赤い絵
この絵を見た人は、だれもが声を大にして叫んだ。よくもこんな。酷い有様だ。穢らわしい。正気じゃあない。──失礼ね、私はどこまでも正気なのに。逆に正気じゃなければ、こんなものは描けやしないわ。
やがて、わたしが世に認められるようになると、かつてわたしをさんざん見下した人たちまで、手のひらを返したようにわたしを褒めたたえた。やめて、吐き気がするもの。
結果が重視されるこの世界は、それでもきれいだった。絵はわたしの全てで、わたしの人生そのもの。このきれいな世界に認められたのは、わずか一部分でしょう。それら全てを肯定するのは、きっとまちがいよ。赤に赤を重ねながら、私はわらう。きれいな世界を、うつくしいと思えない人たちへ。あなたのいる世界は、何色をしていますか。あなたの目は、この世界を、どんな色でうつしていますか。