第一章‐8
「召喚ってのは具体的にどんな原理なんだ? 俺の世界じゃ召喚なんて技術はないもんで知りたい」
「へえ、そっちではないんだ。 いいよ、教えてあげる。 歩きながら話すね」
単純に未知なる力の正体を知りたい好奇心でリアに訪ねる。
あっさりと了承してくれたのには驚きだ。
一族秘伝の技術だと予測していたのに、躊躇う様子もないことから日常で召喚とは誰しもが当たり前な光景なのかもしれない。
「まず召喚ってのは契約した精霊を呼び出す儀式なのよ。 火、水、森……例を上げていたらキリがないけど、多種多様な精霊がいて、気の合う精霊がいたら血の誓約で契りを交わして、後は呼び出す呪文を唱えれば呼応して顕現するってわけ」
「意外と簡単そうだな。 俺でも召喚できそう」
「簡単なわけがないでしょうが、ばか。 これだから異界の者は……」
ハアっと呆れたように深いため息を吐く。
バカと直球で言われ少しムッと、しかめ面してしまう。
眉をひそめているのを気にもせず、指を立てて説明を続ける。
「いい? 精霊は誰とでも誓約を結ぶわけではないの。 波長が合う者、対価を支払える者……一番重要なのが、その日の気分で契りを交わすか決めるの」
「波長と対価の条件を満たしても、気まぐれで蹴られてしまうのか?」
「そうよ。 ほんと大変だったんだから」
過去の記憶を振り返ってるのか、眉間にしわを寄せてイライラしてるのが伝わる。
さぞあの変態な妖精に頭を悩ませたのだろう。
イラつく言葉づかいだから何となく契約までに至る遠い道のりが想像がつく。
エロ発言連発だっただろうと。
「おーい、姉ちゃん! キノコの大群見つけたでー」
いつの間にかジメジメとした湿気高い空間に来ていたようだ。
遠方から緑の閃光を放ち食料がある場所を示してくれる。
妖精の居場所に向かうと、茶色のキノコがわんさかと生えていた。
どれも美味そうだが……食えるのか?
毒とかは入ってないか気になるがすぐに疑念は払拭された。
「毒の混入はない人間が食えるキノコや。 姉ちゃん、もう消えてもええか?」
「ありがとう、グリシャーシエ。 もう用済みよ」
「たく、言い方ひっどいな、ほんま。 じゃ、またよろしゅうな」
悪態をつかれも、ニカっと真っ白な歯を見せびらかせ、淡い粒子となり四散した。
手を振ってお別れを見送った後のリアはしゃがんでキノコの収集を始めた。
精霊なのに扱いが雑な気もするが、確かに便利な妖精だ。
ものの数分で食料となるキノコ類を探し出すとはさすが森の王様と称賛する。




