第三章-2
「さっきのシノの目、怖かった。 まるでケダモノ。 ケダモノそのもの」
「よく見てるな……て、ケダモノじゃねえ! 至って健全な男子だつーの」
「胸とか太もも辺りをジロジロ舐めましてた見てたじゃない」
「気のせいです。 勘違いです」
観察眼がおそしく長けている。 ほんの一瞬目線を逸らしただけでど箇所を凝視しているかが、ばれるとは……。
潜在能力が侮れない。 うん、てか怖いです。
「恋人になってからエロい目で見つめないでよね。 なるべく意識しないようにしてるのだから」
「そ、そんなに視線を感じるのか?」
「ええ、身の毛がよだつほどに」
「わし、ショックだわ。 まさか嫌いになった?」
「嫌う要素ないわ。 ……好きよ、好きなんだけど……お願い見ないで。 その……恥ずかしいから」
「ど、努力する」
ザーと木の葉が揺れる音だけが長く支配する。 ――気まずい!
意識すると余計に手汗が滲んで顔が熱くなる。 恋愛経験ゼロの俺にどう話しかければいい?
下手な発言をすれば軽蔑される。 かと言って今の空気に耐えれそうにない。
お天気の話でもするか? いやいや、ベタすぎるだろ。
なにか……なにか……。 思いつかん。 あかん、詰んだ。
助け船はないだろうか。 あるわけない。
なんでもいい。 適当に切り出すか。
「「あのさあ」」
どうやらリアも同じ境遇だったみたいだ。
かぶるとは思ってなかったが。
「……提案なんだが、恋人意識しないようにしないか? 会話すらままならんしさ」
「賛成。 胸が苦しいし、そっちのが助かるわ」
「可決ってことで」
心臓がバクバクして息苦しいのは俺もそうだ。
これで普通に接することが出来る。
うむ、恋は病だ。
「さて……冬が明けたら遠くに引っ越さないとなあ」
「え、なんでよ?」
「異界の者と今後会わないためだよ。 銃火器を持った奴に相手は分が悪すぎる。 戦いにすらならんし」
「――ジュウカキ?」
そっか。 銃について話したことはなかったな。
こちらの世界の話さえほとんどしてない。
語ったところであまり理解しないというか、人に説明できるほど知識がない。
なのでにわかの知識量で話す。
「豚がなんか担いでいただろ? 担いでる物で攻撃を行ってきたのが銃火器」
「礫みたいのを飛ばした道具がジュウカキって名称なのね。 早くて避け損ねたわ」
「は? 損ねた?」




