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34.決意

「がっ!」


足場が無くなり、俺は無様にも背中から地面へと落ちる。

そしてその時背中に走った鈍い痛みはまるで冷水をかけられた後のように俺の正気を取り戻す。


「正気を取り戻す?」


と、そこで俺は思わず仰向けに転がったままその言葉を呟いた。

いや、正気を取り戻すも何も俺はどこもおかしな所はなかったはずだ。

意識を失った訳でもなく、あの悪魔に身体を乗っ取られた訳でもない。


ーーーだが、俺はどうしてもあの悪魔との戦いの顛末を思い出すことができなかった。


決してあの時ぼんやりしていた訳ではない。

いや、あの悪魔に対してそんな態度など取れるわけがない。

寧ろ集中してはっきりと覚えていそうなのに、俺は悪魔を倒したというそのことしか思い出すことが出来ない。


「何なんだ?」


少し前のことなのに全く思い出せないという違和感。

俺はそれを背中を打った為の軽度の記憶障害だと認識するが、酷い胸騒ぎがした。


「っ!今はそんなことなんかどうでも良い!」


そこで俺はアイラのことを思い出す。

悪魔を倒したことと同じように、アイラが無事だということだけは記憶に残っていたので安心していたが、そのまま放置しておくわけにはいかない。

そう俺は判断して顔を上げ、


「はっ?」


ーーー悪魔が今までいた場所に靄のような物が存在しているのが目に入った。


俺はその何かを目にして呆然と立ち尽くす。

その靄は見るからに禍々しくて、


「陽気?」


そして俺は何故かその靄のことを知っていた。











その靄は悪魔の魔力で、そして身体。

つまり、悪魔の核によって纏められていた元悪魔の身体を構成していた自然の気。


「何だよ、これ!」


ーーーそしてそんな知識が俺の頭に流れ出す。


だが、俺がそんなことを知るわけがない。

確かにある程度祖父に気に関することは習っていたが、この知識は祖父でさえまるで知らない類のものだった。

そして俺はその頭の中に流れてくる知識に恐怖覚える。

知らないはずな知識が急に頭の中に流れ出す、それはただただ異常で、俺はその知識を振り払おうと頭を振る。

そして以上はそれだけではなかった。

何故か見える靄。

それは純粋な魔力の淀みで、


「何で、魔力が見えている?」


そんなもの俺は今まで見たことのないはずだった。

もちろん俺が全くその類のものを感じられない訳ではない。

ある程度の魔力や、自然な気は感じる事は出来る。

だが、それはあくまでぼんやりと認識する程度で、感じるという感覚でしかない。

しかし今俺は、目の前にある靄をはっきりと視認出来ている。

そしてそれは明らかに俺が異常である証拠で、


「何が起こっている!」


ーーーだが、俺はその異常に何処か安心感を覚えていた。


俺はその安心感を認めないと必死で思考を止めようとする。

その安心感を知って仕舞えば、あのことまで思い出してしまいそうで、


「いや、あのことってなんだ?」


そして俺はどんどんと混乱の渦に巻き込まれて行く。


「違う、まずはアイラだ!」


だが俺は何とか当初の目的を果たそうと、必死に他のことを頭から締め出そうとする。

そして俺はアイラの方へと振り向いて、


「っ!」


ーーー靄を、魔力の淀みを整えるアイラの姿に言葉を失った。


陽気が、異常に膨張した魔力がアイラの周囲で収縮していく。

それは酷く幻想的な光景で、そして今まで俺の頭を支配していた自身の異常に関することを忘れてしまうほど衝撃的な光景だった。

そして俺はその光景を呆然と見つめながら悟る。


「これのことだったのか……」


アイラが魔術師になりたくないと言葉と、その時の表情の理由がこの目の前の光景と関係あるということを。

そしてそのことが納得できるほど、目の前の光景は異常で、靄が全て正常な魔力へと変わってからも俺は動くことができなかった。

原理など一切わからない。

だが、これの所為でアイラは真っ先に悪魔に狙われたのだろう。

そしておそらくアイラが狙われてきたのはあの上級悪魔だけではない。


ーーーそれはどれだけアイラの重荷となっているのだろうか?


「1人に背負える重さじゃないだろうが!」


どうしようもなくて、それでもどうすることもできない物。

俺はその物を背負う重さを知っている。

それがどれだけ苦しいのかを。

そしてその瞬間、俺は思い出す。


「ああ、そうか」


酷く心を揺さぶった、魔術師になりたくないと漏らしたアイラの表情。

その表情に見覚えを感じた理由、それはアイラが俺と全く同じ顔をしていたからだということを。

そしてそのことに気づいた時、俺はあることをあっさりと決断していた。

それは酷く悩んで、悩んで、それでも答えの出なかった悩み。

だが、あっさりとその悩みを決断したことを後悔することはなかった。

俺は未だ意識を失っているアイラの側へと屈む。

そしていつの間にか目から溢れ出していた涙を拭いながら、囁くように決意を漏らした。


「お前を、守る」

更新遅れてしまい申し訳ありません……

こんなにも遅れてしまうとは……

次はもう少し早めを心掛けさせて頂きます……

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