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異世界に魔法はないんだよ  作者: バル33
第三章:後悔
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第三章-4


「頼む。 ……無事でいてくれ!」


 走りにくい雪の道を行進していく。

 転倒しそうになっても駆けていく。

 リアが何事もなく元気に立っていることを祈り進んでいく。

 最悪に結末を考えないようにがむしゃらに突っ走る。


「はぁ、はぁ、はぁ。 リ――ア……」


 特徴のある銀髪を携え、平地に立っている。

 無事だ。 良かった。 本当に良かった。 なにも起きてなかった。

 銃声も気のせいだったのだ。

 あまりの動揺に幻聴でも聞こえたのかもしれない。


「リア。 さっきは――」


 予備動作もなく背から倒れこんだ。

 なぜ倒れたのか理解するのに時間を要した。

 いや、理解したくなかったが正しいかもしれない。


「あ――あぁ!」


 左胸から真っ赤な血が彼女から流れていた。

 心臓を一突きされたように止めどなく溢れている。


「ああぁぁぁあああああああああ! リアぁぁぁぁ!!」


 

 わかっていたのに現実を直視しない自分から目が覚めた。

 だって目の前にオーク共がいるじゃないか。

 そう、リアは急所を撃ち抜かれたのだ。 あの黒鉄に。

 信じたくはなかった。 最悪の事態になるなんて。


「息がある……! 死ぬなよ!」


 血が出ている箇所に手を当てて、出血がこれ以上ひどくならないよう押さえる。

 が、止めどなく溢れる。 冷やかし程度しか効果がないのか。


「そいつの仲間か。 やめとけやめとけ。 心臓に穴を空けてやったんだ。 じきに死に至る」

「だまれ! まだ助かる」

「そうかいそうかい。 寂しくないようお前もここで殺してやるよ。 くく、親切だろ?」

「ぐっ…………」


 銃口がこちらに向けられる。 治癒しようにもコイツらからどうやって逃げる?

 抱えて走っても無惨に撃たれ殺されるだけだ。

 クソ! 突破口が思いつかない。

 ここで彼女と抵抗できずに死んでしまうのか……。


「………………なんだあれは!?」

 

 大きな影が地に映される。

 オーク共が騒ぎ始めるのはなぜかと視線を空に移すと、そこには巨大な物体が浮遊していた。

 翡翠の鱗にトカゲのような体躯、翼を携え長い尾がそこにあった。

 幻想世界の生物と全く同じの姿、ドラゴンが飛んでいたのだ。

 偶然飛んでいたのだろうかと、思い老けていると、突然こちらに目がけて急降下してきた。


「に、にげ――」


 辺り一面の雪は弾け飛び、暴風が発生する。

 地に降りた衝撃でグラグラと揺れる。

 そして陸に降りたドラゴンに踏み潰されたオークの姿が瞳に映る。

 ……助けてくれたのか? それとも気まぐれか?


 

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