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異世界に魔法はないんだよ  作者: バル33
第一章:白銀の少女
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第一章‐2


 ――夢を見た。

 草木が多い茂る緑の世界。


 妙にリアルっぽく、土の香りに涼しいそよ風が吹いていた。

 変な夢だと思いつつも、腕枕をし、その場で眠りに落ちる。


 ――夢を見た……

 目覚めれば夢の延長戦。


 場所も、景色も変化なく、夜空の星が輝き綺麗だなと感想がもれるぐらいだった。

 こんな夢も、もう一度眠ってしまえば現実に戻るだろう。


 ――夢を……

 眩しい太陽の光に目を覚まし、上体を起こす。

 欠伸しながら立つと、足を滑らせ盛大にこけて後頭部を強打する。


 いくら地面が土とはいえ、すごく痛い。

 頭を抱えて悶えていると、ある異変に気付いた。


「おいおい……なんで夢なのに痛覚があんだよ」


 現実ならまだしも夢は所詮、架空の世界なのだから痛みがあるのはおかしい。

 試しに二の腕をつねると……痛い。 やっぱり痛い。


 何度つねっても痛みがある。

 どうやらここは現実の世界のようだ。

 にわかに……にわかに信じがたいが……異なる世界にやってきてしまったみたいだ。


 よくある異世界ものなら、神様の手違いで殺されて異世界転生や、勇者召喚で異世界転移が定番なんだが…………なんにもねえ。

 特殊能力なしに異世界に来てしまった。


 テレビ番組のドッキリで、山の中に人は置いたらどうなるか? ……みたいな企画のわけはないか。

 そもそもニート絶賛中の俺に誰がテレビに採用するんだか。


 まあ、間違いなく異世界だろう。

 一日中ぐーたらしている男に、見かねた神様が天罰として異世界に放り込んだのかね。


「……死に場所にはふさわしいか」


 生きる意味なんてない俺には、良いかもしれない。

 このまま食べるものなく飢え死ぬか、猛獣に襲われて食い殺されるか……どっちでもいいや。

 どうでもいいことだ。


「…………あのぅ」


 やることがないので三度寝しようとした途端に頭上から声がした。

 今頃、天使の登場か? と、聞こえた方向に目を逸らすと女の子がいた。


 長髪の銀髪で、丸っこい顔立ち。

 華奢な体に、瞳が白と。

 ああ、やっぱり異世界なんだと再認識する。


 現実世界にこんな美少女はいない。

 地毛が白銀もあり得ないし、コスプレしてもここまで完成度が高いのは、加工した写真以外ない。


 服装もボロボロの布切れを着てるし、なおさら異世界感を漂わしている。

 ……はぁ。 ほんとに夢じゃないんだな。




  

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