エピローグ 望み
全話の理事長の名前をエリスから、アリスに修正しました。
学院のとある地下の一室。
「桜、彼は私の想像通りの人間であっているかしら?」
そしてその酷く薄暗い室内では、理事長と教師の佐藤桜が向き合って座っていた。
桜と理事長2人きりでの会話。
それはよくあることで、周りから浮き常に1人である桜は会議室などで理事長とよく話している。
ーーーだが、今2人の雰囲気は明らかに何時もと違っていた。
「ええ、多分貴女の想像通りですよ」
理事長の言葉を肯定するかのように頷く桜。
その眼鏡にスーツという格好は何時も全く変わらない。
だが、何時もは自信なさげに俯き気味だったその頭は上がっており、顔には全く表情が浮かんでいない。
まるで人形のように。
「やはり、私の想像通りだったのね」
だが、理事長がその桜の明らかな違いに反応を示すことはなかった。
まるで今の桜が彼女の本性であるかのように、理事長は言葉を重ねる。
「東颯斗、彼は
ーーー鬼の一族ね」
「っ、」
そして次の瞬間、理事長の言葉に初めて桜は反応を示す。
「彼らに近づくことこそが、鬼に繋がる道。つまりあの子を私達は絶対に取り逃がすことは出来ない」
だが、理事長はその桜の反応など一切見向きもせずさらに話を続ける。
「だけど、東颯斗はもう逃げられない。
ーーーアイラがいる限り」
そう告げた理事長は安堵したように息を吐いた。
「本当、あの子歪なのよね……何を望んでいるのか全く分からない。アイラならば懐柔出来ると思っていたけれども、
ーーー何でアイラに心を許したのか一切分からない」
そう漏らした理事長の顔は酷く気怠げで、彼女がどれだけ疲れていたのかということが伝わってくる。
「まぁ、でも何とか万事上手くいって良かったわ」
「へぇ?万事上手く行ったんですか?」
「えっ?」
だが、その時今まで一切口を挟んでいなかったはずの桜が不機嫌そうに口を開く。
「私にあんな毒まで盛って」
「あっ、」
その瞬間理事長は颯斗との交渉時、彼女に毒を盛り、その結果どうなったかまで思い出す。
そしてそのせいで決して過度な恥ずかしいがり屋ではない桜がかなり怒っていることも。
「仕方ないじゃ無い……あの薬しか貴女に効かなかったんだから……」
「そんな理由で無駄に恥をかかされた私の身にもなって下さい……」
桜は一瞬、その理事長の言葉に不満げな様子を見せる。
しかし直ぐに切り替える。
「で、如何するんですか?」
そしてその桜の質問に理事長は一瞬、動きを止めて呆れたように口を開いた。
「決まっているじゃない。
ーーー利用して、利用し尽くして私の望みを果たす」
そう告げた理事長の顔には決して揺らがない決心が、
ーーーそして隠しきれない悲しみが浮かんでいた……
更新遅くなってしまい申し訳ありません……
かなり二章の構想を練っていたのですが、まだ大まかな所しか練れていません。
なので二章の開始はかなり遅れるかもしれないです。




