第二章‐2
「う……うーん……うん」
眉間にしわを寄せて理解してない表情でコクコクと頷いていた。
やはり説明不足か。
くっ、語力がないのが恨めしい。
「食べる物に困らないからこの際、ブンメイとやらの難しい言葉はどうでもいいわ」
「左様でございますか」
にぱっと可愛い笑顔。
言葉が思いつかない俺にとっては助かる。
人に説明するのってほんと難しいと痛感する。
「いやー、しかしキノコって短期間で生えて簡単に増やせるのに驚いたわ。 栽培するってのも新しい発想にも驚いたし」
「……俺の方が驚いたけどな」
ボソッと一言返す。
菌類にしろ、植物にしろ、成長スピードが尋常じゃないほど早いのだ。
二日もすれば立派に成長し、花を摘めば二日で元に戻っている驚異の生命力。
改めて異世界なんだなと実感させられる。
常識が通用しない日はそう遠くない。
「昼だってのに寒いなあ。 ふう……夜になるとさらに冷え込むな」
「……だったら一緒に寄り添わない? 二人ならより暖かいし」
もじもじと身体をくねらせ、リアの顔全体がトマトのように真っ赤になっている。
寒いから赤くなったのか?
確かに引っ付き合えば寒さが多少マシになるだろう。
ここは――
「断る。 寒いなら余っている毛皮を使って二重巻きにすればいいだろ」
「…………にぶちん」
小言でなにか呟いたリアだが聞こえなかった。
メンチビームを放ち険相な顔でそっぽを向きご機嫌ななめだ。
正論を言ったまでだろうに…………ああ、もう!
人の気持ちがまるでわかってないと目で訴えかけるなよ。
だんごになればいいんだろ。 なれば!
「……たく、今回だけだからな」
「あら、意外とレディの心わかってるじゃん」
「うるさい」
頭皮をぼりぼりと荒くかきむしりストレスの発散しながらも、背中合わせで肌に触れあう。
さすがに真正面で抱き合うのは恥ずかしくて到底不可能。
万が一、あったとすれば理性がたもてる保証はできない。
一応男だからね。 性欲が無いってわけじゃない。
リアは女性として魅力的だ。
よく笑い、気遣いも上手で、二次元から飛び出したかのような美少女ときた。
正直嫁にしたいとさえ思ってしまう。
だが、恋愛感情を抱くことは絶対に許されない。
いつ死んでもいいと自己しか考えず、他人を気にしない低能野郎に恋愛する資格はないからだ。
リアを見るたびに己に十字架の楔を建てている。




