第三章-3
おいおいおい、まさか。
音速に等しい弾を避けれるとでもいうのか?
「頭に血が上ってなくて、冷静ならひょいひょいと交わしていたわ」
「……そうすっか」
銃弾を交わすのは俺には無理だ。 てか、見えない。
同じ人間という種族でも、身体能力に動体視力は大きく異なるのがわかる。
俺の世界の常識では、人間は見てから避けるのは不可能。
もし交わせるのがいけるのなら、それは予測で回避しているだけだ。
「悔やむわ。 …………シノがもっと早くにこの世界に来ていたら村の皆は助かってたんだろうね」
「それはないな」
「は? なんでよ?」
「いくら銃火器や爆弾と言った武器の知識があったとしても対処できない。 なんせ遠距離で殺傷能力がある武器の相手に、こっちは近接の武器しか持ってないときた。 勝てるわけがない」
「いいえ、私みたいに弾を避けて――」
「その間に村人は撃ち殺されるだろうな。 もしくは撤退して作戦をちゃんと練ってから奇襲でもするかもしれんぞ? 相手は訓練された兵士……この世界じゃ戦士とでも呼んだ方がしっくりくるな」
「……じゃあなに。 やつらとあった時点で全滅する運命だとでも言うの?」
「まあ、そうだな。 運が悪かったとしか言えん」
「…………あっそ!」
バンッっとグーで地面を叩き、怒り心頭でリアは寝床から外へ飛び出した。
……やってしまった。 言葉を選らばなく、デリカシーのない発言をしてしまった。
家族が、友人が、目の前で殺されたのは運が悪かったと言ったら誰しも怒るだろうに。
ああ、ほんとバカだな、俺。
反省しなければ。
「謝りに行こう」
毛皮のコートを被り、寒がりの彼女の為にもう一着のコートを手に持ち外へ出る。
足跡がくっきり残っていることもあり、追跡は簡単だ。
走っていったであろうリアの足跡を目印に、白い息を吐きながら追っていく。
足を負傷しているのでそう遠くまではいけないはずだ。
早く会って謝ろう。
と、謝罪のことばかりで頭がいっぱいになってるところに、パーンと甲高い音が鳴り響いた。
一瞬立ち止まり、思考停止してしまうが、身体は全力で雪の道を駆けていた。
身近で聞いたことのある音。 間違いなくオークだ。
音がした方角はリアの足跡の先。 マズい! 急がないと!
怪我をしている彼女は逃げれないぞ!




