第二章‐1
白い粒が空から降る寒い中。
いそいそと焚き火の燃料となる木の枝を集めていた。
異世界に転移してから、はや一か月。
あらかた生きていく術を身に付け、生活にも慣れてきた。
ドラゴンや魔獣といった獰猛な生物はこの異世界にはおらず、元の世界となんら生態系はほぼ同じ。
違う点があるとすれば精霊の存在である。
あともう一つ違う点は”魔人“という人の姿をした人ではない生き物がいるのだとか。
具体的な特徴は不明で人間を超えた能力があるとだけは解明されてるらしい。
精霊がいる以上、いないとは断言できないし、曖昧な情報に半信半疑だ。
「シ~ノ~。 暖房まだ~?」
「もう少し我慢しろ。 今、火を熾おこすからな」
生まれたての小鹿のようにプルプルと震え、弱り切った白銀の少女こそリアだ。
寒さにめっぽう弱く、動けないほど憔悴するのだ。
知ったのは一日前だが、よく今まで生きていられたなと思う。
「あと一日耐えれば……私は自由の身だ」
「どこぞの犯罪者だよ。 それより奇妙な季節変化だよな」
そう。 一か月に二日間だけ極寒の冬が到来するのだ。
辺り一面は白銀の世界に覆われ、水面は氷結し、生き物の姿消え失せる。
一日目は凍え死ぬかと思った。
事前に冬に備えて防寒となる狼の毛皮のコートを作り、三日分の食料を確保、熱源となる薪を集めていたが足らず取ってきたばかりだ。
あとは木を燃やして寒さに耐えるのみだ。
燃えやすい乾燥草を用意し両手には石を持つ。
勢いよく石と石をぶつけて火花を散らせる。
上手く乾燥草に着火し消沈しないよう息を吹きかけ膨張させる。
ごうごうと炎が舞い上がり、木の枝に火を移し焚き火の完成。
焚き火に手をかざし、カチコチに固まった手がじわじわと解凍されていく感じが広がる。
頑張って集めた甲斐があった。
「ねえねえ。 シノの居た世界に何か月に何日、冬が来たの?」
「俺の世界じゃ何か月単位じゃなくて、年単位で冬が来るんだよ。 三か月に一度。 しかも三か月中ずっと冬な」
「んなっ! ……地獄じゃないそれ。 よく生きてられるわね」
「文明の発達が違うからな」
「ぶん……めい?」
寝ころびながら上目で疑問の視線を送ってくる。
彼女にわかりやすいニュアンスで説明をすることに。
「例えばキノコを”採取する“を以前はやってただろ? 今はキノコを”栽培する“になってるだろ。 えーと、つまり……効果的な食料生産のことと覚えてくれ」
正直俺自身もよく理解してないので教えにくいとは言えない。
技術の進歩とか説明してもわからんだろうし。




