第一章‐2
――夢を見た。
草木が多い茂る緑の世界。
妙にリアルっぽく、土の香りに涼しいそよ風が吹いていた。
変な夢だと思いつつも、腕枕をし、その場で眠りに落ちる。
――夢を見た……
目覚めれば夢の延長戦。
場所も、景色も変化なく、夜空の星が輝き綺麗だなと感想がもれるぐらいだった。
こんな夢も、もう一度眠ってしまえば現実に戻るだろう。
――夢を……
眩しい太陽の光に目を覚まし、上体を起こす。
欠伸しながら立つと、足を滑らせ盛大にこけて後頭部を強打する。
いくら地面が土とはいえ、すごく痛い。
頭を抱えて悶えていると、ある異変に気付いた。
「おいおい……なんで夢なのに痛覚があんだよ」
現実ならまだしも夢は所詮、架空の世界なのだから痛みがあるのはおかしい。
試しに二の腕をつねると……痛い。 やっぱり痛い。
何度つねっても痛みがある。
どうやらここは現実の世界のようだ。
にわかに……にわかに信じがたいが……異なる世界にやってきてしまったみたいだ。
よくある異世界ものなら、神様の手違いで殺されて異世界転生や、勇者召喚で異世界転移が定番なんだが…………なんにもねえ。
特殊能力なしに異世界に来てしまった。
テレビ番組のドッキリで、山の中に人は置いたらどうなるか? ……みたいな企画のわけはないか。
そもそもニート絶賛中の俺に誰がテレビに採用するんだか。
まあ、間違いなく異世界だろう。
一日中ぐーたらしている男に、見かねた神様が天罰として異世界に放り込んだのかね。
「……死に場所にはふさわしいか」
生きる意味なんてない俺には、良いかもしれない。
このまま食べるものなく飢え死ぬか、猛獣に襲われて食い殺されるか……どっちでもいいや。
どうでもいいことだ。
「…………あのぅ」
やることがないので三度寝しようとした途端に頭上から声がした。
今頃、天使の登場か? と、聞こえた方向に目を逸らすと女の子がいた。
長髪の銀髪で、丸っこい顔立ち。
華奢な体に、瞳が白と。
ああ、やっぱり異世界なんだと再認識する。
現実世界にこんな美少女はいない。
地毛が白銀もあり得ないし、コスプレしてもここまで完成度が高いのは、加工した写真以外ない。
服装もボロボロの布切れを着てるし、なおさら異世界感を漂わしている。
……はぁ。 ほんとに夢じゃないんだな。




