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32.狂気

ドラゴンの俺に対する怒りは周囲へと威圧感を振りまく。

そして俺はその威圧感によって、まるで身体が重くなっているかのように感じる。


「っ!」


ーーーいや、実際に重くなっていた。


俺は身体に感じる重量が焦りや恐怖などの精神的な理由でなく、物理的に増えていることに気づく。


ー ふっ。


そして頭の中に響いたドラゴンの声に、俺はその急激な身体の重さはドラゴンの身体から溢れ出る魔力の仕業であることを悟る。

俺の身体を襲う重さは、理事長に俺が向けた殺気とどこか似ていて、そして明らかに強力だった。


「アイラには影響は無いな」


ーなっ!


ーーーだが俺は全く動揺していなかった。


ただアイラの様子だけを確かめて、そして動揺するドラゴンに笑いかける。


「その程度か?今度は俺から行くぞ?」


そして次の瞬間、空気は変わった。









「ふっ、」


俺は目を閉じて身体の流れを意識する。

それは血液の、そのさらに中の流れ。

意識を向けるのは血液と同じように、いや、血液などよりももっと身体の広範囲を流れている何か。

それは生命の力、そんなものだろうか?

生命そのものではなく、魂から生み出される何か。


そして、俺たちが気と呼び魔術師は魔力と呼んでいるもの。


「っ!」


俺はそれを認識して、そして凝固させる。


ー な、なに!


ーーーそして俺が目を開けた時、額には光を放つ半透明の角が生えていた。


それは気と呼ばれる何かを凝固させて作った角。

魔術師が魔力で世界を騙し力を盗むのに対して、俺が祖父から伝授された武術ではその気で肉体を強化する。

そして角の役目は、気を身体に効率よく回すための器官。

その角に込められた気にドラゴンは動揺を漏らす。


ー 巫山戯るな!何が人間だ!お前は我と同じ化け物ではないか!


隠しきれぬ動揺と共にドラゴンが口走った言葉。

それを否定できず、俺は戸惑う。


「っ!」


ーーーだがその動揺は直ぐに、当たり前では無いかという思いに飲み込まれていく。


「言いたいことはそれだけか?」


そして俺はその自分の異常性に気づくことなく、全力で前へと踏み出していった。











身体から大量に気が生み出され、そして額の角が微かな震えと熱を伴いながら足へと気を送る。

その瞬間、俺の身体は歓びに震える。

それは気だけを使うという酷く非効率な戦い方のために、最小限で最大の身体強化をと、限界まで効率を重視した動き。

つまり身体にはかなりの容量が有るはずなのに、


「は、ははっ!」


ーーーその容量さえ超えて、気が溢れ出す。


そして俺はその溢れ出る気を身体全身で感じる。

そのまま俺は、身体を襲う高揚感や万能感に身を任せて、全力で地を蹴り付ける。


ーなっ!


ーーーそして次の瞬間、上級悪魔の動体視力を超えた動きで空中へと飛び上がった。


俺の動きに反応出来ず、ドラゴンは間抜けにも俺にがら空きの背中を見せつける形となる。


ーや、やめ、


「これ、邪魔だろ」


そして俺はそう怯えるドラゴンに笑いかけて、尻尾の上へと着地した。


ーガァァァァァァァ!


ドラゴンは酷く慌てた様子で俺を尻尾から振り下ろそうと暴れる。

だが俺は平然と尻尾の上に佇む。

そして再度足に気を集中させ始める。

今度は前のように強化ではなく、角のように凝結させるイメージで。


「ほいっ、と」


ー ギャァァァァアア!


ーーーそして俺は何も気負うことなく、気を凝結させた足で尻尾へと蹴りつけた。


限界まで凝縮された気は、空気砲のように爆発して、ドラゴンの尻尾を切り落とした。

尻尾の断面から青い血、いや魔力が噴き出す。

そして切り落とされた尻尾は塵となって消えて行く。

その塵が消えて行くまで俺は見て、


ー 痛い!痛い!


そう叫ぶドラゴンへと目を落とした。


「ははっ!」


そう身体を震わせて叫ぶドラゴンは惨めで、その光景は俺に優越感と万能感を与える。

そしてその快感に俺はひとしきり笑って、直ぐに表情を変えた。


「煩い」


ー っ!


様子の変わった俺に、ドラゴンは尻尾をかばうように後ずさる。

俺はそのドラゴンをゆっくりと追いかけながらそう呟く。


「ねぇ、そんなに痛い?」


ー っ!お前が、やったんだろうが!


「そう、だよね。責任は取らないといけないよね」


そして俺は一度頷いて、


「ーーーだったら、痛みを感じなくさせてあげるよ」


ー っ!


そう、笑った。


ー や、やめろ!いや、やめてくれ!


ドラゴンの懇願を無視して俺は足に気を込め、全力で飛び上がった。

ドラゴンは今度こそ何とか逃げようと身をよじる。


「遅いよ」


だがそれは無駄でしかなかった。

俺はドラゴンの頭の所へと着地する。

ドラゴンは頭の上にいる俺へと恐怖の眼差しを向ける。


「ははっ」


そして俺はその視線に快感を覚えるかのように、恍惚とした顔で笑い、


ー がっ!


ーーードラゴンの頭へと貫手を突き刺した。


俺の狙いを悟りドラゴンはそう叫ぶが、


ーた、頼む!


「無理」


俺はあっさりとそのまま貫手を押し込んで、固いものを砕いた。


ー ぁ、ぁぁぁ、ぁぁあああああ!


ドラゴンはそう悲鳴をあげて、何かから逃げようとするかのように暴れ出す。

だが、次の瞬間その巨体は破裂した。

青い可視化された魔力が溢れ出し、足場を失った俺の身体は宙に投げ出される。



ーーーだが、その時俺は狂気に満ちた顔で笑っていた。

更新遅くなり申し訳ありません……

少し展開で悩んでいて遅くなってしまいました。

感想の返信も直ぐにさせて頂きます。

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