第一章‐10
「はい。 召し上がれ」
「……っ!」
長い葉を受け皿の上にレインボー色に発光するおぞましいキノコが目に飛び込む。
どう調理すれば禍々しい物体を作り出せるんだ。
しかも、ぎやぁぁぁって唸ってるぞあのキノコ。
くっ……食えるのか? 毒じゃないよね?
「食べないの?」
「………あっ」
魔界の食べ物を表情変えずに口に放り込みやがった。
ほっぺを抑えて「美味しい」と至福の顔をしてるぞ……胃に入れても大丈夫のようだ。
危険な食い物じゃないとわかっても躊躇ってしまう。
……食べないのはリアに失礼だし……覚悟を決めるか。
「いっっっただきます!」
意を決して七色のキノコを一口。
歯で噛み砕き、舌でコロコロ転がし味わうと………美味い。
超美味い。 絶品だ。
どう表現したらいいのか……とにかく美味すぎるとしか口から出ない。
「人生で一番美味いの食ったかもしれない」
「大袈裟な。 焼いただけだよ」
「焼いてるレベルじゃないと思うが……」
「ま、私もなんで美味しくなるかわかんないし。 村じゃ普通のことだったし」
よく人相があるレインボーキノコを食おうとしたな、おいとツッコミを入れたい。
美味いのは否定しようがない事実だし細かいことは考えないでおこう。
無になりながら食すのであった。
悲鳴を上げるキノコを平らげ満腹になっていた。
腹を満たしたことで雨風が凌げる屋根を作ることにした。
といっても、ほとんどの作業をしたのはリアだ。
細腕なのにバキバキと軽々しく枝は折り、折った枝を地面に突き刺し壁が完成。
残った木々で屋根の台座を作り、そこに大量の葉を被せれば出来上がりっと順調に進みすぎて呆気に取られた。
俺は材料だけを持ってただけで情けない感が半端ない。
申し訳なくて彼女に謝るも笑顔で「気にしないの」と励まされる。
なぜ愚痴の一言もないのか。
キレてもおかしくない、悪口があってもおかしくない、蔑んでもおかしくない……なのにいつも最高の笑い顔で受け答えをしてくれる。
それが俺にとって気にくわない。
リアに対する不満をぶちまけようとしたが、言う直前で身体が固まった。
自分でも理解不能で結局言うのをやめてしまった。
そんな、リアの思考を読み取ろうと考えてると太陽は沈み月が昇っていた。
彼女はそうそうに眠ってしまったが俺は眠れなかった。
リアの心情が気になってもあるが、それ以前に自信の異変についてだ。




