欲さない』 判りやすく言えば『こんなのになりたくない』という、願い」


……はて、何が違うのだろうか?


それはただ 健康でありたい、誰かと仲良くありたい、安全でいたい、受験に合格したい

要はただの言い方の違いではないだろうか?


「ま、そう思うだろうね 結局はどっちもただの願い事だし」

少女は肩をすくめる


「前者、欲する願いはその願った場所へ向かおううと思うこと、後者、欲さない願いはその願った場所から逃げること、本質的には同じ、願うこと、今の場から動こうと思うこと」

ただ…… と少女は続ける

「向かうと逃げる、歩く道が違えば、目的は同じでも、目的地は同じにならない

つまるところ、結果は全く別のものなる」


……………


「ま、理解はしてくれなくていいよ ただの猫のちょっとした思い付きなだけだから

と、そうだ そろそろ本題に入ろう」

これまた何時から持っていたのか、少女の体半分以上の大きさのある本を見せて少女は言う


「さて、物語を始めよう」

少女は、またいつの間に… もういいや、椅子に座り本を広げながら紡ぐ


「この物語の舞台はアヴァロンエデン、通称『異端郷』と呼ばれるところ」


理想郷の楽園(アヴァロンエデン)の通称が異端とはこれ如何に


「そこは、現実のすぐそば、本当にすぐ近くにある、現実とは程遠い、願いが叶う世界」

……願いが、叶う?


少女はニヤリと笑い、続ける


「そんな世界に一人の少年が迷い込む——————————

あ、そうだ」

と少女は語るのを一時中断して、

「この物語を面白くするために、一つ、別のお話を」

と、少女は一度息を吸い、


「僕は、人が嫌いだった————————————













僕は、人が嫌いだった


昼休み、僕以外誰もいない校舎裏、一人だと錯覚しそうなほど静寂の中、そこにある切り株に座り本を読みながら思う


僕には人というのが判らなかった

何故かみんな当たり前のように他人と話し、平然と遊び、普通とばかり笑う

僕には、そのことが、みんながどうやってそんなことをしているのか判らなかった だから教室に馴染めず、ここでたた一人きり

こうゆうのを適応障害というのだろうか? いや流石にそれは言い過ぎか? そうゆう思い込みはホントの適応障害の人に悪いし


「……ふん」

考えるのが何だか馬鹿馬鹿しくなり、手元の本に目を向ける


僕は本が好きだった 本を読んでいるときの、まるで僕がそこにいるかのような感覚、

周りに馴染めない僕の、唯一馴染むことの世界がそこにはあった


勿論本に、いや、物語のキャラクターとして舞台には出演できないが、僕は観客として、拍手を送る盛り上げ役として、この世界に溶け込んでいる


そしてその演劇を見ているのは僕ただ一人 その演劇(ほん)は僕一人のために行われている

まるで、僕が一国の王で、僕のためだけに呼び寄せた演劇部隊、

それが僕の中での本の見え方だった


「…ふふっ」

自分は小学生らしくないな と、小学五年生男子の僕はそう思った



「…ん?」

予鈴が鳴り、教室に戻ってみると教室が騒がしかった


「何だ?」


窓に人が集まっていて、話し声が耳に入る

「ねぇ、何で窓割れてるの?」

「うーん、何か誰かがボールで割ったみたいなんだけど、犯人が分からないらしいんだ」

「えー、誰がやったのかな?」


どうやら誰かが窓を割ったらしい と、そこへ、


「何だ、どうした!」


と、先生が入ってきた

あ、これめんどくさくなるやつだ


まー、お察しの通り先生お怒りで、誰がやったと騒いで、そして緊急学級会と

「先生は怒っている!窓を割ってしまったのはまだいい! だが黙って誤魔化そうとするとは何事だ!」


はぁ――――  めんどくさ

何でやってない事で怒られなければならないのか

て、言うか犯人分かんないのに何でこのクラスに犯人がいると思っているのか、可能性なら他のクラスの人もあるのに、

何でこんなめんどくさい事を————————


「お前! 聞いているのか!」

僕を指差し、先生は言う


「…聞いてますよ」


「何だ!そのめんどくさそうな言い方は!」

いや、事実めんどくさいし


「…すみません」

めんどくさいので、とりあえず謝っておいた ま一応めんどくさそうにしている僕にも非がある訳だし

何でいい子ぶらないといけないのかとも思うが


その態度が余計にイヤだったのか、

「まさか、お前が窓を割った犯人じゃないだろうな」

その言葉には流石にㇺッとした


思わず僕が言い返そうとした時、

「あ、あの!」

と、一人の女子生徒が立ち上がって言った


「何だ?」


「あ、あの…… 実はわたし、窓を割った犯人を知っているんですっ!」

教室がざわめきだす


「何だと!なぜそれを早く言わない!」


「じ、実は、その犯人の子に口止めされてて…」

……もしかしてこの子僕を助けてくれているのか?

このタイミングで勇気を振り絞ってくれるとは


「でも、やっぱり言わなきゃって思って…」

だとしたらありがたいことだ 後でお礼くらいは言わないとな


「大丈夫だ しっかりキミのことは守ってあげるから、犯人を言ってくれ」


「は、はい… その、窓を割った犯人は…」


と、その子は指差す

その指差した方向に一斉にみんなの目線が行く


その、目線の先とは……

「あの子なんです!」

僕だった



——————————————————————————は?




「あの子がボールで窓を割ったのをたまたま見て、」


いやいや待て待て待て待ておかしいだろ!

僕ずっと校舎裏に居たぞ!


「それで、先生にチクったら痛い目見せるぞって」


そもそも僕がボール遊びをしたことがないんだからボールで窓を割れる訳ないだろ!

てかクラスのボール持ち出してないのくらいわかるだろ! 誰が持ち出したのかを調べ————————


待て、ボール持ち出してたのって、誰だ?

確か僕が教室を出る前に女子の誰かが……

もしかして…っ!


「お前だったのか!」


違う————


「しかも脅迫までして!」


違う———————————


「それでいて白を切ろうとして…!!」


違う—————————————————————


「許されないぞ、お前!」

「違う!!!」


そう叫んだ時、気が付いた

僕が犯人だって言ったその女子生徒が、

不安そうな表情の中で、薄く、笑っている事に





ずっと違うと言ったが結局、誰にも、クラスの子にも、先生にも、親にも無罪は信じてもらえなかった———


やはり、人ってのは良く分からない

なぜ嘘を簡単に信じるのか なぜ真実を簡単に信じないのか なぜ、こうも簡単に、罪悪感無く、罪をなすりつけるのか

僕には、この世界は判らない世界だった



別の世界に行きたい


僕はそう思いながら、出ることの無くなった部屋の中で、本を読むのだった






以上を踏まえた上で、さぁ 物語が始まるよ♪

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