表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に魔法はないんだよ  作者: バル33
第一章:白銀の少女
5/32

第一章‐4


 驚嘆した彼女は刃物をゆっくりと下ろし、その場で腰を抜かした。

 突然のへこたれに心配して少女に近づく。


「どうした? 俺を殺さないのか?」

「ごめんなさい……あなたは極悪非道な異界の者ではなかったのですね。 殺そうとして本当にごめんなさい」

「まてまて! なにがどうゆうことだ?」


 急な土下座に慌てて頭を上げるよう、肩を触り、上体を起こした。

 涙ぐんで今にも泣き出しそうな彼女に、深い事情があるとわかる。

 異界の者とやらは幼い少女になにをしやがった。

 なぜだか心の奥底からふつふつと、怒りが芽生えた。


「話すと長くなります。 二日前の出来事です」

「最近か」

「そうです。 丁度あなたに似た服装をした者たちが、私の村を襲撃してきました」


 思い出すのがつらいのか服の裾をギュッと握り、暗い表情で話す。

 顔色を察するに……さぞ苦しい思いのしたのだろうと、鈍感な俺でも理解する。


「以前から他の村で、奇妙な服装をした盗賊が各所で襲っていると情報はありました。 私の村では即座に盗賊迎撃用の罠や、武器を準備しましたが…………異界の者には通用しなかったのです。 鉄の飛び道具、火を噴く風車、辺り一面を焦土にする卵……どれも見たことがない武器に、なすすべなく一方的に殺戮され、村は壊滅し、私以外は全滅しました。 都合よく私だけが助かり、命からがら逃げてきたのです」


 拳銃、火炎放射器、手榴弾……どれも俺の世界の兵器だ、しかも一般人が手にするのは不可能な代物ばかり。

 軍関係者が無害な人を(あや)めるなんて、狂ってるとしか言えない。


「私だけが生き残り……親友の苦痛な顔……家族の辛辣な表情が頭から消えなくて………悔しくて、憎くて……刺し違えても絶対に殺してやると、異界の者を探していたら……あなたに出会ったのです」

「……そうか、つらかったよな」


 ぽろぽろと、涙を流す彼女に自然と抱き寄せ、いい子いい子と頭を撫でてあやしていた。

 その瞬間、安堵したのか顔を腹部に埋め、泣き崩れてしまう。

 全体重を身を寄せて、鼓膜が割れるのではと思わせるほど大声で喚き続ける。


「うぇ……うぐぅ…………」

「よしよし」


 目の前で大切な人がいなくなるのは想像を絶するだろう。

 俺には気持ちはわからないが、彼女にしてやれることは慰めるしかできない。

 泣き止むまでずっと側にいることだけだ。

 

 


  


  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ