第一章‐6
「シノさん、シノさん。 お腹は空きません?」
「言われれるとお腹が空いてきた。 朝からなんも食ってなかった……てか、食い物はあるのか?」
「いえ、ありません。 ですので食料調達しましょう!」
「えぇー…………」
急に目の奥をキラキラと輝かせガッツポーズを取る。
おいおい、ついさっきまで年中引きこもりのニートが山菜を摘んだり、川があれば魚を釣ったりと、アクティブな行動ができないので、すごく調達をしたくない。
「そんなに嫌がらなくても探すのは私ですし、食料を持ってもらうのだけ手伝ってほしいだけですから」
「小生、運動したくない。 動きたくもない」
「もう! 駄々こねてどうするのですか! 自力で食い物を探さないとミイラになりますよ!」
「……それもいいかも」
「絶対に餓死はさせませんから」
人差し指で鼻をツンっとタッチされ、『餓死はさせませんよ』と念押しに言われる。
「では、詠唱を開始しますので……詠唱中に変なことしないでくださいね?」
「しないっての」
えらく信用されてない模様。
当たり前っちゃ、当たり前だ。
出会ってから半日も経ってない間柄で、しかも異界の者を殺したいほど憎んでいる子だ。
簡単に好感度アップする裏ワザはない。
それよりだ、リアは詠唱を開始しますと重要な発言をした。
誰もが羨み、二次元と妄想の中でしか存在しりえない、空想のもの。
――魔法だ。
物理法則は無視で、基本魔力さえあれば、なんでもやりたい放題と認識している。
まさかこの異世界に魔法があるとは驚きだ。
リアの詠唱を見るのが楽しみでしょうがない。
「――聖なる大地に住まい深緑の王よ。 ――我、清廉たる森の守護より。 ――穢れなき白銀の戴物を代償に。 ――今、ここに来たれ。 ――顕現せよ、グリシャーシエ!」
リアを中心に黄緑色のエフェクトの光が地面より舞い上がる。
光の玉はグルグルとリアの周りを回転し、一つに収束していく。
長い髪を一本抜き取り、宙に浮くボールに落とすと、より一層に光度が強くなり、とても目が開けれない。
光が弱まり薄ら目で確認すると、そこには透明の羽が生えた手のひらサイズの生き物が飛行していた。
童話でてくる妖精の姿と一緒。
ただ異なるのは女性のフォルムではなく、男性フォルムである。




