第三章-4
「頼む。 ……無事でいてくれ!」
走りにくい雪の道を行進していく。
転倒しそうになっても駆けていく。
リアが何事もなく元気に立っていることを祈り進んでいく。
最悪に結末を考えないようにがむしゃらに突っ走る。
「はぁ、はぁ、はぁ。 リ――ア……」
特徴のある銀髪を携え、平地に立っている。
無事だ。 良かった。 本当に良かった。 なにも起きてなかった。
銃声も気のせいだったのだ。
あまりの動揺に幻聴でも聞こえたのかもしれない。
「リア。 さっきは――」
予備動作もなく背から倒れこんだ。
なぜ倒れたのか理解するのに時間を要した。
いや、理解したくなかったが正しいかもしれない。
「あ――あぁ!」
左胸から真っ赤な血が彼女から流れていた。
心臓を一突きされたように止めどなく溢れている。
「ああぁぁぁあああああああああ! リアぁぁぁぁ!!」
わかっていたのに現実を直視しない自分から目が覚めた。
だって目の前にオーク共がいるじゃないか。
そう、リアは急所を撃ち抜かれたのだ。 あの黒鉄に。
信じたくはなかった。 最悪の事態になるなんて。
「息がある……! 死ぬなよ!」
血が出ている箇所に手を当てて、出血がこれ以上ひどくならないよう押さえる。
が、止めどなく溢れる。 冷やかし程度しか効果がないのか。
「そいつの仲間か。 やめとけやめとけ。 心臓に穴を空けてやったんだ。 じきに死に至る」
「だまれ! まだ助かる」
「そうかいそうかい。 寂しくないようお前もここで殺してやるよ。 くく、親切だろ?」
「ぐっ…………」
銃口がこちらに向けられる。 治癒しようにもコイツらからどうやって逃げる?
抱えて走っても無惨に撃たれ殺されるだけだ。
クソ! 突破口が思いつかない。
ここで彼女と抵抗できずに死んでしまうのか……。
「………………なんだあれは!?」
大きな影が地に映される。
オーク共が騒ぎ始めるのはなぜかと視線を空に移すと、そこには巨大な物体が浮遊していた。
翡翠の鱗にトカゲのような体躯、翼を携え長い尾がそこにあった。
幻想世界の生物と全く同じの姿、ドラゴンが飛んでいたのだ。
偶然飛んでいたのだろうかと、思い老けていると、突然こちらに目がけて急降下してきた。
「に、にげ――」
辺り一面の雪は弾け飛び、暴風が発生する。
地に降りた衝撃でグラグラと揺れる。
そして陸に降りたドラゴンに踏み潰されたオークの姿が瞳に映る。
……助けてくれたのか? それとも気まぐれか?




